中編6
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メリーさん

これは、友人の加藤君に聞いた話です。

加藤君が話してくれたまま、加藤君目線で書いていこうと思います。

小5の頃、近所に変わった女の人がいたんだ。

夏も冬も麦わら帽子を被ってて、薄いワンピースに裸足にサンダルでフラフラしてるんだけど、髪の毛がサラサラのストレートで顔も凄く綺麗で色白ですらっとしてるんだ。

ただ、先生含め大人達は彼女にはあんまり近付くなって言うし、確かに何考えてるかわからない得体の知れない感じかしたから、俺達も遠巻きに観察するだけで近付こうとはしなかった。

彼女は誰が呼び始めたか知らないけどメリーさんて呼ばれてた。

ある時、公園で遊んでたらメリーさんが近づいて来て、俺達が遊んでるのをニコニコしながら見てるんだ。

ちょっと怖かったけど何かしてくるわけでもなくて、そのうち恐怖心も薄れて来て、俺達の中にうっすらあった

「大人の女の人と仲良くなりたい」

っていう感情と、好奇心に負けて友達の1人が話しかけちゃったんだ。一緒に遊びますか?って。

そしたら遊ぶ!やったー!遊びたい!やったー!

って、俺達より年下の子供みたいに喜んでピョンピョン飛び跳ねんの。

子供心に流石にヤバい人だって思って、結局鬼ごっこの途中で皆んなで逃げたんだ。

それからしばらく彼女を見なくなって、一ヶ月ぐらい経った頃かな?

天気の良い日曜日だったと思うんだけど、火事を知らせる防災無線が鳴ったんだ。

当時消防団に入ってた父親が慌てて着替えて家を飛び出して行ったのを覚えてる。

でも十分ぐらい経ってまた防災無線が鳴って

「鎮火しました。」

って。

その後すぐ父親も帰ってきて

「早かったね。大した火事じゃ無かったの?」

って母親が聞いたら

「うん、まあ…」

って言うんだけど、父親の顔はゲッソリしてた。

救急車の音とかも聞こえたから、大きな火事だと思ったんだけど…

その夜、なかなか寝付けずにいると両親の話し声が聞こえてきた

「昼間の火事さ○○さんとこだったんだけど…ほら、あの頭おかしい長女いるだろ。あれが頭から灯油被って火付けたんだよ。それで近所の人が火事だと思って通報したんだって。」

「うそでしょ…また自殺?…なんであの辺自殺多いのかしら…あの近くって昔も焼身自殺あったわよね?」

「呪われてんのかなぁ…気持ち悪い。」

って。

それからしばらく学校はその話題で持ちきりだったな。

それからしばらく経って大学卒業して地元戻ってきてさ、こっちで働くようになって夜同僚と飲みに行く事が増えたんだけど、ある日近所の商店街にある寿司屋で飲む事になったんだ。

商店街って言ってもほとんどシャッター通りなんだけど、その商店街の1番奥に寿司屋があって、そこで同僚と飲んで、夜の10時ぐらいに店を出た。

同僚達はタクシーを呼んだり嫁さんに迎えにきてもらったりして帰って行ったんだけど、俺は家も近いし酔い覚ましに歩いて帰ろうと思って皆んなを見送ったんだ。

一服して帰ろうと思って、店の前でタバコを吸ってたらその時ふと、寿司屋と道路を挟んで向かい側の家がメリーさんの家だってのを思い出したんだよ。

メリーさんが死んですぐ家族みんな引っ越しちゃってそれ以来ずっと空き家なんだ。

二階建ての普通の家なんだけど、日当たりが悪いのもあって、あんな事件があったせいかどことなくどんより薄暗ーく感じるんだ…

そう言えばメリーさんて女の人いたなぁ。と思ってふとその家の二階の窓を見ると、カーテンが開いていた。

真っ暗だから何も見えないんだけど、なんか違和感を感じてジーッとその窓を見てると、ズズ…って窓の内側の真っ暗な空間が動いた気がした。

なんだろう?と思ってしばらく見ていると、目が慣れてきたのか、次第に暗闇の中に何かが見え始めたんだ。

それが、大きな女なんだよ。

頭の大きさも身長もめちゃくちゃでさ、一階から天井を突き破って立ってないと辻褄が合わないってぐらいでかいんだよ。

酔ってたし、見間違いだと思って何回も目を擦って確認したんだけど、やっぱり家の中にいるんだ。そんでゆっくり揺れてんの。

俺霊感とか無いからそんなもん見るの初めてで、怖くて固まっちゃってさ…

絶対メリーさんの霊だ…って。

とにかくここから離れよう。家に帰ろう。と思うんだけど目が離せないというか、動けないんだ。金縛りなのか、怖すぎて固まっちゃってたのかわからないけど、とにかく動けなくて、たぶん時間で言うと10分ぐらいだと思うんだけど、永遠のように感じだよ…

