中編3
  • 表示切替
  • 使い方

夢の話

とても不気味な夢を見た。

僕は夕暮れ(恐らく夏の終わり)の校庭に立っていて、どこからともなく妹が僕を呼ぶ声がする。

妹の声は空からも、校舎の窓からも、遊具のひとつひとつからも聴こえてきて、それは僕のところに集まると輪唱のように重なってまた空や校舎や遊具に戻って行き、そしてまたこちら側に近づいて来る。

僕は妹に呼ばれていると思って妹の名前を呼び返そうとするが、妹の名前が出てこない。

そのうち場面は変わって僕は友人達と自転車を漕いでいる。

見慣れた街だが、現実には無い街で、今思い出そうとしても思い出せない。でも夢の中では確かに見慣れたいつもの街だった。自転車で玩具屋に向かう途中にガソリンスタンドがあって、ガソリンスタンドの店長がいつものように僕らに声をかける。

なんと言ったのかわからないが、笑っている。

ガソリンスタンドを過ぎて黄色い雨でもないのに雨ガッパを着た幼稚園児の群れを横目に坂道を下ると玩具屋があって、そこで顔の無い男に箱を渡される。

顔が無いと言うのは、のっぺらぼうみたいとか、首から上がないとかそういうことではなくて、目も鼻も口も耳も髪もしっかりあるのだがそれがどう配置されてどんな形をしていてどんな風に動いているのかわからないのだ。

目の前に顔があるのに、顔と認識できず頭の中がウネウネとして、顔の無い男は口らしきところからエヘエヘエヘと笑っていた。

すぐに場面が変わってショッピングモールの屋上の大きなタンクの下で僕らはその箱を開けた。

中にはピンクや赤や緑のプラスチックの宝石が入っていて、真ん中に手のひらからはみ出るほどに大きなウシガエルがいた。ウシガエルは頬を膨らませながらモゾモゾと動いていたが、僕は頭の中のウネウネを消し去るためにウシガエルを口に入れた。

無理矢理突っ込むとウシガエルは聞いたことのない声で鳴いて、ジタバタしながら必死に抵抗したが僕は一気に喉の奥まで突っ込んで咀嚼した。

しかしウシガエルは思いの外弾力があって、噛むほどに身体からネバネバとした粘液を出すので僕はとてもじゃ無いが飲み込むことができなくて目一杯口を開いて重力に任せてカエルを口から出そうとした。

だが今度はカエルが喉の奥の方に入ろうともがくので僕は必死になってカエルの後ろ足を掴んで引っ張った。

するとドロドロの「カエルだったモノ」が僕の口からボタボタと垂れて最後に目玉がポトンポトンと落ちたと思ったが、

僕は白目を剥いて口を開け、口からカエルの残骸をポトポトボタボタと垂らし続けた。

カエルの目玉は2つではなく、いつまで経っても僕の口から雨漏りのようにポトポトと落ち続け、僕の口の下では黄色い雨ガッパを着た幼稚園児達がこちらを見上げて口々に何か言っていたが僕はそれどころではなかった。

気がつくと僕は神社にいて、神社には顔の無い男と幼稚園児の群れと6人の兵隊がいて、何故かワルツのような、わかりやすく言うとサーカスのジンタの様な音楽が流れていて、皆それに合わせて神社の周りをグルグルと回っていた。

ここはどこですか?と僕が聞くと顔の無い男が近づいてきて

「君はこの病院で産まれたんだよ」

と訳のわからないことを言うので僕はそこを去った。

森の中を歩いていると顔の無い男がついて来るので、僕はもう一度彼に、ここはどこですか?と聞いた。すると今度は顔の無い男はしゃがみ込んで泣き始めた。

「もう行ってしまったんですね。さようならさようなら」

と言っていた。

目を覚ますとビッショリと汗をかいていて、こんな事初めてなのだが僕は泣いていた。

これ以降僕の夢には顔の無い男と黄色い雨ガッパの幼稚園児達が度々登場してその度に訳のわからないことを言って僕は汗と涙でぐちょぐちょになりながら目を覚ます。

Concrete
コメント怖い
0
2
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