短編2
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樫沢さん

神奈川の工業都市の小さな団地にAは住んでいた。団地には「樫沢さん」と言う団地の主がいた。Aの両親や住民はいつも樫沢さんの話をしていた。

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樫沢さんの住む部屋は団地の最上階の角部屋。何度か両親を含め、住民達が相談事のためその部屋へ入って行くのを目撃した。

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結婚や出産。祝い事や困った事があれば住民は必ず最初に樫沢さんに相談するのが風習だった。ただAは一度も樫沢さんを見かけた事はない。年齢どころか男か女かも分からない。

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ある日あまりに気になり、父親にどんな人なのか聞いてみた。すると「頼りになる人だ。Aが大人になれば紹介する」と満面の笑みで答えた。違和感と気持ちの悪さを感じ取った。

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時が経ちAが高校生の頃、両親や近所の住民が樫沢さんの家で宴をした。Aは留守番を頼まれた。留守番中に父親の仕事場から急な連絡が入り、父親がいる樫沢さんの家へ向かった。するとドアが開いている。玄関の中に入ると大人達は円を作り、何かを囲んで楽しく話していた。

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Aに気づいた父親は何故か部屋を遮るように立ち、「要件が済んだら早く戻りなさい」と満面の笑みで話した。その笑顔が怖くなり急いで自宅へ戻った。その後も何かに魅力されるよう、大人達は樫沢さんの話題を絶やさなかった。

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そしてAが成人になった年。父親が樫沢さんを紹介すると話してきた。Aは別に会いたくもなかったが、父親の勢いに押し負けた。

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父親に連れられ樫沢さんの家へ向かう。ドアに鍵はかけられていない。父親は自分の家かの様に入った。Aも玄関をあがり、以前大人達が円を作っていた部屋に入った。父親は「樫沢さんに挨拶をしなさい」と笑みを浮かべ話した。部屋を見渡すが人などいない。

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そこには誰も座っていないソファが部屋の真ん中に置かれてるだけだ。「ほら!挨拶しなさい!」父親は語気を強くAに話した。その場には誰もいない。Aは戸惑った。すると父親は「すみません!まだ見えてないみたいで!またしばらくしたら連れてきますね。」

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そう言うと父親は誰もいないソファに向かい世間話をし始めた。Aは父親の様子に恐怖を覚え外へ出た。部屋の中の父親の笑い声だけが廊下に響いていた。その後、Aは社会人になり家を出た。

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先日久しぶりに団地へ帰ってくると居間にいた父親と母親が、誰もいない椅子に向かい老後の相談をしていた。どうやら樫沢さんを招き入れたらしい。まだAにはそれが見えない。

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