地元の皆さんはコメント欄で△△ホテルは何処かと予想されておりますが、敢えて伏せさせて頂きます。
出来れば遊び半分で行って欲しくありませんので。
では心霊スポットツアー④を始めさせて頂きます。
立入禁止のロープを超えると、草むらが広がっていました。
恐らくこのホテルがラブホテルとして営業していた当時は中庭か何かだった場所だと思います。
自分の腰より下まで伸びた草をかき分けて6人は進みました。
すると目の前に大きな建物が目に飛び込んで来ました。
ホテルは2階建て構造で、1階部分に駐車場、そして2階が客室になっているような造りでした。
私達は正面玄関を探したのですが、暗い事もあり、見つける事が出来ませんでした。
仕方なく、1階部分の駐車場にあった階段から中に侵入する事にしました。
このホテルは車を駐車して、階段を上れば誰とも会わずに客室に入れる様になっているタイプでした。
駐車場は見ただけでも6つ程あり、駐車場と駐車場の間にはコンクリートの壁がありました。
一番手前の駐車場に入ると、鉄製の階段がありました。
しかしこの階段は長い間風雨にさらされた様で、錆び付いてボロボロでした。
「気をつけろよ。」と注意し合いながら、
私→Y子→A男→H子→T子→M男の順番で上る事になりました。
先頭だった私は階段を上りきって、真正面のボロボロのドアを恐る恐る開けました。
「ギィィ~。」
と耳障りな音を立てましたが、案外簡単にドアは開きました。
しかし、建てつけが悪いせいか、半分しか開きません。
全員が階段を上りきってドアの隙間からホテル内に侵入しました。
中は長い廊下になっていて、左右に4つずつ部屋の扉があるのが分かりました。
そしてその廊下には赤茶色の絨毯の様な素材の物が敷いてありました。
なお、廊下の突き当たりで左に曲がれるようになっているようで、その先にはまだ部屋がありそうな感じでした。
※ホテルに向かう道中、一番近いコンビニで懐中電灯を2本買った事をここで加えておきます。
このホテルも他の心霊(廃墟)スポットと同じ様にスプレー缶で壁一面に落書きがされていました。
6人はおしくら饅頭の様にくっついて、ゆっくり歩きだしました。
先頭の私は懐中電灯を持っていたので(もう1本は最後尾のM男)、まず左の一番手前の部屋のドアを照らし、小声で
「まずはここの部屋からね。」と、後ろの5人に言いました。
しかし返事はなく、縦に首だけ振って返してくれました。
この部屋のドアは落書きさえあるものの、さほどボロボロではなく、簡単に開きました。
ドアを開けて、中を照らすと目の前に壁がありました。
「えぇぇ!」と思いましたが、良く見るとそれは壁ではなく箪笥でした。
その箪笥は私の背丈(168㎝)と同じくらいの高さでしたが、それのせいで室内に入る事は出来ませんでした。
でもよじ登れば何とかなりそうだったので、A男に説明し、「GO!」って顔を返して来ましたので、両手で箪笥の上を掴みよじ登りました。
そして口に咥えていた懐中電灯を右手に持ち替えて、室内を照らしました。
すると・・・
室内は大小すさまじい数の箪笥で埋め尽くされており、異様な光景を目の当たりにした私は、直ぐに箪笥から飛び降り、廊下に脱出しました。
状況を皆に説明すると、またもやA男があごだけで、「次行こう!」的な仕草をして来ました。
続いては箪笥の部屋の隣の部屋に行く事にしました。
が、しかしその部屋のドアは鍵が閉まっているのか、錆び付いて固まっているのかビクともしません。
私は何も言わず、もう一つ奥の部屋に向かいました。
箪笥の部屋と同様にドアは簡単に開き、室内を照らすと障害物もなく入れそうでした。
全員が室内に入り、私とM男が懐中電灯で隅ずみを照らします。
中にはベッドがありましたが、マットレスはボロボロに引き裂かれ、テレビのブラウン管は割られていました。
