私の恐怖体験は
映画館でした。
友達と2人で恋愛映画を見に行ったんです。
テレビでCMもバンバン入ってたヤツで。
私も友達も彼氏がいなく…
ただ、その恋愛映画にトキメキを期待して…
友達とキャッキャはしゃぎながら、指定席に座りました
『端が空いててうれしぃ』
『トイレ行きやすいもんね~』
なんて会話しながら…
映画館は以外と空いていて
『貸し切りじゃーん』
なんて言って…
私は一番端っこに座りました。
そして、映画が始まります
あたりが暗くなりはじめ足下用のランプが付きました。
わくわくしてる時
??
私の視界に何か違和感を感じました。
私はそれを気にすることなく、予告を見入り、友達と小声で、
『これ見たいね』
『また来ようよ』
と話していました。
そして、また違和感を感じました。
私は目を席の横の小階段通路にやりよく凝らしました。
…!?
私は一番上段に座っていたのですが、
ちょうど階段をあがる1段目の、ぼんやりした足下のあかりの中に
男の人の足が
こちらを向くように
立っていました。
(えっ?なんで?)
顔を見ようといくら目を凝らしても、その男の上半身は見えません。
そのうち足も見えなくなりました…
(気のせいか…)
私はまた映画に集中しようと思いました。
そしてまた違和感を感じ…
恐る恐る階段に目をやると
またこちらに行儀良く向いた足が見えました
(!?!?)
すぐ消えるのですが、ぼんやりした灯りの中にハッキリ見えるのです。
(え?何?)
焦り始めた私はそれでも、気にしないようにしてました。
超大作の恋愛映画にまったく不向きなシチュエーションだったんで。
そして映画に集中し始めたころに限って
邪魔をするかのように、足は現れました。
そのたびに意識しないようにしてましたが…
その時…
気づいてしまったんです。
下はスーツズボンに皮靴を履いていることを。
(さっきはそこまで見えなかったのに…
え?上ってきてない?)
最初に見たときは一番下にいたはずの足が、今は階段の真ん中あたりにあったのです。
私は、もう普通でいられなくなりました。
友達に声をかけようと思いましたが、
映画に夢中の彼女に申し訳なく、言えずにいました。
(どうしよう…)
ちょっと目を友達に向け階段に目を戻したときでした。
男の足はすぐ2、3席前まできていました。
(えっ!?!?)
私は焦り、そこに人間がいるんだと、よく目を凝らして上半身を見ようとしましたが、暗さに隠れるように全く見えません。
ただただ、行儀良く、身動きひとつない足がこちらを向いて立っていました。
パニクる私はもう一度よく考えて、
事実じゃない…
本当に起こってるわけない。
と、正気に戻ろうと自分に言い聞かせました。
目をつぶり…
深呼吸。
(ないない…疲れてるだけ…)
力を体に入れ込んで
目をあけました。
足が、じっとこちらを見るように…
すぐ目の前に立っていました。
『ヒッッ…!?』
私は、無意識に上半身に目を向けてしまいました。
そこには、
上から見下ろされるように…
顔だけがありました
私はもう何にも考えられませんでした
瞬時に体がこわばって
悲鳴すらあげれませんでした。
その顔は
白目をむき、
口が定まらず
にたにた…と
笑っていました。
その顔を見て
私は意識がなくなりました。
『ちょっと、何寝てんの?』
…
『映画終わったよ!』
私は意識を戻すと慌ててまわりを見回しました。
周りはすでに明るくなっていて
男の姿は全くありませんでした。
『最悪なんだけど、何で寝れるかなぁ?』
私も、寝てた言い訳に聞こえるかも…
本当に寝てたかもしれないと思ったので友達には話しませんでした。
『寝ちゃって、ごめんね…』
映画の内容を聞きながら、映画館を出ると友達がトイレに行きたいというので
女子トイレ付近で待っていました。
友達はなかなか出てきません。
心配していると、しばらくして友達がいそいそと出てきました。
『大丈夫??』
『うん。変な人が出た…』
『変な人!?』
『私しかトイレいなかったんだけど…誰か入ってきた?』
『誰も入ってないよ』
友達は泣きそうになりながら言いました。
『…でもね、座って用を足してたらね…トイレの扉の隙間に黒い革靴がこっちを向いて立ってたの』
『えっ!?』
『ずっといなくならなくて…気がついたらいなくなって、私急いで出てきたんだ』
私は全身に鳥肌が立ち、恐怖ですぐその場を友人と立ち去りました。
それからは、トラウマになり映画館も行けなくなりました。
その後、足は見えせん。
ですが…
今でも感じる事があるのです。
あの時の違和感を。
怖い話投稿:ホラーテラー 夜更かしさん
作者怖話