短編2
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ただいまー

学生時代バイト先のMちゃんから聞いた話だ。Mちゃんの母親は飲食店を経営している。経営していると言っても一人で切り盛りできるような小さなお店で常連さんを基本相手にするような小規模な店だった。

ある晩、日付が変わって1時間ほどMちゃんの母親が店の看板をしまい帰宅して歩いていた。夜道は誰もおらずただ外灯だけがMちゃんの母親を照らしていた。

店から自宅まで明日の準備の予定を考えながら歩いていると。後ろから人の気配を感じた。こんな夜中ではあるが他に人が歩いてるのも珍しくない。気にせず歩いているとパタパタと足音が聞こえてきた。

その足音は小走りで大人が走る音ではない。

ふと後ろを振り向こうとした瞬間横を何かが通り過ぎた。その何かが横を通り過ぎてMちゃんの母親の前を走っている。

4.5歳ほどの子供だった。

服装も至って普通。身なりから見ると男の子の様だった。しかし後ろ姿しか見えず、加えて周りには親の様な存在もおらず何とも異様な光景だったそうだ。

Mちゃんの母親は思わず「僕何してるの?」と声をかけた。その男の子はピタリと走るのを止めこちらを振り向こうともせず「おうちに帰るのー」とだけ答えた。その声は何故かMちゃんの母親の耳元に直接スピーカー当てたような大きな声で聞こえた。

答えたと同時に男の子はまた小走りしながらすぐ側の電気の付いていない一軒家に入って「ただいまー」と言う声が先程と同じ様に耳元に響いた。ここが家なのかとMちゃんの母親が通り過ぎながら家を眺めるとありえない物が見えた。

見えたのは「新築売り物件」と言う看板だった。Mちゃんの母親は足早にその場を去った。そのあとその物件は売れて子供連れの一家が住んでいた。ただ子供は中学生の女の子だったそうだ。時折、夜の帰り道にその家の前を通ると屋根裏らしき窓に小さな男の子の顔がぺたりと張り付いてこちらを見てる気がした。しかし顔はハッキリ見えなかった。しばらくしてその家の前に「売り物件」看板が刺さっていた。窓を見るとあの子はまだいるようだ。

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