私は、自分の母親と八年程しか一緒に暮らしていない。
四歳くらいの時に私は施設に預けられ、ホームシックになった私は
『お父さん お父さん』
と泣き続けていたのを覚えている。
だから、四歳より前に母親と暮らしていたのかは わからない。
ある日 定期的に会いに来てくれていた父親が、女の人を連れてきた。
私のお母さんだと言う。
私は、自分に母親がいたという事に驚いた。それと同時に、心から嬉しかった。
『お母さん?』
と私が照れながら聞くと、その女の人は
『そうだよ。これから一緒に暮らすんだよ』
と笑顔で言った。私はそれを聞いて、頭に血が上ったようにボゥっとし、なんだか体がフワフワした感じがした。
『お父さんと……お母さんと一緒に…』
なんだか嘘みたいで、夢心地だった。
これから始まる暮らしが、どんなものかも知らずに…。
父と母は一度別れて復縁した。だから正真正銘、私の実母であった。
実母でなければ、どれだけ楽であっただろうか…。
私が嫌われるのは、血がつながっていないせいだと諦める事ができただろうから。
生活に変化が現れたのは、一緒に暮らし始めてから半年程たった頃だった。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話