ようやく動けるようになって、やっと窓から目を外す事ができて、逃げろ!って一歩踏み出した瞬間気付いたんだけど、メリーさん家の庭に何かいるんだ。

もうメリーさんの家に目線を向けるのは嫌なんだけど、視界の隅に赤いものがユラユラしてるのがわかった。

今度は何だよ…と思いつつ、結局そっちを見ちゃったんだよね。

そしたら、全身を炎に包まれた人間が庭をぐるぐる歩いてるんだ。

手を前に出して助けを求めるように、映画のゾンビみたいに。

あ、メリーさんだ。って思った。

だってメリーさんはこの庭で自分に火を付けて、断末魔を上げながら庭をグルグル歩いてたって、近所の先輩に聞いた事があったから。

なんで今日に限ってこんなもん見なきゃ行けないんだろう。

今まで霊感なんか無かったのにって半ば泣きながら必死で走って家に着いて、その日はもう怖くて風呂にも入れなかった。

で、次の日地元の先輩にその事を話したんだけど、先輩も

「そりゃあんな死に方して成仏できるわけないよなぁ…メリーさんの葬式さ、遺影が無かったんだよ。参列者も少なかったし…きちんと弔って貰ってないのかもなぁ」

と言ってた。遺影がない葬式ってなんだよ…と思って、少しメリーさんが可哀想になった。

俺は、そんな事してどうにかなるとは思えなかったが、メリーさんの家の前に花と線香を備える事にした。

そしたらそれをちょうど寿司屋の大将に見られててさ

「なんだ、知り合いだったのか。まあ皆んな忘れちまってるから喜ぶかもなぁ。でも、たぶん無理だぞ。」

って言うんだよ。無理ってなんすか?って聞くと

「あの子があんな風になったのも、あんな最期を迎えたのも、この家のせいなんだよ。この家っつうか、この一帯…この辺りってのは昔から祟られてんだ」

祟られてるって言われても、前までの俺だったらくだらねーって笑ってたと思うけど、あんなん見た後だったからもう少し詳しく聞かせてくれって頼んで大将に話聞いたんだ。

そしたら、この辺は大昔遊郭があって、ある時その遊郭が火事で全焼したそうなんだ。

で、そこで働いてた遊女達が大勢焼け死んだらしいんだけど、身寄りのない女達だったからまとめて埋められたんだって。ろくに供養もされなかったらしい。

だからその遊女達の怨念みたいなのが集まってて、昔からこの辺は変な事故とか自殺が多いんだよ。

って。

で、その遊郭があったど真ん中がメリーさんの家なんだって。メリーさん一家はそんな事知らずに他所から越してきて、すぐに長女…つまりメリーさんが産まれた。

子供の頃は賢くて快活な子供だったんだけど、メリーさんが18の頃に突然あんな風になったんだってさ。

18って、当時の遊女が客を取る年齢らしいよ。関係あるかわからないけど。

たぶん遊女達の怨念みたいなのがメリーさんに取り憑いたんじゃないかなぁ。

ここに家が建つまではこの一帯で起きてた自殺や事故が、家が建って以来ピタッと止んだって言うんだ。

たぶんここに家が建った事で遊女達の居場所ができたんじゃないかな…

ほら…あの家で親が見た大きな女の影さ、あれって遊女の怨念の塊なんじゃないかって…

だから、あの大きな女があそこにいる限り、あれに取り憑かれてるメリーさんの魂もあそこから出られないんじゃないかな…

これが加藤君が実際に体験したメリーさんと言う女性の話です。

僕は最後に加藤君に尋ねました。

そのメリーさんの家は今どうなったの?

加藤君は

「あぁ、それが、1年ぐらい前に取り壊されて駐車場になったよ。だからあの女はもうあそこにはいないと思う。メリーさんも。いないけど、きっと成仏もしていないと思う。この件を知らない人にとってはただの空き家だから、お祓いも供養もしないだろうからね…。きっと今もあの商店街の辺りを彷徨ってるんだと思うよ。」

と教えてくれました。

いつか、この哀れな魂達が安らかに成仏できる事を祈るばかりです。

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