幽霊等の類は出てきません。
興味のある方だけ読んで頂けたら有り難いです。
これは、15年前のお話。
私はある地方の公立大学の一年生で、一人暮らしを始めて半年が経過した頃でした。
同じ田舎から東京の大学へ進学し、一人暮らしをしている友達から電話が掛かってきました。
『頼む!助けてくれ。
』
友達の声は憔悴しきっていました。
何事かと思い話を聞いてみると、何日か前から全く見ず知らずの東北訛りのある女から、『もしもし?山田くんですか?山田くんでしょうよ!何してんですか?』と言うような電話が連日掛かってくるとの事で、何回『俺は山田じゃない!いい加減にしてくれ!警察に通報するぞ。
』と言ってもケタケタ笑うだけで効果なし。
電話を切っても5秒後には掛かってくる有様で、酷い時には深夜にも掛かってきて、電話の着信音の音量を0にしても、朝起きると留守電が1分ごとに50件入っていたそうです。
いい加減ノイローゼになりそうだと言ってました。
警察に通報した方が良いと助言しても、大事にはしたくないと言うばかり。
それなら俺が退治してやると変な正義感に燃えた私は友達に私のアパートの電話番号をその女に教えて、
電話を掛けさせるように言いました。
が、これが地獄の始まりでした。
『ありがとう。
助かるよ。
』と言って友達が電話を切って30分後、女から電話が掛かってきました。
電話を取るなり、『もしもし!?○○君ですか?何やってんですか?』と人を小馬鹿にしたような女の声が受話器の向こうから聞こえてきました。
カチンときた私は、『テメーどう言うつもりだ!いい加減にしねえと本当に警察に突き出すぞ』と怒鳴りました。
しかし女は、『アハハハハ!○○君アタマおかしいんじゃないですか?こっちにはヤク○400人いるから、警察呼びたきゃ呼べば?』と言ってきました。
良く考えて見れば、こんな事で警察が動いてくれる訳もなく、
実質的被害もない。
ヤ○ザ400人は嘘だけどこれではミイラ取りがミイラになってしまう!どうすればいいのか分からず、無言のまま電話を切りました。
それからその日は一度も電話は掛かってはきませんでした。
しかし翌日から毎日のように鬼電が鳴り響きました。
大学から帰ると留守電の点滅、聞いてみると『50件です。
これ以上録音出来ません。
』と無機質な機械音声がする。
取り敢えず全部聞いて見る。
自分の親や友人、部活の先輩からの留守電はなく、すべてその女からのものばかり。
内容は殆ど、CDに合わせて歌っていたり、『○○君、そこにいるんでしょうよ!電話出てくださいよぉ。
アタマおかしんじゃないの? 』と言った感じでした。
留守電を聞いてる途中で電話が鳴り、出てみればその女で、ソッコーで切ってまた掛かってきて、また切っての繰り返し。
夜遅くなり寝ようとして、着信音の音量を0にして朝を迎えれば留守電50件。
そんな毎日の繰り返しで、私はとんでもない事を引き受けてしまったと後悔していました。
毎日の女からの鬼電攻撃と50件の留守電攻撃の合わせ技に、私は次第に、この女に対して言いようのない恐怖を感じて行きました。
友達や親、部活の先輩からも『お前ん家の電話どうなってんの?用があって掛けてもずっと話中だよ?』等と言われるようになり、キャッチホンを付け、女から電話があっても大丈夫なようにしました。
親や友達に事情を話しても『相手にしないで放っておけば、その内掛かってこなくなるさ。』としか言われませんでした。そうなって欲しいと私も心から願っていたのですが、電話攻撃も留守電攻撃も衰える様子もなく、電話が掛かってきはじめて2ヶ月が過ぎました
この頃になると、私は完全なノイローゼ状態に陥り、電話の着信音にもビクッとなってしまいました。
大学の講義や部活も休みがちになり、電話線を抜いたままにして部屋に引きこもっていました。
そんな状態で1週間が過ぎた頃、友達が数人心配してアパートにお見舞いに来てくれました。『俺がその女どうにかしてやるから、電話線つなげろよ。もし両親がこの間に電話してたとしたら、すごく心配してるぞ』と言ってくれました。