窓ガラスも全壊ではないですが、ヒビだらけでした。
足元にはBB弾が散らばっていました。
恐らく、地元の若者が侵入し、サバイバルゲームでもしたのでしょう。
雰囲気はあって、そこそこ怖かったのですが、今ひとつと言った感じで何とか耐えれそうな恐怖感でした。
そして暫くその部屋を見てまわり、全員が部屋を後にしました。
また私が先頭にされたので、少しイラッときましたが、黙って奥に進みました。
全部の部屋を見てたんじゃ夜が明けちゃうなと判断し、いくつかの部屋を無視して逆L字型の廊下を左に曲がりました。
するとそこには左に2つと右に1つ部屋がありました。
そして右の部屋の手前には階段がありました。
何故かはわかりませんが、迷わず私は階段を下り始めました。
みんな恐る恐る私の後ろをついて来ます。
階段は14段程で直ぐに1階に下りる事が出来ました。
しかし、おかしかったのはそこからです。
1階には客室はおろか、フロントらしきところもありません。
駐車場から直接、客室に入れるタイプなので部屋がない事は説明がつきました。
フロントが無いのも、2階の部屋にエアシューターらしき物の残骸があったので説明がつきます。
じゃあ何がおかしいかって?
この壁と廊下だけのスペースがある事がおかしいのです。
だってこの部分は別に必要の無い部分なのですから。
設計上、仕方なくこうなったのかと思いましたが、それにしては非常口なり、勝手口なり、管理人(フロント係)がいる部屋があってもいいはずです。
ただそこにあるのは、
「大きな逆L字型をした袋小路」
でした。
他の5人も私ほど考えたかは解りませんが、体でこの場所はおかしいと感じ取った様です。
恐らく、5分くらいはその袋小路の隅ずみを照らしましたが、やはり壁しかありません。
しかもその壁には2階とは違い落書き一つなかったのです。
先頭に立っていた私は、
「ここはやばそうだから2階に上がろう。」
と、皆に言いました。
「そうだね。」とT子。
「ここは気持ち悪いな。」とA男。
「やばいやばい、ささっと帰ろうぜ。」とM男。
Y子とH子も頷いています。
私が階段を上ろうとしたその時です。
2階から凄まじい音が鳴り響きました。
「バタン、バタン!」
「バタバタバタッ!」
「バタバタ!バン!」
全員が身構えました。
そして目で見た訳でも無いのに頭の中に映像が浮かびました。
2階の部屋のドアというドアが一斉に開いたり、閉まったりしているのです。
「きゃ~!」と言う悲鳴と共に誰かが走りだしました。
それに触発されるように皆走りました。
そして階段から一番離れた突き当たりの壁際で全員しゃがみ込んでしまいました。
そして恐怖の余り、立ち上がる事も、会話を交わす余裕さえありませんでした。
まだ2階ではドアが閉開する音が、けたたましく続いています。
全員震えていました。
逃げたくても出口はありません。
H子とY子は泣きじゃくる事も出来ず、ひきつけに近い呼吸の音だけが聞こえました。
このままここにいても逃げる事は出来ない。
逃げるには階段を上って、2階の廊下を突っ切るしかないのです。
多分、皆同じ事を考えていたと思います。
しかしながら2階から聞こえる凄まじい音に怯え、階段を上る勇気が出ないのです。
私は、T子に小声で話し掛けました。
「なぁT子。お前には何か見えてんのか?」
T子は首を横に振りました。
「じゃあ今の所は音だけで、2階に上がっても何にもいないかもしれないんだな?」
私はT子に聞きながら、そうであって欲しいと願っていました。
T子「私にもわかんない。」
期待していた返事は貰えませんでした。
本当にT子にも解らなかったんだと思います。
私は決心して皆に言いました。
「このままここにいても、逃げれないんだから、ダッシュで階段を上って突っ切ろう。」
