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中編4
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つかれているハンカチ

 私には変わった友人が多い。

 なぜか、私のまわりには一風変わった連中があつまるようで、話

題に事欠かない。

 この話は数年前に飲み屋で知り合った自称:脚本家の友人が話し

てくれたこと。

 あまり売れているとは言えない友人で、教えられたDVDなど見

ると売れなさそうな作品にペンネームが載っている、そんな彼があ

まりに真剣に話してくれたので、ここに載せてみようと思った。

 何か大変なことになっては困るので。

 彼は東京駅を利用することが多いわけだけど、東京駅には噂があ

るそうで、“ 落ちているハンカチを拾ってはならない ”そうだ

 彼も 「 ? 」 な内容で、それがどういうことなのかよくわ

からなかったらしい。ただ業界の、風のうわさというか、何かで耳

にしていた。

 脚本家というは、ただ書けばいいというものでは無いらしく、彼

のような立場の人は、積極的の持ち込みなんかもするそうで、本業

は持ち込みだ、なんていうぐらい、外を出歩くことも多かった。

 東京駅で、エスカレーターに乗っていて、脇を見ると、ハンカチ

が落ちている。

 長いエスカレーターが数本、上へ下へと乗客を乗せているその間

、銀色の滑り台というか、もちろん滑っていく不埒者(ふらちもの

)を止めるストッパーがついているんだけども、そこにハンカチが

落ちている。4つにきちんとたたんである、花柄の、どこにでもあ

るハンカチだ。

 ああ、ハンカチがあるなぁ・・・

 と彼はそう思った。

 数日後、持ち込みをして断られての帰宅路、かなり落ち込んで電

車を待っているプラットホームで、ベンチに腰かけて頭をかかえて

下を見るとハンカチが落ちている。

 4つにきちんとたたんである、花柄の、どこにでもあるハンカチ

だ。

 ああ、ハンカチがあるなぁ・・・

 と彼はそう思った。

 ん?同じハンカチか?

 誰にも拾われず、まだここにあるのか?

 それから数日後、ちょうど昼食時なので、このまま電車を待つ間

、何か腹に入れるべぇと立ち食いソバを探した。よく利用するとこ

ろだ。その入り口、ドアの下を見ると・・・ハンカチが落ちている

 何人かに踏まれたのだろう。それなりに汚れているが、あのハン

カチだ。

 「・・・・・・」

 そのハンカチを蹴って、するとハンカチは滑るようにフロアーを

移動して少し先で止まり・・・脚本家はソバ屋へ入った。

 東京駅を利用している人たちの誰かが蹴ってどかしているから、

さまざまな場所に出没するわけで、なぜ誰も拾わないのだろう?

 こうなると、意地のようになって、彼はハンカチを拾わなかった

そうだ。この頃になると、東京駅に行くと、知らずにハンカチを探

すようになり、ハンカチに逢わないとホッとするような、くやしい

ような、そんな気分になったそうです。

「なあ、あの話、“ 落ちているハンカチを拾ってはならない ”

っていうあの話さぁ ハンカチを拾った人はどうなるんだい?」

 誰に聞いたか覚えていなかったので、心当たりの人に聞いても、

「 知らない 」「 さぁ? 」ばかりで、要領を得ない。

 ついにある日、エスカレーターに片足を置いて手すりの向こう側

を見ると、誰も気付かないようなフロアーの片隅に、それが落ちて

いた。

 それなりにボロボロになっているが、花柄のハンカチだった。

 ハンカチというか、ボロボロになった布きれ、ゴミ箱へ捨てるゴ

ミだった。

 置いた片足を戻し、後ろの人を押しのけて降りて、ハンカチの前

に立つ。

 彼は、それをソーッと・・・半分ぐらいめくった。ゆっくりと持

ち上げた。

 そこには・・・穴があった。

 まん丸い、奥が見えない、真っ黒な穴が。

 ・・・ぜったいにおかしい。なんでこんなところに穴が!?東京

駅の手抜き工事か!?たまたまハンカチがその上に偶然置かれてい

ただけか?このハンカチは、私が見ていたハンカチとは別物なのか

 だれもこちらに注意を払っていない。皆、忙しそうに通り過ぎる

だけ。

 引き寄せられるように、彼は顔を近づけた。穴をのぞき込もうと

顔を近づけたその時

 「おい、何か用か!?」

 その穴から、ひょっこり小人が出てきたそうだ。

 いや、ほんと、マジで。

 とは言え、その小人は白雪姫などに出てくるような可愛らしい小

人ではなくて、一つ目の、頭に短い角が一つ出ているような、半裸

の、そういう小人だったそうだ。

 その時、彼は思ったそうだ。

 ああ・・・俺は憑かれたのかな・・・そう思った。

 どうでも良いことだけど、バーで飲んでいる時、話の合間にポケ

ットからボロ雑巾のようなハンカチを取り出して、それで躊躇(ち

ゅうちょ)することなく顔の汗を拭く、だから最近の彼から目を離

せない。

怖い話投稿:ホラーテラー るすいさん  

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