その言葉を嬉しく思い、とても安心して勇気が湧いたのを覚えています。
電話線を繋げて20分が経過した頃、不意に電話が鳴りました。田舎の親であって欲しいと言う願いも虚しく、相手は例の女で、すかさず友達に受話器を渡しました。友達は受話器を取るや否や、『おいコラ!お前どう言うつもりや!?お前のせいで○○はノイローゼになって苦しんどるんや!お前、人をこんなにして楽しいんか?』と怒鳴りました。すると受話器の向こうから、『ノイローゼって何なんですかね?アンタ頭おかしんじゃない?』と耳障りな声が聞こえて来ました『テメー!!こっちは真剣に話してんのに何だその態度は!お前に人を労る心はないのか?』と友達が訴えても、『そんなん、ある訳なかっぱーーい!!人を痛ぶる楽しいなあ。』と聞こえてきました。
私も頭に来て、友達から受話器を渡してもらい、
『お前と話しても無駄だからお前の両親と話をさせろ!!早く親呼べコラ!早くしろ!!』と怒鳴りましたさらに、『早く呼ばないと警察にお前の住所調べてもらって、逮捕しに行ってもらうぞ!!』と言いました
女は泣きそうな声で、
『ごめんなさい!本当にごめんなさい!もう電話するの辞めっからぁ、警察に言わないで下さいよぉ!!
親にも言わないで下さいよぉ!!10万円あげっからぁ、許して下さいよぉ!』と言ってきました。
私は『10万円はいらねえから、親と話させろ!親にお前の事話して、二度と電話させないようにしてもらわなきゃ気が済まねえよ』と言いました。女は無言のまま電話を切りました。
『これでひと安心だな。もう掛けて来ないよ。また何かあったら言えよな。』と言って友達は帰って行きました。友達の言う通り、その日から約2週間は電話は一度も掛かってきませんでした。もうこれで大丈夫だろうと私は思いましたが、それが間違いでした。忘れかけた頃、また電話攻撃と留守電攻撃が始まりましたしかし、私には以前のような恐怖心はありませんでした。
逆にこの女を罠に嵌めてやろうと思い、一計を案じました。女の住んでる場所を聞き出し、そこまで行って、女と直接会い、親に無理矢理会わせてもらい、自分の娘が私にどんな仕打ちをしたのか洗いざらいぶちまけ、土下座させてでも謝罪させようと考えましたあわよくば、慰謝料でも取ってやれとも思いました。
女から電話が掛かってきて私は努めて優しく接しました。それが嬉しかったのか女は私が急に優しくなった事を怪しみもせずにくだらない事をベラベラと話しました。女の話に合わせて相槌を打つのに疲れてきて、時計を見ると3時間も経過していました。いい加減眠くなったので、『今度そっちに遊びに行きたいんだけど、場所は何処かな?』と聞くと、すんなりと教えてくれました。おまけに自宅の電話番号まで!!
遊ぶ日時と待ち合わせの駅を決めて、その日は電話を切りました。
そして約束の日、私の気持ちはいつになく高揚していました。ついに奴を叩き潰す日がきたと。私は世界タイトルマッチが行われる敵地に乗り込むボクサーのような心境で、意気揚々と電車に乗り込みました。
私が当時住んでいた所は北関東のG県T市、電話で女から聞き出した住所は、同じ北関東のI県のD町です。
電車で行くルートとしてはJRのR線で私の住んでいたG県のT駅(始発駅)から終点のT県にあるO駅まで行き、そこからM線に乗り換えI県のM駅まで行きます。
そこからさらにSG線と言うのに乗り換えて、東北のF県との県境付近のS駅まで行くのが一つ目のルート
二つ目は同じJRのT線で東京の上野まで出てJ線に乗り換え、M駅まで行き、
そこからSG線に乗り換えS駅まで行くルートです。
電車賃を安く済ますなら一つ目のルートなのですが、この時の私は、変な余裕があり、奴を完膚なきまで叩き潰す前に、東京で服でも買って行こうと思い、多少お金が掛かってもいいや!と二つ目のルートを
選びました。
普通列車で上野まで行き、上野のアメ横で買い物をして、食事をして、上野を一人で3時間くらいブラブラしていました。
