短編2
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これでやっと(短い話9)

前の住人が自殺したという団地の一室に、家賃が格安という理由で住むことにしたんだ。

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当時の俺は長年付き合っていた彼女に突然ふられ、勤めていた会社をリストラされ、最悪の状態の時で、完全に生きる希望を失っていて、団地近くの公園でボンヤリ1日過ごし、日が暮れてから団地に帰るという無為な毎日を繰り返していた。

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そんなある日のこと。

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その日も俺は公園で適当に過ごし、夕刻になると団地に帰った。

ギギーと玄関の錆びた鉄の扉を開け、薄暗い廊下を歩き、居間に入る。

そして食卓テーブル前の椅子に座ろうとした時、その上に小さな紙が一枚あるのに気づいた。

そこには一言、

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「これでやっと」

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とだけ書いてあった。

その時の俺は特に深く考えず、その紙を捨ててしまった。

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そして、その翌日のこと。

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俺はまた昨日と同じように半日過ごし、日が暮れると部屋に戻った。

居間を横切り、奥の和室で着替えようと障子を開けた時だ。

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はっと息を飲んだ。

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薄暗い畳部屋の真ん中辺りに椅子があり、その真上の天井からは何故かロープが一本ぶら下がっていた。

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そんなバカな、、、

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と一人呟き、激しい心臓の拍動を喉裏に感じながら呆然と立ち尽くしていると、背中に刺すような視線を感じる。

思わず振り向いた途端、

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一瞬で背筋が粟立った。

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薄暗い和室の障子の端に

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白いブラウスの女が立っている。

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そしてその容貌は普通ではなかった。

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胸元まで異様に伸びた『首』、、、

畳に垂れた長い黒髪、、、

逆さまになった鬱血した顔をこちら側に向けると

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「これでやっと」

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と一言呟き、

悲しげに微笑んだ。

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Fin

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