フィクションです。
とある男がいた。
彼は、事業に失敗して多額の負債を抱え込んでいた。何をするにもやる気が起きず、この先の人生に何の希望も持てなかった。
彼が1人街を歩いていると、10人程のスーツを着た男達が彼に近寄ってきて、その内の1人がこう言った…
『あと、半日…
どうする?延長の利息は今の倍の苦労だが、延長するか?』
彼は意味も分からずにその場は無視してやり過ごした。
それから何日か経ったある日。彼が電車に乗ろうと駅で電車を待っていると、またあの時の男達がいた。男達は薄笑みを浮かべて彼を見ている。
どうやら、何かこそこそ話しているようだ。
気味が悪い。
彼は出来るだけ男達から離れようと、ホームの先へと移動した。
『間もなく、2番線に……』
電車到着を告げるアナウンスが鳴り、そしてすぐに電車のけたたましい警笛が聴こえてきた。
「えっ!?何で…」
瞬間、彼の体は生きるための機能を停止した。
ホームが騒がしくなっていく。
静かに。喧騒に包まれながら、しかし静かに彼は去っていった。
『やっと来たか。』
「…一体。どうなってるんだ?」
『神が君を指名した。
我々は神の命により君を迎えに来たのだ。』
「…俺は、死んだのか?」
『ああ。君は自分から死を選んだ。』
「ふざけるな!確かに、仕事を失敗して自分に絶望してはいたが、あんな死にかたなんかしたくなかった。あれじゃ晒し者だ!それに本当に神が俺に死を望んだのか?だとしら神は悪魔じゃないか!」
『そんなことは口にするものじゃない。
それに、神はちゃんと君に選択肢を与えられておられる。私達はきちんと君に伝えたが、君は何も答えなかった。すなわち、君は無言で死を受け入れたと、私達はそう判断した。』
「………。」
彼は、神が自分に下した余りに理不尽な仕打ちに何も言えなかった…
怖い話投稿:ホラーテラー 少ない乗客さん
作者怖話