そろそろ行こうかと上野駅に向かい、J線の特急Hに乗り込み、M駅まで向かいました。M駅についた私は、ついにあのバカ女を直接懲らしめられる嬉しさでソワソワしだしました。乗り換え列車に乗って、出発を待つ間、バカ女に何て言ってやろうか?女の両親に何と言って怒鳴り付けてやろうか?色々と頭の中でシュミレーションしていました。
列車が出発し、私は長旅の疲れからか、睡魔に襲われいつの間にか寝ていました
ハッと気が付き、時計を見ると午後の8時00分を回った所でした。まだ着かないのか?と思いながら、ぼんやりと車窓の風景に目を落とすと、全くと言っていいほど漆黒の闇で、街灯が殆どない状態でした。私の実家もかなりの田舎ですがここはそれよりも酷いんじゃないかと思うような田舎でした。
電車が暫らく進むと、目的地のS駅の何個か前の駅までしか行かない電車だったらしく、仕方なく私は下車して、次の電車がくるまでの約1時間(そのくらいの長さに感じましたが、良く覚えていません。)近くのコンビニで本を立ち読みしてました。
ようやく電車が到着して、目的地のS駅に到着したのは午後9時を回ったあたりだったでしょうか。(ここら辺も記憶が曖昧で申し訳ない。)駅に着き、女から聞いた番号に電話を掛け、女に着いた事を伝えると今から迎えに行くとの事。
嬉しそうに『今から行くね』なんて言ってたが、これから恐怖のドン底に落ちるとも知らずにバカな奴だ!と思いながら待つ事15分、遂に来た!あの女だ!
俺を精神的に追い込んだあの憎きバカ女だ!
人違いではありませんでした。何せ無人駅なもんで、周りには何もなく、自販機と公衆電話があるだけ。
駅の待合室に貼ってあった時刻表を見ると、私が乗って来た電車が最終だったらしく、逆方向の電車はそれよりも前に最終だったみたいで、そんな駅だから夜遅くに人なんて来る筈もなく、そこへ見た目高校生風の女が来ました。(顔は暗がりで良く見えませんでしたが、そんなに悪くはなかったと思います。)
私の姿を見るなり、『こんばんは。』と聞き覚えのある訛り言葉で話し掛けてきました。
会うなり、『前に電話ではお前、二十歳って言ったけど、本当は何歳だ?嘘はつくなよ。』と私が睨みながら聞くと、『ごめんなさぁい!怒んないでくださいよぉ。17だよぉ。』と嘲笑を含んだ口調で答えてきました。俺はこんなバカガキに悩まされたのかと思うと情けないやら、腹立たしいやらで今にも殴りたい衝動に駆られました。
『とにかく、お前の家に案内しろよ。お前は一人暮らしでかなり高級なアパートに住んでるとか言ってたけど、あれも嘘だな?本当は普通の持ち家に住んでて、両親と一緒住んでるよな?』と聞くと暫らく女は無言で俯いたままでした。
『おいどうなんだ?はっきりしろ!!俺は嘘つきは大嫌いなんだよ!』と続けてまくし立てると、震える声で『ごめんなさい!そうです。』と泣きそうになってました。『俺がここに来たのはお前と遊ぶのが目的ではなく、親と話をするのが目的なんだよ。親がいるなら丁度いいや。早く家に案内しろ!!』と急かすように女を前へ前へと押し出すように歩いて行きました。途中、女が『少し休みましょうよぉ!疲れたぁ。』と言ってきましたが、聞く耳を持たず、家への道程を急がせました。私の心の中は既にこの女と両親を怒鳴り付けたい衝動と怒りで一杯でした。本当は殴りたくもありましたが。
やがて、女の家と思われる平屋建てのアパートの内の一件に着きました。
アパート内には明かりが付いてなかったので、『おい両親はいないのか?』と聞くと、『今日は用事で泊まりだから、明日会わせっから、私の部屋で寝ててくださいよぉ。』と言ってきました。仕方なく私は、女の部屋の炬燵で眠りに落ちて行きました。この後、私にとって最大の恐怖が襲うとも知らずに。
眠りに落ちて何時間か経った頃、私は物音で目を覚ましました。隣りの部屋に誰か入ってきたようで、咳払いや独り言と思われる中年女性の声が聞こえてきました。時計を見ると深夜の1時近く。女の母親が帰ってきたのかと思いました。
すると私の側のベットで寝ていた女がこれに気付いたのか、ベットを抜け出し、部屋の戸を開け、隣室にいる親の元へ行きました。
