『合わせ鏡』ってありますよね。
鏡と鏡が向かい合って設置されている状態。
鏡は鏡を映す。
鏡に映った鏡も鏡を映す。
繰り返し繰り返し。
それが延々と続けられるわけですが。
そこに自分が写っても、一人目の自分しか見えませんよね。
他の人には、鏡に反射され続けて、何十人にも増えて映る私が見えてるのに。
合わせ鏡が不吉だというのは有名な話。
小さいとき、親にドライブに連れていかれたんです。
子供心に、車に乗ってるだけのドライブが退屈で。
車のなかで寝てました。
でも、どこかのパーキングエリアについたとき。
まだ長い間車に乗ってるから、トイレに行きなさいってことになって。
年の離れた姉とトイレに行きました。
なんか随分古いというかボロいというか、粗末なトイレで。
汚いし臭いも不快だったし。
おまけに『合わせ鏡』で。
その頃の私には『合わせ鏡』が不吉だとかいうことはわかってませんでしたが。
幾十にも映され合う鏡が不気味に思えました。
トイレを済ませて手洗い場に行くと、やはり『合わせ鏡』が目に止まる。
まぁ別に単なる鏡なので手を洗い終え、姉のことを待ってると。
薄暗いトイレだからなのか何なのか、鏡に黒いというか、影のような妙なものが映っている気がしました。
姉のことを待ちつつ、それを見ていたんですが何なのかよくわからず、少し近づいて確認しようと思い。
背の小さい私は手洗い場に腕を引っかけ、鏡の方に身を乗り出しました。
やっと、わかった。
顔だ。
薄暗くて確信は持てませんが私には顔にしか。
驚いて飛び降り、身を翻して逃げようとしたら。
『合わせ鏡』なので振り返っても鏡。
そちらにも顔は移りこんでいて。
鏡に映った鏡にも、その鏡に映った鏡にも。
トイレの外で泣きじゃくっている私を見て、姉が唖然としていました。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話