「ギャアアアアー!!」
すぐに追いつかれ、どうやら背中を鋭い爪で引き裂かれたらしい。
生温い血液が吹き出し私はその場に倒れこんだ。
「グゥフーグゥフー」
アイツは私の顔を覗きこみ大量の唾液を垂れ流している。それが顔に落ちてくるたびに吐気がした。
「私は食われるのか!?」
絶望を感じた時、私は最後の手段、目を閉じて死んだフリをした。
アイツの生臭い匂いが私を包み、まるで悪夢の始まりのような不気味な気配を感じて私は失禁してしまい、ただガタガタと震えるしかなかった。
アイツは私をもて遊ぶかのように「ドン」と私の胸を叩いた。
「バキッ…」
肋骨が折れる音と共に私は口から大量の血を吐く、次にアイツは私のまわりをグルグルと歩き始め、その後、私の左足をかじった。
「バリバリゴリゴリ…」
骨の砕ける音と肉を切り裂く音、激しい痛みが襲う。でも、声は出せない。
死を覚悟したその時、「パーン!!」と静かな山に銃声が鳴り響いた…
「大丈夫か!?」
誰かの声が聞こえたが、私は、そのまま意識を失った。
気がつくと病院のベッドの上で家族が心配そうに私を見ていた。
どうやら、私はあの山でヒグマを追っていたハンターに助けられ、出血多量で死にかけていた私をハンターの人が病院まで運んでくれたらしい。
私は運が良かった。
アイツは…
あのヒグマはそのハンターにライフルで撃たれて死んだとの事だった。
泣き叫ぶ家族が二度と一人で山に入らないでほしいと言っていたが、私は、あんな恐い思いをしたにもかかわらず大好きな渓流釣りをやめる気はない。
しかし、これからはしっかりとヒグマの知識を身につけて山に入りたいと思う。
今回の事件はヒグマが悪いわけではない。彼等の聖域に足を踏み入れた私が悪いのだから…
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話