中編4
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見逃してやったのに

前回 『最強の女』を載せてもらった者です。

姉貴が見てるホラーサイトは、別のとこだと判明しましたので 堂々と投稿できる事になりました!

皆さん よろしくお願いします。

去年の秋くらいの頃、姉貴が急に

「面白いのを見せに連れてってやる。」

と 言い出した。

「面白いのって何?」と聞いても、その場所に着くまでは内緒だと言う。

まぁ、俺も暇だったし という事で了解した。

身仕度を整えて外に出ると、姉貴がバイクにまたがって待っていた。

「!……車じゃないの!?」

「今の季節なら 車よりコレだろう?

景色が綺麗だぞ。」

俺はバイクの運転が出来ないから、当然姉貴の後ろに乗る事になる。

なんか嫌な予感がする…。

姉貴の運転 怖いんだよな〜。

渋っていると、「早く乗れ!」と急かされ 仕方なく後ろに乗り、出発した。

が、姉貴の長い髪が メットにバシバシ バシバシ当たって、ちっとも景色なんて楽しめない。

やっぱ 家にいりゃ良かった、と俺は思った。

1時間くらい走っただろうか。

この辺ではちょっと有名な、杉並木に着いた。

ずらっと並んだ杉の木の中でも一段と太い木の前で、姉貴はエンジンを切り バイクを降りた。

俺も姉貴の後に続いた。

何度も通った事のある場所だけど、近くで見た事はなかった。

結構な迫力だ。さすが樹齢400年って感じだった。

姉貴は、その杉の木に「来たぞ」と言い ペットボトルの水を注いでいた。

「面白いのって、これ?」

「そ。前にあたし、ここでバイクでこけてな。

あっちからこっちまで、滑ったんだよ。」

指差す方を見ると20メートルはありそうだった。

「かなりの勢いだったから、ヤバイ 激突する!って思ったんだけどな。」

直前に 上から枝がバサバサと落ちてきて、姉貴がぶつかるはずだった場所には まるでクッションのように葉のついた枝が積もったんだそうだ。

そのおかげで、木への激突は避けられ 姉貴はかすり傷で済んだらしい。

「それって…この木が助けてくれたって事?」

「あたしをってよりは 隣の木を守りたかったんじゃないか?」

そう言うと、姉貴は上を指差した。

見上げてみて、思わず「あっ…!」と声が出た。

二本の木が、互いに懸命に手を伸ばすように枝を絡ませている。

他の木もたくさんあるのに、この木だけが…。

「こういうの、テレビで見た事ある!」

「あれ程がっちり同化してはいないけどな。

でも、お互いが求めあってるっていうか…恋人同士みたいだろ?」

「…うん」

なんだか素直に感動した。

姉貴がこんな事を言うのも、意外だった。

その時、木々がザザザザ〜っと 突風に吹かれたみたいにざわめいた。

風なんて吹いていなかったのに……。

「帰るぞ!」と急に姉貴が言い出し、バイクに乗り出した。

「え!?何、急に!」

「いいから!」

姉貴の勢いに押され、慌てて俺もバイクにまたがる。

「杉に教えられるまで 気づかなかったなんて…しくじったな。」

姉貴はそう言うと、バイクを急発進させた。

チラチラとミラーを見ながら運転していた姉貴が

「しっかりつかまってろ!」

と言ったのと同時に、いきなりUターンをした。

キュキュキュキュー!とタイヤが鳴き、俺は振り落とされそうになりながら 必死に姉貴にしがみついた。

死ぬ!死ぬって!落〜ち〜るー!!

バイクを止め、姉貴が前を見据える。

今は完全に反対方向を 向いてる状態だ。

何か……そこにいるんですか!?

姉貴の睨んでいる方を、俺もそっと覗いてみる。

何にも見えないけど。

「前にも言ったろ!あたしには 何にもできねーんだよ!

ついてくんな!!」

姉貴が怒鳴ると、どこからか石が飛んで来て カン!とバイクに当たった。

「…のやろう!」

ヤバイ。愛車に傷つけたりするのは、非常にヤバイって!

次はパンッ!と音がし、左のミラーに石が当たってひびが入った。

「…お前はここで待ってろ…」

そう言うと姉貴は、バイクを降り 歩いて行ってしまった。

辺りはだいぶ薄暗くなってきていたから、どこらへんで何をしているのかはわからなかったが、キレた姉貴が何かしてるんだろうとは思った。

十分くらいして姉貴が戻ってきて

「じゃあ帰ろうか。」と言った。

「もう大丈夫なわけ?」

「あぁ。杉の木の根本に突っ込んで来たからな。

あいつより、木の力の方がよっぽど強いから大丈夫だ。

よ〜く頼んで来たし!」

バイクに乗り姉貴が笑った。

「これで事故も減るだろうよ」

姉貴がこけたっていうのも、もしかして さっきのが関係してるのかも…。

だとしたら、一度は見逃したんだな。

姉貴の意外な面を二回も見た、秋の日の事でした。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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