その日、世界は終わりを告げようとしていた。
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この町を蝕む悪意は巨大な実体を持ち、宛らアポカリプティックサウンドのように奇怪な音を辺り一面に響かせている。
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僕は、もう駄目だと悟った。
どれだけ足掻いても、敵わない存在は世の中にいる。
どれだけ僕が強くても、世界の終末を止めることなんか出来ない。
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悪意の集合体である黒い影は、その巨体から無数の槍らしきものを放つ。
それが僕の目の前まで迫ってきた頃、かつて敵だった者が槍に貫かれた。
彼が何かを言っている。
何を言っていたかは思い出せないが、この町を救いたい気持ちは同じであった。
消えゆく彼の力が、僕の中に流れ込んでくるのが分かった。
同時に僕の中のもう一つの力が解き放たれ、自分が人では無くなっていくような感覚に陥る。
僕は彼が残した槍を手に持つと、巨大な悪意に向けてそれを構え、そして力強く放った。
凄まじい轟音と、断末魔のような不協和音が町中に鳴り響く。
そこで、前の世界での僕の記憶は途絶えていた。
そんな事が書かれた日記を、私は机の整理中に見つけた。
あれは、高校生の頃だっただろう。
戦っていたのは私だけではない。
多くの仲間達と、全ての元凶を倒した一人の英雄がいたのだ。
それ以降、この町で大きな脅威が現れる事は無くなった。
そのはずだった。
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あれから25年———
悪意は再び、その数を増やしつつある。
一般的に“心霊現象”などと呼ばれるそれらを、我々は『ノイズ』と呼んでいる。
その『ノイズ』に対抗するべく我々の立ち上げた組織が『ホオズキ会』なのだ。
不意にドアをノックする音が聞こえ、部屋に一人の若い女性が入って来る。
「失礼します。果野川河口付近で確認されたノイズ現象につきまして、調査班からクラスBとの報告が届きました。本日18時、真城で除霊を遂行します」
そう話した彼女の右肩では、管狐がもぞもぞと動いていた。
管狐は数匹おり、うち一頭は部屋中を愉快に駆け回っている。
「わかった。現場の封鎖は?」
「北上さんの結界で封鎖済みです」
「了解。気を付けてね。何かあれば連絡ください」
「了解です。失礼しました」
そう言って部屋を出た彼女の後を、はぐれた管狐がドアをすりぬけて追っていく。
「増えたな、ノイズ……」
静まり返った部屋の中で、私は溜息のようにそう呟いた。
作者mahiro
ご無沙汰しております。
mahiru改め、井守まひろと申します(※夏風ノイズの人です)
久しぶりに新作オカルトミステリー小説を書き始めたので、正直こちらで出そうか迷いましたが、公開させて頂くことにしました。
求められていないようでしたら削除します。
一応、連載しているサイトのURLも載せておきます。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/9050463/665675356
コワバナ様でも、やめろと言われない限りは連載し続ける予定ですので、また改めてよろしくお願いします。
怖話復帰についてのコメント(※ご一読ください)
https://twitter.com/blaze_rearise/status/1630581684512120834?s=46&t=UzgrKJsL_Juc56ML3raiew