これは、私が小学六年生だった約二十年前の話です。
その日もいつもの様に、授業が終った放課後の教室には、
私も含めた男二名、女四名の仲良し六人組が残っていました。
毎日飽きもせず、他愛も無い話で盛り上がっていたのには、
幼かったせいもありますが、何よりその中の一人に淡い恋心を抱いてたからだと思います。
その日は楽しかった運動会の話や、日常の事でひとしきり盛り上がった後、
一旦は下校の流れになりました。
しかし、好きな女の子とまだ話したい、少しでも気を引きたい私は
「ね、今日も墓石がオレンジに光ってるよ」
と、言い外を指差しました。
突拍子のない話ですが、みんなは分かっているので、
一斉に教室の窓から校庭横の高台を見上げます。
其処には小学校と隣接した古い墓地があり、
秋の夕日がその内三つの墓石に反射しています。
そんな光景から、話はちょっと怖い話へと移り始め、
好きな子の反応が見たいが為に、私も知り得る怪談話を披露しました。
私ともう一人の男の子以外、女子全員が学校から家が近い事もあり、
教室全体が夕日で真っ赤になるまで話してから、下校する事にしました。
校舎の三階にある教室を出て、二階へと続く階段を降りて踊り場に立つと、
向かいに立つ体育館の横並びの大きな窓と、丁度同じ高さになります。
其処には足場などありません。
「えっ...な、な」
と、一人が言った次の瞬間、私達は階段を降りる足を止め、絶句に近い悲鳴を上げて固まりました。
一つの大きな窓全体に、体が半分しか映っていないその大きな少女は、
無表情でこちらを見つめたまま、スーッと流れる様に窓を横切って消えていきました...。
私達は腰を抜かす所か、
一目散に昇降口の下駄箱を目指し、慌てて階段を駆け降りました。
しかし、下駄箱のある昇降口に着いて、一番先に目の前に見えるのは、
通用口の先にある体育館の出入り口です。
其処にはさっき見た少女が、今度は青白い唇を噛締め、恨めしそうに睨んでいました。
もう限界でした...。
その背筋も凍る様な少女の形相に、私達はそれぞれ奇声に似た大声や悲鳴を上げ、その場へ座り込みました。
駆けつけた先生方と用務員のおじさんに事情を泣きながら話しましたが、
そんな話は当然誰一人として聞く耳は持たず、
結局はその出来事を口外する事と、放課後の居残りが禁止されただけでした。
その後は気味が悪い感じは残りましたが、
特に何事も無いまま小学校を卒業しました。
今では勿論、その少女が何者だったのか知る術はありません。
ただ、当時の記憶を共有する友人と、その後自動車学校で偶然再会し、
妻となった初恋の人との大切?な怖い思い出です。
怖い話投稿:ホラーテラー へっぽこピーナッツさん
作者怖話