A男とM男は親指を立ててOKサイン。
女子3人も頷いてくれました。
T子がH子とY子の背中をさすっていてあげた光景に何故か勇気を貰えました。
私は確認するように
「じゃあみんな、階段は狭いから2人ずつ3列になってダッシュしような。」と、言いました。
先頭に私とY子。
2列目にM男とT子。
最後尾にA男とH子。
この順番で行く事になりました。
M男はY子に懐中電灯を渡します。
「じゃあ行くぞ。」と、私。
6人が立ち上がり、私の合図を待ちます。
「GO!!」
一斉に皆走りだしました。
逆L字廊下を曲がって階段を駆け上がります。
たった14段そこそこの階段が異様に長かったのを覚えています。
階段を駆け上がると、階段の頂上には赤ちゃんを抱いた髪が胸くらいまである半透明の女の人が立っていました。
私は躊躇せずに走り抜きました。
女の人の右側をすり抜けた時に、女の人と目が合いました。
明らかに敵意みたいなものを感じました。
凄く冷たい目でした。
そこで立ち止まるわけも行かず、ただただ走りました。
横目でY子がついて来ている事は解りましたが、後ろの4人がちゃんとついて来ているのかは、解りませんでした。
というより、必死だったので後ろを振り返る余裕も無く、ついてきていると信じる事しか出来ませんでした。
廊下は頭に映像が浮んだ通り、全てのドアがバタバタと音を立てて開いたり閉まったりしていました。
やっとの事で侵入してきたドアまでたどり着き、半分しか開かないドアから外に出て、階段を駆け下り、草むらまで出ました。
Y子も私の少し後に続いて出て来ました。
私はY子の手を握ると草むらをかき分けて、立入禁止のロープをくぐり、車の所まで逃げて来ました。
後ろの4人を今か今かと待ちます。
Y子も祈るように4人の帰りを待っています。
すぐにA男とH子が草むらを走って来るのが見えました。
「M男とT子はどうしたっ!?」と私が言おうとした時です。
A男「やばい!やばい!T子が!!!」
そう言いながらA男が私達のところに駆け寄ります。
A男「T子が!T子が!」
随分動揺しているのか、何が言いたいのか解りませんでした。
そうこうする内、M男がT子をおぶって走って来ました。
M男「I(私)!!早く!車を出せ!」
M男はT子をおぶったままズボンのポケットから車のキーを取り出し、私に渡しました。
私は全員が車に乗ったのを確認すると、大急ぎで車を発進させました。
M男「I!早く病院に向かってくれ!」
M男は叫びます。
T子はぐったりとしていて、白目をむき、口からは泡をふいていました。
そして何より異常だったのが、ショートカットのはずのT子の髪が、胸のあたりまで伸びていたんです。
私は「M男!病院より御祓いに行ったほうがいいと思う!」と叫ぶと、信号を2つ3つ無視して一番近いお寺に向かいました。
そのお寺が御祓いをやってくれるかはわかりませんでしたが、兎に角、急がなければという思いの方が強かったのです。
幸い、この辺の道には詳しかったので10分足らずでお寺に着きました。
私とA男は車から飛び降り、走ってお寺の中の家みたいな所の玄関を叩きました。
私とA男「すみませーん!助けて下さい!!」
M男はT子を抱きかかえ私達に追いつきました。
少しして、Y子とH子も走って来ました。
全員「すみませーん!助けて下さい!!」
激しく玄関を叩くと、中から60歳位のお坊さんが出てきました。
お坊さんは私達の説明も聞かず、
「本堂に来なさい。」とだけ言って玉砂利の上を歩き、本堂へ案内してくれました。
本堂に上がって細い廊下を進むと木製の引き戸の部屋の前で立ち止まり、
「さぁその子をこの部屋の中へ」と言い、本堂から出て家みたいな所へ戻って行きました。
心霊スポットツアー⑤に続く
怖い話投稿:ホラーテラー 現役探偵さん
作者怖話