短編2
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息子へ

ある母子家庭の話です。

息子と母親二人で暮らしていたそうです。

ところが息子が高校卒業したばかりなのに子供が出来てしまったそうです。

もちろん、仕事もないし、母子家庭なので経済的にも苦しい。

産んでも不幸にしかならないと思い、息子も彼女も中絶しようとしたそうです。

しかし、母親が「せっかく授かった子供を殺すことはするな」と二人を説得して、子供を出産させたそうです。

生まれてきた子はとてもかわいい女の子です。

最初のうちは息子も彼女もよく面倒を見ていたそうですが、まだ十代、他の友達とかは大学生になったばかりなので、楽しく遊んでいる友達をみて二人とも子供を母親に押し付けて遊びに行くようになったそうです。

母親は文句を言いつつも初孫はかわいいので面倒見ていたそうです。

娘が4歳になりそうなとき些細なことがきっかけで喧嘩を繰り返すようになり、遂には離婚することになったそうです。

当然、息子が子供の面倒を見れるはずもなく彼女が子供を引き取る話をすると子供は「お母さんはいや。おばあちゃんがいい」と言ったそうです。

何度も何度も子供を説得しようとしたそうですが、子供は一切、耳を貸さず最終的には祖母、息子、娘で暮らすことになったそうです。

離婚から数年たち、その母親も不幸な事故にあい亡くなってしまったそうです。

葬儀もあり、これから先のことも不安になりながらも、疲れていたせいもあり、息子はすぐに眠ってしまったそうです。

その夢の中で亡くなった母が出てきて部屋の隅っこにある、机の引き出しを指さしていたそうです。

翌朝、昨日の夢を思い出し、机の中を探してみるとその中に小さな箱があり、そのなかに手紙と孫娘名義の定期預金が入っていたそうです。

その手紙は子供を引き取った時に書かれていた手紙で、自分も未成年のときに子供が出来てしまったが育てきれないという理由で中絶したこと。

息子を授かったが片親になってしまったこと。

孫娘と一緒に暮らせる幸せ。

色々書いてあったそうです。

お母さんは最後に息子に対して、感謝を伝えたかったのでしょうか?

怖い話投稿:ホラーテラー タツさん  

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