数々のご指摘ありがとうございます。また、投稿速度が遅くなり申し訳ありません。一日一つぐらいしか時間的な余裕を持てないので…。
尚、私は北国には縁がない人間です。期待を裏切り申し訳ありません。
ラブレターⅢの続きです。
さらに明くる日の朝。
毎週日曜日は「家族の日」
と決まっていまして、この日は息子の要望で某県のテーマパークに向かっていました。
頭の中には件の女性の事が渦巻いてはいましたが、なんとか表面には出さないように、と努めなながら。
すれ違う車や景色にはしゃぐ息子を見ていると違和感を覚えます。
「どしたんだ、首?」
どこで憶えたのか、窓に顔が潰れる程押し付けながら、一心不乱に外を見てる息子。その襟足の部分に不思議な痣、と言うか内出血の痕が見えます。
「これねぇ……」
息子に代わり、妻が口を開きました。
三日前の事、友人と遊びに行き、息子は泥だらけで帰ってきたそうです。子供の事ですから、そう気にせずにすぐに風呂に入れた時にこの痕を見つけた、との事。
ただ、その事を息子に聞いても本人も知らない、と答えたそうです。理由が判らない為、気持ち悪いとは思いながらも息子は至って元気なのでそれ以上は追及しなかった、と。
「そう言えば、パパも泥だらけで帰ってきたねぇ」
妻にそう言われ、ハッ、としました。
泥、女、写真、様々な単語が頭を駆け巡ります。
私はそれ以降、口をつぐみ、それに対して話すことをやめました。何よりも息子を不安な気持ちにはさせたくなかったので。
──楽しく一日を終え、帰りの車内の事。
息子ははしゃぎ疲れたのか、すやすやと静かに眠っています。私は意を決して妻に話し始めました。
私の話を聞くうちに、妻の表情はみるみる蒼くなっていきます。内容が内容ですし、何よりも息子が巻き込まれている、と言う事実。何とも言えない空気が車内を包みました。
「……け、警察いく?」
手渡した写真を見て妻がこの我が家に降りかかった一つの事件、について提示した解決法はこれでした。
しかし、物的証拠も何もない状況。息子があの女に何かされた、と話している訳ではありませんし、ただの被害妄想と受け取られかねません。
その事を妻に話しながら、何とも歯痒い気持ちでハンドルを握っていると、どうやら息子が起きたようで「ここどこぉ?」、と寝起きで頭が働いてないのか、今の自分の状況が把握出来ない様でした。
「まだおうちには着かないよ」
そう伝えながら、現在地を説明していた、そんな時です。息子が発した言葉がさらなる事態の深刻化を私に教えてくれる事になりました。
「あ〜……おねーちゃんだ!帰り道も一緒なんだね〜」
助手席の息子が指差す方向には一台の車。黒い軽の後部座席の窓がちょうど見えます。
そして、そこには窓に顔をこれでもか、と押し付けた女性がいます。
私は子供好きな人なのかなぁぐらいにしか考えず、楽しそうに手を振る息子をただ見ていました。
私たちの視線に気づいたかの様にその軽はすぅ、とスピードをあげて行きます。
息子は無邪気に「また明日〜バイバーイ」と楽しそうに手を振り続けていました。
「また明日?あのお姉さん知ってるのか?」
そう訪ねると、息子は大きく頷きます。
「いつもねー、みっくんとか、まやちゃん(息子の友人)がお菓子を買って貰ってるー」
「お菓子を?」
「でも僕は貰ってないよ?パパダメって言うし〜」
日頃から私が、知らない人から何かを頂いても全て断る事、と言っている事を守っている、と本人は主張したい様でした。
「そうか、良い子だ」
息子の頭を撫でる私を見上げながら、息子はまだ何か言いたげに私を見つめています。
「どした?お菓子欲しいのか?」
少しおどけながらそう言うと息子は左右に顔を振りながらこう、言いました。
「パパのお友達なの?あのおねーちゃん。今日もずっと一緒に着いて来たもんねぇ」
思いもよらぬ言葉に私は理解できずにきょとん、としました。そんな私を息子は不思議そうな顔で私を見つめています。
「……い、いや、パパは知らないな。でも、次にあのお姉さんに話しかけられても遊んで貰っちゃダメだぞ」
こんな支離滅裂な事を言ったかと思います。息子は「なんで?なんで?」としきりに聞いて来ますが、それに対する納得して貰える様な言葉を息子に判りやすく伝える術を私はこの時、持ち得ませんでした。ただの直感だったので。
「あのおねーちゃん、いつも痛い痛い、だから可哀想なのに。いつもパパ、どんな人にも優しくって言ってるのに」
「……痛い痛い?」
不思議な言い回しが気になり、復唱してしまいました。
「うん、あのおねーちゃんいつもお顔が傷でいっぱいなの」
また続きます。申し訳ありません。
怖い話投稿:ホラーテラー 優しい止まり木さん
作者怖話