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中編5
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椅子に座った女

今回が初の投稿。読みにくいと思うが、最後まで読んでくれると幸い。

見事第一志望の大学に現役合格。俺は地元から遠く離れた大学に進学する事になった。心配性の親は勿論反対。諦めず粘りに粘った結果、ついに向こうが折れた。

大学では気の合う仲間も増え、特に仲が深まったのは同じサークルのA、B、Cの三人だった。皆俺と同じく遠く離れた所からこの大学の側に越してきたらしい。

大学生活や一人暮らしにも慣れてきたある日、Aが引っ越しをすることになった。母親が急に倒れて仕送りが厳しくなったからだそうだ。そこでまずは物件探し…という事になった。

A「物件ならもう見付かったけど?」

見たところ、案の定かなりの安物件。1LDK、風呂、キッチン、その他二部屋付で家賃32000円はないだろう。

俺「いわくつきってヤツなんじゃねーの?」

B「俺も思う!危ねーよお前…」

C「同感」

なんて言ってみたが聞く耳持たず。「せっかく苦労して見付けた物件を手放すか」と、結局そこへ引っ越す事になった。俺達が荷物運びを手伝った時に部屋を見たが、想像以上に綺麗だったのに驚いた。BとCは「良い物件見付けたな」なんて呑気な事を言っていたが、俺は逆にその部屋の綺麗さから、ますますこの部屋は怪しいと思うようになった。

Aがその部屋に住み始めて5日。

A「あの…1つだけ気になることあってさ。」

その言葉を聞いて、その日の夜Aの部屋を再び拝見することになった。

日も暮れてきた頃、俺とBとCはAの部屋を尋ねた。

A「お前なんでビールなんか持って来てんだよ」

俺「先輩に買ってもらったってさ」

C「Aの引っ越し祝いって事で。たまにはパーッとやろうぜ?」

A「どんな先輩だよ…未成年にビール買ってやるって。ありえねぇ」

B「まあいいじゃん。お邪魔しまーす」

俺はAの言っていた気になることを早く教えてほしかったが三人とも気にしない様子だった。俺も後から聞けばいいと、リビングに入った。

やはりなかなかの広さ。家賃6、7万はつけていいだろう。しかし程よくアルコールが回ってきたせいか、俺達はそんなこと気にしなくなっていた。

後で聞いたんだが夜中になって、俺はかなり飲んでいたらしく、地面で寝ていたのを三人が布団を敷いてそこまで運んでくれた。俺は爆睡し、三人はその間に近くのコンビニへジュースを買いに行った。俺を一人その部屋に置いて。

起きたのは三人がいなくなってからだろうか。目を開けると、リビングには誰もいなかった。寝室はリビングの隣に位置しており、ふすまが開けっ放しになっていたのでそれが確認できた。脚の短いテーブルの上には大量の缶ビールの空が置いてあり、俺は飲み過ぎて寝てしまったんだと気付いた。頭痛が激しく、気分も最悪だった俺は、寝返りをして寝室の壁側を向き、目を閉じた。その時だった。

缶ビールの空が地面に落ちるかわいた音を聞いた。流石に体が一瞬ビクッと反応した。頭痛に耐えながら再び寝返りをうちゆっくり目を開けると、缶ビールの置いてある机の向こう側、背もたれがこっちを向いた状態で茶色の椅子が置いてあった。そこに女が座っている。その時何故か俺はその女を誰かの彼女だと思い、寝ぼけながらこう言った。

俺「あんた誰だよ…Aの彼女かぁ?」

女「…」

背もたれの長い椅子のせいで女の頭は上半分弱の前髪と眉毛、横から覗く赤い袖と長い髪しか見えなかった。

俺「おい、誰だよ…お前。聞いてんのか?」

あまりの頭痛で少しばかりイライラしだした俺は、荒い口調になっていた。

しかしそのイライラも酔いも、次見た光景で一気に覚めてしまった。

女の足元。脚の短い机の下から見えた。つま先が向こう側を向いている。

あれ?

頭の上半分はこっちを向いてるのに?

よく考えたら不自然だ。背もたれに胸をつけて座る奴なんているわけない。いたとしても、脚が横から見えるはずだ。

状況を理解した俺は、全身から汗が吹き出た。金縛りにあっている訳ではないが体が硬直し、その女から目が放せない。

すると女が僅かに聞こえる声で唸り出した

女「………ウ…ヴゥ…ヴーーーーー」

逃げ出そうにもリビングを通らなければ当然外には出られない。

あれこれと思考を巡らせていると、女の唸り声が止んだ。と同時に頭が徐々に上に動き、顔が見えはじめた。脚はピクリとも動いてないが。

しかし

鼻から下が無かった。

俺は絶叫するとそのまま気を失ってしまったらしく、次起きた時リビングにはジュースを飲んでいる三人がいた。

俺は立ち上がると、帰る準備を始めた。

B「どうしたの?」

俺「今すぐここを出よう」

A「何で?」

俺「いいから皆ここを出るんだ!話は後でするから!」

俺が汗だくで急に大声を張り上げたもんだから、皆びっくりして、部屋を後にした。

そして俺の家まで皆を連れて来ると、さっきの一部始終を話した。

C「それ絶対夢だろ〜…」

B「怖ぇ!!」

だがAの反応は違った。

A「その背もたれの長い椅子って…何色?」

おかしな質問をしてきた。

俺「茶色…だけど…?」

Aは益々深刻な表情を浮かべると、次のような事を話し出した。

A「俺、気になることあるって言ったよな?それ…その椅子のことかもしれねぇ。一昨日まだ開けてない物入れを開けた時に、茶色で背もたれの長い椅子が入ってたんだよ…何か気味悪くて。大家に言って引き取ってゴミに出してもらったんだけど。そん時椅子の座面にさ、

…お札貼ってあったんだ。びっしりと。気になったけど聞く勇気なくて。大家がそん時に、「またか」って呟いたんだ…」

ゾッとした。

次の日は休みだったから、Aはすぐに引っ越しの手配をした。もちろん俺らも手伝った。

そして大家に聞いた。あの部屋で何かあったのかと。すると、案外簡単に教えてくれた。

大家「一年ぐらい前に、その部屋に一人の女性が住んでましてね。多分あなたが見たのと同じ人が…赤いコートを着てました。しかし何があったのか、一週間後に飛び降り自殺したんです。ベランダにはあの椅子があって…使い古されていましたから、多分あの女性が気に入っていたものではないかと…しかし落ちた衝撃は強かったんでしょうね。人間の形を留めていなかったらしいですよ…」

安物件は住むもんじゃないと思った。多分、他の三人も同じ気持ちだったはずだ。

後で聞いた話。Aはあの椅子を見付けてから、ある夢を見たという。

部屋のベランダに赤いコートを着た髪の長い女性がいて、あの椅子に座っている。そして写真を見ながら泣いていたそうだ。

もしかして、彼女は何かを俺に伝えたかったのかもしれない。今思えば、あの時の目は悲しそうだったような気もする。

信じるかは自由だが、これは俺の体験した実話。長文の駄文に付き合ってくれたあなたに感謝します。

ありがとうございました!

怖い話投稿:ホラーテラー 鬨さん  

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