世間は俺を無視して働く・・・たった三十万円を掴んだ若者の幸福感は日常を堕落させた・・・
九月末日。
前回のチケン終了からそろそろ一ヵ月。いよいよ三日後から【四十五万円、一ヵ月コース】が始まる。財布に残る所持金は一万円を下回っていた。
振り返ると、理由は明白だった。ギャンブルに金を注ぎ込み、勝った日には祝杯として飲み歩き風俗へ。負けた日には愚痴をこぼしに行きつけのバーへ向かう。友人に会えば『俺のオゴリで・・・』と決まったセリフ。
酒浸りの『生活』。しかしお金が無くなった事が逆に良かったのかもしれない・・・チケン当日まで酒・ギャンブルを断ち体調を整えた。
通算二度目の一ヵ月コース初日。前回と同様にあの場所へ。受付を済ませ部屋へ向かう。常連気取りだった。
部屋のドアを開けると、前回よりも人数が多い・・・俺は思い出した。【四十五万円、一ヵ月コース】※募集人数二十名。
顔見知りはいなかったが、室内の雰囲気は少し懐かしかった。俺は勝者だと勘違いしたまま席へ座る。ブランド品を身につけた男の様になっていたのかもしれない。
担当と最後の一人が同時にドアから入って、また説明が始まった。今回も二つのグループAとB。
俺は今回もAグループだ。(前回と同じ内容か?楽勝だな)
また『一ヵ月コース』がスタートした。説明等に前回と変わりない。やはり昼食はあり、初日は夕食も出ない・・・デジャヴ感覚で初日を終えた。
翌朝。担当の登場、そして説明・スケジュール表の配布。日程は以前とまったく同じ・・・・・・・・・のはずだった
前回と違うことは些細な事。毎日の朝食・夕食後に錠剤を一錠飲む事。
錠剤の服用初日には何も変化はなかった・・・異変を感じたのは三日目。
トレーニング後の疲労感が前回より激しい・・・
(酒浸りの影響かな?仕事もしないで、無駄に飲んでたからな・・・)
酒のせいした。
四日目朝七時。体がだるく目蓋が重い・・・スケジュールはやり遂げるも、フリータイムに娯楽室へ向かう気にはなれない。
六日目。相変わらず体がだるく、トレーニングを監視する担当の何食わぬ顔がイラつく・・・
九日目。不調の原因は錠剤のせいだ!!と確信ながらも何も言えない。俺自身が希望して参加したのだから・・・
十日目。とにかくツライ・・・毎日続くトレーニング、変わらない風景?いや、俺以外のグループメンバーの表情も初期に比べ明らかに暗い・・・自分の事ばかり考えていた俺はようやく周囲の異変にも気が付く・・・
二週間目。前回は折り返し地点に少しワクワクしたのだが・・・そんな余裕はなかった。今では担当が悪魔に見える・・・仲間であるはずのメンバーの行動すらイライラする・・・
?日目。精神は崩壊し続ける・・・もはや食事もツライが悪魔は監視を止めない。時間も把握出来ずに、悪魔の裁きを受けながら・・・・・・ロボットの様にプログラムをただひたすら・・・
??日目。館内アナウンスに舌打ちをするのも疲れた・・・俺の耳は拒絶をしたのか?アナウンスが聞こえない・・・悪魔は口をパクパク動かしている・・・何というか・・・終わった。
???日目夜中。突然耳に音が帰ってきた・・・目が痛い・・・眩しい・・・
ギャアアアアアアアーーーー!!
ベットで奇声を上げ暴走する奴隷は悪魔にさらわれた。現実なのか夢なのか・・・幻覚なのか?
混乱の日。昼過ぎ・・・悪魔に運ばれた・・・行き先は・・・
ボーリング場。目が・・・耳が・・・痛い。しかし、懐かしい・・・世間の風景は俺に正気を・・・元気を・・・
懐かしくも重い七ポンド・・・溝掃除しか出来ない。Bグループの奴らは見下し、あざ笑う。
ギャアアアアアアアーーーー!!
悪魔が二匹で発狂した奴隷を連れ去る・・・ドコへ?ドレイハドウナルノ?
頬に感じる水滴・・・視界に映るぼやけた景色・・・
施設へ戻る車内に響くドレイの嘆きはトマラナイ・・・ナントイウカ・・・オワッタ。
一晩中泣き続けた。俺だけじゃない!みんなきっと『命』の重さに気付いたんだ!!
最終日。機械が並ぶ部屋で最後の検査・・・赤く腫れた目は潤む・・・確信出来る・・・終わった!解放だ!!世間で人生をやり直すんだ!!!
一秒でも早く世間を感じたい俺達に、悪魔は囁いた
担当『お疲れの様なので・・・もう一日宿泊出来ますが、どウ死まス化?』
【天秤】
・『命』と『金』どっちが重い?
・『幽霊』と『人間』どっちが恐い?
・『理想』と『現実』どっちが大切?
俺の中にある天秤は世間基準の『重さ』と『バランス』を?
2009年12月。平凡な毎日を過ごす俺はわずかな金と安定した『生活』に幸せを感じている。しかし、天秤のバランスは未だ一定ではない・・・・・・
今まで読んで頂きありがとう御座いました。長文・駄文・乱文・自分・中心・投稿、申し訳御座いませんでしたm(__)m柄にもなく感動系を誘おうとしたドMに・・・批判のコメントお待ちしております♪
FINISH
怖い話投稿:ホラーテラー ピリリィさん
作者怖話