これは去年の夏のことだ。
私はユミという名前の友達を誘って温泉旅行に行った。
見た目はすごく古びていたが、旅館の従業員たちが笑顔で元気な人たちだったので安心し自分たちが、これから泊まる部屋に案内してもらった。
しかし私は部屋の近くまで行くにつれて夏だというのに、ひんやりとした寒さに包まれた。
ユミは何とも感じないらしく、とてもワクワクしている様子だった。
部屋に入ると意外とキレイな部屋で窓から見える風景もサイコーに良かった。
だが、天井にはくものすだらけだった。
しばらくして、ついたての向こうの部屋を見に行っていたユミが悲鳴を上げました。
なんと、その部屋は赤い血でいっぱいだった。
しかしユミは「きっと、雨漏りだって~」と言っていたが、私には雨漏りだとは思わなかった。
きっと、この部屋で何かがあったに違いない。
そう思った。
私たちは気を取り直して温泉に行った。
気持ちよかった温泉の後に部屋で、美味しい夕食をとった。
私は、ついたての向こうの部屋が無性に気になった。
そんな私に「さっきからボーッとしてどうした?」とユミに指摘された。
ヤな予感がするのだ。
でも、楽しそうなユミを心配させたくなかったので「何もない」とだけ言った。
夕食も終えて、寝る準備をした。
深夜1時頃だった。
急につけていた灯りがパッと消えた。
怖くなってユミを起こそうとしたが金縛りになっていて声がでなかった。
そうすると、ついたての向こうの部屋からかすかに女性の声がした。
次第に、その声が大きくなって、女性が姿を現した。
私に気づくと、ゆっくりと近づいてきた。
怖くて目を瞑り、そのまま眠った。
翌朝、旅館を出るときに女将さんに、あの部屋で何かあったのか聞こうと思ったがユミの機嫌を悪くしては可哀想なので聞かずに帰った。
後で聞いた話だがユミもそれを見ていたらしい。
そして、あの部屋で昔、若い女性が強盗に刃物で腹部を十回程度刺されて死んでしまったと。
怖い話投稿:ホラーテラー ゆかさん
作者怖話