中編3
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共同戦線 決戦―前編―

家に帰ると 父さんがソファで爆睡中だった。

母さんも寝室で寝ているんだろう…。

まだ昼前だしな。俺も夜に備えて、寝といた方がいいだろうか?

夜にはまた俺一人になる。

オッサン達はどこへ行ったんだろう…まさか もう…

って、今から弱気になってどうするよ!

よし!寝る!今は何も考えずに寝るぞ!

「ゆうや、母さん達仕事行ってくるからね!晩ご飯、ちゃんと食べんのよ!?」

「…んぁ?あぁ、わかった…」

「じゃあ、行ってきます!」

…最初は寝付けなかったはずだが、いつの間にか眠っていたらしい。

時刻は7時か…。昼飯を食ってなかったから、腹減ったな。下に行って飯食うか…。

階段を降りてリビングのドアを開けようとして、俺は変な違和感を感じた。

ガラス戸に俺が写っている…何かおかしい。

でも何が?わからない。

ガラスに写っているのは 確かに俺だ。一体何に違和感を感じたん…

!!

リビングの電気はついたままだった。部屋の方が明るいのに、俺の姿が写るわけがないじゃないか!

その事に気づいたとたんにガラスに写った俺の姿は、ぐにゃりと形を変えていく…!

「あ…あぁ…」

あいつだ!

俺と向かいあったまま、あいつは笑っていた。

段々と顔がガラスをすりぬけていく…

完全に顔が抜けた時、俺との距離はほんの数センチしかなかった。

そして あいつは言ったのだ。

「オマエノ…ニゲミチハ…ナイ!」

あまりの恐怖に意識が飛びそうになる…

しかし次の瞬間、頭をバシッと叩かれた衝撃と

「馬鹿か!白目むいてる場合じゃねえ!早く逃げるんだ!」

という怒鳴り声で 正気を取り戻した。

「オッサ…オッサン!?」

「いいから!早く行けぇ!!」

その声と同時に 俺は走り出し、外へ転がり出た。

肩にオッサンが乗っていた。

「ぶ、無事だったのか、オッサン!」

「当たり前だろーが!横見てみぃ!」

いつの間にかチョビが、俺に並んで 走っていた。

「チョビ〜!…あっ!」

尻尾が失くなってる!長くて綺麗な尻尾だったのに…

「尻尾はあいつに持っていかれちまったがな…」

くっそ〜!チキショー!!絶対許さねえ!

チョビの仇は必ず俺が…

「と、ところで…どこに…逃げるんだ?」

「………………………。」

「何、まさか今考え中とか!?」

「じ、じゃあ次を右に」

「真っ直ぐです!」

「カール!!」

「遅くなってすみません。ゆうや君、そのまま走って下さい!あの交差点まで…!」

あの交差点…って、カールが死んだっていう!?

「僕はあいつに殺されたんです…。」

あ、あいつに!?

「あいつをずっと探していたんだ、復讐するために!」

「カール…」

「ゆうや君には指一本触れさせやしませんから」

そう言って微笑むカールは、なんだか頼もしく見えた…

「おい!追ってきたぞ!」

後ろを振り向くと、ユラユラ左右に揺れながら こっちに近づいてきていた。

走っているわけでもないのに、距離の縮まり方が尋常じゃない!

「うわっ、うわあああぁ!」

俺は全速力で 街の中を駆け抜けた。

どれくらい走ったのか、気づくと街はずれの交差点にたどり着いていた。

あいつは追いかけてはこなかった。

もう…心臓が破裂しそうだ…。

「あいつ、な、なんで追って…来ないんだ?」

息がきれて 話すのがつらい。

「あいつは必ずきます。必ず…」

ここが戦いの場か。

いいさ 迎え撃ってやるよ!

俺はポケットの中の水晶を握りしめた……

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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