親と何か話しているようでした。耳を澄まして聞いてみると、『お母さーん、あのさー、今さ、変なおじさんが来てさー、10万よこせって隣りの部屋にいるんだよね。』と言ってました。続いて母親の怒声が聞こえます。『何だそいつは?ここへ呼んでこーい!』
どうやらあの女、母親に嘘を付き、私の事を恐喝犯に仕立てあげたようです。
私は、あの母親は感情的になってる。ここは冷静になって話さなければ。と思い女が私を呼びに来るより先に母親のいる隣室へ行きました。隣室には鬼の形相でこちらを睨む母親と、無表情でこちらへ視線を向ける女の姉らしき女性がいます
隣室は茶の間らしく、真ん中に炬燵があり、茶タンスやテレビがありました。
私は母親の正面に座り、
母親が口を開くよりも先に話出しました。
『夜分遅く失礼します。
今日は娘さんの事で来ました。』私は今までの経緯を事細かに話しました。
母親は何か言いたそうにしながらも、私の話を最後まで聞いていました。
最後に、二度と私の所には電話をさせないで欲しいとお願いしました。
母親は女に『今言った事は本当か?』と聞きました。
女は少し黙っていましたが突然泣きだし、
『こんなおじさん知らない!!私電話なんて一度も掛けてないもん!!あんた誰??いい加減な事言わないでよ!』と最後の悪あがきをしました。しかし私の言う事よりも、自分の娘の言う事を信じたようで、
また鬼の形相で私を睨み付け、
『テメエ、嘘を付くな!娘が悪戯電話なんかするわけねえだろ!!この子は心臓が弱くて、毎日寝たきりで苦しんでるんだ。いい加減な事を言うなあ!!!』と私に怒鳴り散らしました。
私はあくまで冷静に、
『自分の言う事が信じられないなら、今から警察を呼んで下さい。自分が事情を話します。電話局に問い合わせてお宅の電話の通話履歴を調べてもらえれば、どちらが嘘を付いているのか分かりますし、何なら出るとこに出たってこっちは構いませんよ。』と言いました。『自分は無断でお宅に上がりこんでもいないし、娘さんを脅して金を取ろうともしてません。こんな夜遅くにお邪魔したのは非常識だとは思いますが。』とも言いました。
私が話してる間、母親は
『何だとお!?』を連発していましたが、私はお構いなしに話続けました。
私が話終わると母親は、
『この野郎、家の娘を馬鹿にするなあ!!!』と言って、近くにあったビール瓶を振り上げました。
!!!!!
え!?何だよ?俺何も間違った事してないのに、こんな所で死ぬんか?
こんなん当たったら死ぬよな。俺は死ぬのか。折角大学入ってこれからって時なのに。親は悲しむだろうな
などと考えられるほど、
母親がビール瓶を振り上げてから、私に向かって振り下ろすまでの間が、やけにゆっくりに感じられました
もうダメだ!と思った瞬間ビール瓶があと数センチで私の頭に届くと言う所で、
女の姉が母親の手を後ろに引っ張り、ビール瓶を取り上げました。
『母さん、人殺しになる気かい?』姉は叫んでいました。母親は我に帰ったのか『お前の顔なんか見たくない!!出て行け!!』と怒鳴ると奥の部屋へ引っ込んでしまいました。
私は暫く放心状態でしたが我に返り、『今後二度と、妹さんには自分の所に電話を掛けさせないで下さい。これ以上この状態が続くようなら、こっちにも考えがありますから。』と言い放ち、怯えた表情で私を見上げる女を睨み付け、
家を出ました。
しかし、家を出てからが大変でした。全く知らない土地なので、知り合いが住んでいる訳もなく、かと言って泊まれるようなビジネスホテルや、時間を潰せるようなコンビニがあるわけでもない。しかも時期は年末間近の真冬。
それなりの防寒対策はしてきましたが、それでもかなり寒かったのを覚えています。
周りは民家もまばらで、
あたり一面田んぼだらけの知らない土地を、
とりあえず駅へ戻ろうと歩いていましたが、道に迷ってしまい方向が分からなくなってしまいました。
私は小さな公園を見付け、そこのベンチで休憩することにしました。
辺りは漆黒の闇で、
今にも幽霊が出てきそうな感じでした。
