短編2
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アザ(短い話8)

ある月曜日の昼下がりのことだ。

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F警察署交通課の副島はデスク前に座り、神妙な面持ちで腕組みをしていた。

目の前にはの3枚のA4サイズの写真が並べられている。

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すると新人の浅井が背後から彼の肩に手を乗せ、

「せんぱーい、まだ悩んでるんすか?」

と能天気に声をかけてきた。

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副島は軽く振り向くと「ああ、どうもおかしいんだよ」と肩越しに言い、ため息をつく。

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浅井は副島の右横にひょっこり顔を出し、

「だからあ、今回お盆の時期に『F市営墓園前交差点』で立て続けに起こった高齢者による車の事故は全て、アクセルとブレーキの踏み間違い。

これで決まりですって」

と言ってデスクに手を置いた。

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そして、さらに続ける。

「今月あった3件の事故の被害者は累計で、重傷者が11名、重体が5名、死者が3名にものぼってるんですよ。しかも最後の事故なんか母子を跳ねた上に、そのまま墓石に突っ込んでるんですよ。

じいさんたちが言っていることなんか真に受けてたらマスコミから叩かれますよ」

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「確かにそうだな。でもな3人が3人とも同じ抗弁をしているというのがな、、」

そう言って副島は浅井の顔を見た。

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「『運転していたら、いきなり足元に血だらけの女が現れて運転を邪魔しました』だなんて、そんなホラー映画みたいな言い訳が通用するはずないですよ」

と浅井が呆れ顔をしながら言うと、

副島は「いや、そうとも言い切れないんだ」

と言ってデスクにある3枚の写真を浅井に手渡した。

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彼は写真を見ながら「なんすか、これ?」と副島を見る。

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「それはな、今回事故を起こした3人の『膝下部分』の写真だよ」

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「この写真が何か?」

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浅井が尋ねると、副島は「よく見てみろよ」と言う。

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彼はしばらく写真を顔に近づけると、急に険しい表情になり副島の顔を見ると、

「3人とも右足首に何か変なアザみたいのがありますね」

と言って写真を返した。

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副島は大きく頷くと目の前の写真を見つめながら、こう言った。

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「気になったから鑑識課で調べてもらったらな、これ全部、誰かにかなり強い力で握られた手形のようなアザということが分かったんだ」

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Fin

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