中編3
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赤い帽子の女の絵

Twitterで知り合った男性Oに「ちょっとした不思議な話があるんです」と、相談事を受けた。八王子に住んでいたOは、リサイクルショップで働いていた。リサイクルショップには、沢山の人間の思い入れのある品物が持ち込まれる事が多い。しかし、所謂「曰く付き」の品物に出くわす事など、テレビや小説などの世界にしかないと思っていたそうだ。ただ、ある客の物持ち込みの品により、Oは怪異という体験を目の当たりにした。

それはある夏の大雨の夜だった。店は閉店の時間が迫り、客も居らず、スタッフは店仕舞いの準備をしていた。すると入り口から一人の男が入ってきた。まだ閉店時間は過ぎていない。「いらっしゃいませ」とOは男に声をかけた。年齢は60代ほどで、服もびしょ濡れのくたびれた男だ。男は「絵を買い取って欲しい」

そう一言口にし、バッグから絵を取り出した。

働くリサイクルショップは一般的なチェーン店だ。本来、骨董品や美術品は鑑定していない。絵を見る間なく、「申し訳ないですが...」そう断りを告げようとすると、男は「いくらでも構わないので、とにかく買い取って欲しい」と頼み込んできた。どうやら遺品整理だそうだ。

Oは仕方なく上司に相談し、絵の査定をする事にした。その絵は赤い帽子を深く被った女の

人物油絵だった。ただそのモデルの年齢がどれ程かも分からない。幼くも見えるが、年老いても見える。チラリと見える目は何処に向けた視線かも分からない。

Oの心の中で「何だか気持ち悪い」と言う言葉が駆け巡ったそうだ。絵の裏側を見るが、日付けやサインなどもない。ただ眺めれば眺めるほど、気持ち悪さは増し、終いにはこの短時間で嫌悪感さえ持った。

早く終わらせたい。そう思い、男に二束三文の値段を提示した。男は何かホッとした顔をしながら了承した。去り際、「やっと手放せたよ」という言葉を口にした。Oは「もしかして呪いの絵なんじゃないだろうな...」と泥ついた気持ち悪さが身体に纏わりついた。

上司からは「お前がきっちり責任取れよ」と笑いながら囃し立てられた。「こんな絵が売れるのか?」半信半疑に思いながら、売り場に置くと、予想とは反して三日程でその絵は売れてしまった。

購入された際もたまたまOが接客していた。客は中年女性で特に質問される事もなく帰っていった。ただ絵を渡す時、何処に向けているかも分からぬ、女の視線がこちらを向いているようで恐怖を感じたそうだ。ただ店から絵が無くなった事にホッとした。

それから一年ほどが経ち、あの絵の事を完全に忘れていた。しかしある日、店に出勤すると、あの赤い帽子の女の絵が店頭に飾られていた。

慌てふためき同僚に聞くと、「遺品整理の出張で買い取ってきた」と答えた。Oは絶句する事しか出来なかったそうだ。こんな事もあるのか。より一層気持ち悪さが増した。ただ、絵は呆気なくまた売れた。購入者は元古美術商の常連客だった。常連客は赤い帽子の女をじっと見つめ、Oに「高いものじゃないけど、変わった絵だね。せっかくだから購入して行くよ」と話し、絵を持って帰った。今度は絵に目を逸らしながら渡したそうだ。また赤い帽子の女がこちらを見ている様な気がして。

それからすぐに、Oは転職をした。あの出来事から何年も経つ。そして最近、リサイクルショップの上司から連絡があった。

上司はまだ、その店で働いている。上司は力なく「あの絵、また戻って来たぞ...しかも遺品整理で。お前にきっちり責任取れよと言ったのになぁ」と、冗談なのか本気なのか分からない言葉を伝えてきた。

O自身には何も起きてはいない。しかし、これが「曰く付きの品物」だと身をもって体験したと私に話してくれた。店には、まだその赤い帽子の女の絵が飾られているそうだ。

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八王子のリサイクルショップ(°_°)どこだろう...

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