短編2
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七年前

 今から七年前、私は一人前の板前になるために、大阪の料亭で修行していました。二十歳になったばかりのころでした。

 十月──。高校時代の友人が東京の大学に進学していたので、私は社会勉強も兼ねて遊びに行くことを決めました。

 勿論、友人の部屋に泊めてもらいました。駅から一キロほど線路に沿って歩き、そこから少し奥に入った場所にある古いアパートでした。襖で仕切られた二間だけの部屋は奇麗に片付けられていました。

 午後九時ごろ、友人がスクーターに乗って買い出しに出掛けました。

 買い出しを彼に任せて部屋で待っているうちに、私はつい、うとうととしてしまいました。

 が、

 隣の部屋から襖越しに聞こえてくる声で目を覚ましました。

 その声は何だか寝言みたいでした。

 帰って来たら私が寝ていたので、きっと自分もと横になっているうちに眠ってしまったんだろう。

 そう思って襖を開けると、そこには誰もいませんでした。

 ──え?

 次の瞬間、辺りに冷気が──。

 何かが部屋にいる!

 気が付いたとき、目の前に線路がありました。

 直後に電車が鼻先を──。

 後一歩でも前に進んでいたら……。

 暫くの間、体の震えが止まりませんでした。

 アパートに戻ると、すでに友人は帰って来ていました。

 私は、自分自身に起きたことを彼に話しました。

 最初は全く信じてもらえませんでしたが、それでも真剣に訴え続けていたら、最後には、なんとか信じてもらうことが出来ました。

 大阪に帰った二日後、東京から電話がありました。

 友人が尋ね調べた結果、一年前、同じ日の同じ時間、あの部屋に住んでいた人が飛び込み自殺を遂げていたことが分かったのです。場所も私が立っていたのと同じでした……。

 あれから七年……。

 聞くところによると、アパートは今もそのまま残っています。

 あの夜みたいなことが再び起きないことを、私はただ祈るばかり……。

 いや。ひよっとしたら……

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りこさん、いつもありがとう。今日も明日もありがとう。チーターか!

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