短編2
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残像2

休みの日に繁華街に出かけた。

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その日は街ぐるみのイベントがあっていたみたいで、商店に挟まれた二車線の道は歩行者天国になっており、人で溢れかえっていたな。

楽しげな家族連れ、仲良さげなカップル、様々な人たちが

晴天の下ぞろぞろ歩いている。

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そんな人たちの背中を眺めながら歩いていると、前方に一人だけおかしな人がいた。

その人、道の真ん中辺りでこちらを向いて突っ立っているんだよ。

通行人たちは別に気にする様子もなく、その傍らをすいすい通り過ぎて行っていた。

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40後半くらいかな。

上下黒のスーツ姿の中年のおっさんで髪をきちんと七三に分けて見るからにくそ真面目な感じなんだけど、2つの目を目一杯開いて何かを探しているかのように、空を仰いでいるんだ。

その様があまりに必死だったから、俺そのおっさんの隣に立って思わず声をかけたんだ。

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「あの、何か見えるんですか?」

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突然声を掛けられて、驚いた様子でおっさんは俺の顔を見ると、おもむろに斜め上の方を指差しながら「ほら、あそこ」と呟くんだ。

言われて俺はおっさんの真横に立って同じ方を見るのだけど、見えるのは青空の下に立ち並ぶ大小の雑居ビルだけなんだ。

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「え?どこのことですか?」

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そう言って、俺はおっさんの横顔に目をやる。

するとおっさんは血走った目で俺の顔を見てから再び斜め前方の一方向を指差しながら、もどかしげにこう言ったんだ。

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「ほら、いるでしょうが、あの茶色いビルの屋上の縁に人が立っているのが」

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俺は言われた通り、立ち並ぶ雑居ビルの方を見て茶色いビルを探す。

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そのビルは確かにあった。

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左右のビルとは明らかに違う、時代に取り残されたような崩れ掛けた廃墟のようなビル。

そのまま屋上へと視線を移すと、おっさんの言う通り黒い影のような男が柵の前にポツンと立っている。

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「本当ですね。危ないなあ、あの男の人、あんなところで、、、」と言い掛けた時だった。

その男はあっさりそこから飛び降りたんだ。

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「大変だ、人が飛び降りましたよ!」

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そう言って俺はおっさんの方をみる。

するとおっさんは平然とした様子で俺のほうに向き直ると、悲しげに微笑んだ

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その時だった。

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グシャリという何かが潰れたような音がしたかと思うと、

おっさんの平凡な顔は一瞬で血に染まった醜く崩れた姿に変貌し、フッと消えた。

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その途端に辺りは、静寂とモノクロームの世界に変わる。

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押し寄せる雑踏の中俺は両膝をガックリとアスファルトにつき、1人呆然と晴天の空を仰いでいた。

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fin

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