これからどうしよう?このまま帰れなかったら?などと考えながらふと前方を見ると、私を5~6の黒い影が囲んでいるではありませんか!!その影は人の形ではなく、動物の形をしていました。
え?四つんばいの幽霊?なんて考えてると、その影は『ワンワンワンワンワンワンワンワンワンワン!!』と一斉に吠えだしました。私は野良犬に囲まれていたみたいです。囲みを破る為に猛ダッシュで私は走り出しました。犬も私を追い掛けてきていたらしく、暫らく私の後ろで吠えていました。何とか野良犬を巻いて疲れて歩いていると、偶然駅を見つけました。
やっと、落ち着ける場所を見つけた安堵感からか、
身体中の力が抜けてしまい私は待合室のベンチに
座ったまま、
暫く動けませんでした。
しかし始発が来るまであと4時間半もある。
あの母親が駅までビール瓶を持って追い掛けてくるかも知れない。あの野良犬がまだ近くにいるかも知れない。幽霊が出たらどうしよう。逃亡中の殺人犯に偶然出くわしたらどうしよう?などと悪い事ばかりが頭に浮かんできて、結局、寒さと恐怖で眠れませんでした
やがて、始発の電車が来て電車のシートに腰掛けた途端に、もう安全だと言う安心感と、車内の暖房の暖かさで終点まで眠ってしまい駅員さんに起こされました
その後は何事もなく、いくつか電車を乗り継いで、無事に自分のアパートに帰りました。
アパートに帰ると、留守電が何件か入っており、
すべてあの女の声で『昨夜はごめんなさい。』と入っていました。
留守電をすぐに消去し、
その日は1日寝てました。
翌日になるとまた何も反省してないのか、電話攻撃が始まりましたが、何回か掛かってきて、私が出ないでいるとプツリと掛かってこなくなると言うパターンが2年間続きました。
そして、私が経験した恐怖は私の友達に違った形で引き継がれていく事になるのですが、それはまた後日談と言う事で載せたいと思います。
時間が空いてしまって、申し訳ありません。私の体験談は終わりましたが、
私の友人の、あの女絡みの面白い後日談がありますので、宜しかったら読んで下さいませ。
あの散々な夜から2年が経ち、回数こそかなり減りましたが、あの女のイタ電攻撃は依然続いていました。何を話すでもなく、私が出るとすぐに切ってしまうのです。
留守電も同じようなもので一日何件か無言の留守電が入っていました。
最終的には、一日2~3件程度になっていたと思います。
その年の8月上旬、東京の大学に通って一人暮らしをしていた友人と、久しぶりに会った時に、あの女の事を話したら、直接電話で話してみたいから女の連絡先を知ってるなら教えてくれと言われました。
私は今までの出来事を詳しく説明し、絶対にロクな事にならないから、止めるように言いましたが、
『大丈夫だよ。○○と違って俺は精神的に強いから』と余裕の笑みを
浮かべていました。
『どうなっても知らないからね。』と念を押した上で女から以前聞いた連絡先を友人に教えました。
友人のアパートへ行き、
暫らくすると友人が女の所へ電話を掛け、『もしもし、○○の友達だけど。』と話し始めました。
どうなるか心配でしたが、友人は女との会話を楽しんでいるようで、時折冗談を交えながら談笑していました。長くなるようだったので、私はプレステをやってました。友達が電話を切ったので時計を見ると、既に3時間が経過していました
『普通に話せば大した事ないじゃん!まあ、○○の所へは電話する事は、もうないと思うよ。』と言ってくれました。
私はひとまず安心しました
友人の言う通り、その日から、あの女から私の所へは全く電話が来なくなっていました。それから2週間後友人から電話が
掛かって来ました。
流石に嫌になったんだろうなあ。と思っていると、
今だに女と話しているとの事。毎日のように、夜10時くらいになると
女から電話が掛かってきて深夜2時くらいまで
話していたそうです。
そこで色々と女に関する情報を聞き出したそうです。それを書きたいと思います
この女の父親が、昔は汲み取り屋の仕事をしていたようで、その事で小学校から中学校に掛けて、かなり酷いいじめを受けていた。
