梅雨時の夕刻、ある高校生が、一人で通学路を歩いていた。
その日は風が強く、空は一面雨雲に覆われていた。
両側を広い田んぼに挟まれた、人通りのない一本道を俯きながら歩いていると、突然、顔に布のようなものがかぶさってきた。
湿った感触が顔に伝わる。
急いで引きはがすと、それは包帯だった。
赤黒い血がべったりと付着している。
高校生は驚き、すぐさま包帯を手離した。
地面に落ちた包帯を見ると、長さが二メートルほどあった。
そして、顔に触れた部分だけが、血で染まっていた。
よりにもよってどうして血が付いた部分が顔にかかったのだろう。
そう思いながら包帯をじっと見つめていると、生暖かい風が吹いた。
包帯は風に飛ばされ、ひらひらと上空を舞った。
そのまま空の彼方へ飛んでいき、やがて見えなくなった。
作者スナタナオキ