七五三の神隠し。〔上譚〕

中編4
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七五三の神隠し。〔上譚〕

今から21年前の話。当時7歳だった私は、父母、弟2人と共に家族5人で私の七五三で近所の八幡様へ行った。

赤い着物に赤い草履で可愛くめかしこみルンルン気分だった私は、石段を駆け上がり本社へ向かう。そして、石段を上りきった私が振り返ると家族も他の参拝客すら見当たらなかった。

しかし、日中だったこともあり怖さは感じず。私は1人で境内を散策して回った。

だが、どんなに歩いても誰にも会えず……流石に少し不安になってきた私はどうしようと途方に暮れた時、ふっとお稲荷さんに会いに行こうと思った。

境内の端に小さな祠があるのだ。私はお稲荷さんの祠を目指し歩き出す。

すると、目の前に竹藪が現れた。竹藪なんかあったかな?そう思いながら、私は竹藪の中を進んだ。

竹藪の出口が見えてくるとそこには大きな岩が置かれていて、岩の上に黒い着物を着たお兄さんが座っていた。

私に気付いたのか、振り返ったお兄さんの顔には狐か猫を模した黒いお面が着いていた。不思議な人だなって思った時。

頭の中に直接、声が響いてきた。

『なんだ?また、迷子になったのか?』

「迷子じゃないもん」

『ふ〜ん』

そして、お兄さんは無言で私の後ろを指さした。そこには、綺麗な黒猫が立っていた。

黒猫の首には赤い結紐に綺麗な鈴が着いている。

「にゃんこ!」

猫が大好きな私は、走って近づくと猫がニャーっと短く鳴いた。そして、振り返っで見るとお兄さんも竹藪も無くてお稲荷さんの祠がポツンっと建っていた。

すると、

「林檎(仮)! 」

「あ、お母さん……」

「どこに行ってたの?!探したでしょ?」

「いなくなったのはみんなの方だもん」

「何言ってんの……どうせ、1人でトイレ行こうとでもして迷ったんでしょ?さぁ、戻ろう」

母に腕を引かれ、父と弟2人が待つ場所へと戻った。

それからは、大きな出来事はなく……ベッドで寝てる時に髪を掴まれたり赤い満月を目撃する程度だった。

七五三での神隠しみたいな目に合うことは1度もなく、あの出来事は夢だったのだと歳を追うごとに思う様になっていた。でも、それから7年の月日が流れ14歳になった私は学校で酷いいじめを受ける様になっていた。

そんな頃に私の学年では【立志式】を行う事が決まった。【立志式】とは、担任の説明によると14歳の成人式

でどんな大人になりたいかを皆の前で発表する式典だと言う。

ちなみにその【皆】っと言うのは、クラスの皆とかではなく。体育館に同学年の全生徒が集まり保護者も来る結構大きな式典だと説明される。

想像して欲しいのだが、普通に学校に通っている生徒ですらそんな大勢の前での発表は恥ずかしいと思う。まして、私はいじめられっ子……恥ずかしいし、怖いしで正直式典までの間は学校に行くの更に苦痛になっていた。

そんな私の気持ちを察してか、休日母に誘われて買い物へ行った。っと言っても、母の買い物の付き添いだが気分転換になるだろうと誘われた。

小さなアーケードに着くと母は自分の買い物をしてくるから私も好きなものを見てきなさいと言われた。私は、アーケードを抜けて往復30分の所にあった例の八幡様に向かった。

八幡様に行くことを母には伝えなかったが、直ぐに戻れば問題ないだろうと思っていた。そして、石造りの鳥居を潜り境内に入るとお茶屋さんが目に付いた。

看板犬のゴールデンが可愛くてしばらくその子と遊んでから、私は石段を登った。登りきると、しめ縄で出来た輪っかが釣らされていた。

そして【8の字この輪っかを潜るといい事がある】みたいな説明の書かれた看板が横に置かれていた。私は厄落としのつもりでその輪を潜る。

すると、潜り終えた瞬間。当たりは静寂に包まれていた。

7年前の七五三の時と同じだ。そう思い当たりを見渡してもやはり誰もいない。

鳥居の向こうは霧に覆われていてわからないし、どうしようと振り返ってみるとそこにはあの日に会った黒い着物の男性が賽銭箱に腰を下ろし煙管を吹かしてた。お面は相変わらずしていたが、口の出ているものに変わっていた。

私が黙っていると、あの時とは違い今回はちゃんと話しかけてきた。

『お前、また迷子になったのか?』

「迷子なのかな……帰りたくないかも……」

そんな事を私は言ったと思う。その後も愚痴の様な事を散々言った気がするがハッキリと覚えていない。

でも、男性が最後に言った言葉は今もハッキリと覚えている。

『生きるのは辛いだろうけど、もう少し頑張ってみろよ。

俺はまだ、生まれてないけど今度は俺がお前を探しに行ってやるから

待ってろ』

「え?」

その瞬間、風が吹いて思わず目を閉じる。再び目を開けた時には、男性の姿はどこにもなく元の喧騒が戻っていた。

そして、

「林檎!」

「!お母さん……」

「またあんたは勝手にこんなとこまで来て……探したでしょ?」

「ご、ごめんなさい」

「全く……荷物半分持って帰るよ」

それから、私のいじめが無くなるようなことは無かったけど不思議と前より少し勇気を持てるようになった。【立志式】の後は先生たちに一番ハキハキしてて解りやすかったと褒められもした。

あの男性が誰かは解らないけど、人間じゃないかもしれないけど、

私は彼のおかげで変われたと思っている。

彼との再会のお話はまた、次の機会にお話します。

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不思議なお話ですね。次のお話が楽しみです。

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