父親は当時は入院中。
その影響からか、家に引きこもってしまい、中学校は卒業出来たものの、高校へは行かなかった。
本当に心臓が弱かった為、就職も決まらず、ずっと家でゴロゴロしていた。
家でゴロゴロしていてもつまらないし、友達も一人もいないので誰かに構って欲しくてテレクラに電話を掛けまくって、見ず知らずの男性数人と肉体関係になる
その内の一人から聞いた連絡先と、以前私に助けを求めてきた友人の電話番号が偶然一致したらしく、相手が違ったが、構って欲しくて迷惑を省みずに電話を掛けまくった。
そこへ私が登場して、ターゲットが代わった。
と言う事らしいです。
要はただ単に淋しいから構ってくれる相手が欲しかっただけなんですよね。
相手が自分の事をどう思ってるかは関係なかったんですよね。
話を一通りし終えると、
『彼女は、あの夜お前に会って一目惚れしたらしいぞ。だけど親に土壇場でウソをついてしまい、お前は殺されかけて母親に追い出された。申し訳なく思った彼女は翌朝、駅までお前に会いに行ったらしいぞ。それに彼女はかなりのH好きだから、ヤレたかもよ。』
友人は笑いながら言いました。しかし、そんな事を言われても嬉しい筈もなく、ただ迷惑なだけでした。
あの女の事は任せた!と言い、その日は電話を切りました。それから1週間後には『あの女と三日後に会う約束をしたよ。』と電話があり、それから四日後に『あの女とヤッちゃったよ。』と電話がありました。私は良くあんな危ない女と会って、自宅アパートに泊めて、しかもヤレたなあ。と、ある意味友人を尊敬しました。
『まさか付き合おうとか考えてないよな?』と私が聞くと、『まさかあ!』とその時は答えてました。
そして、その年の10月下旬、『やっぱり一人は淋しい!俺はあの女と付き合う事にした!』と何を血迷ったのか?突然言いだしました。私は考え直すように説得しましたが、友人の意思は堅く、『近い将来、同棲するよ。俺が大学で講義を受けている間、アイツには近くにあるコンビニで働いてもらう事にしたよ。でもアイツ頭悪いからなぁ。仕事覚えられるかなあ?』
と楽しそうに
話していました。
私はかなり心配でしたが、もし上手く行って、本人がそれで幸せなら良いや!と思い、友人を応援する事にしました。それから2ヶ月後、クリスマスイブに女が泊まりに来て、1週間程友人のアパートに滞在することになりました。
私はこの頃、付き合ってた彼女と別れたばかりでしたので、相手があの女でも、とても羨ましかったです。
しかし、女が泊りに来てから四日後に友人が電話をしてきて、『あの女はおかしい!あそこまでバカだとは思わなかった!昨日レンタカーを借りて、奴の実家の近くまで強制送還してきたよ!!全く最悪だよ!』とキレ気味に話してました。何があったのか聞いてみると、初日の夜はやる事やってイチャついて良かったらしいのですが、
一般家庭の何処にでもあるドアの鍵の開け方が分からなかったり、テレビを見てても何回もチャンネンルを替え続けて落ち着かなかったり、安室奈美恵が出演してる同じ番組のビデオを繰り返し見たり、友人がバイトから帰ると、友人の自宅の電話からテレクラに電話してたり、お風呂を空焚きしてしまい、危うく火事になりそうになったにも関わらず、ケタケタ笑っていたりと、三日間一緒にいて、我慢の限界だったそうです
強制送還してから、一度も友人の所には電話はなかったそうです。勿論、私の所にもありませんでした。
それから暫らくして、
私と友人は大学を卒業し、就職の為地元に戻り、
現在に至ります。
私は未だに独身ですが、
友人は結婚して現在は2児のパパです。
あれから15年が経ちますが、あのバカ女が何処で何をしてるいるのか分かりません。知りたくもないですけど。せめて、まともな人間になっていてもらいたいです。
最後も長々と書いてしまいました。ここまで読んで下さった方、ありがとうございました。
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作者怖話