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中編3
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おじいちゃんの言霊

これは私(たかし)のバイトの後輩(以後僕)から聞いた話。

僕のおじいちゃんは晩年脳梗塞を患っていて、歩くのも喋るのも不自由だったんだ。

正直、僕はおじいちゃんに嫌な顔をしたり、少し厄介者扱いして避けてしまっていた。

当時多感な年頃だった僕は、髪は金髪、フリーターやりながら毎晩遅くまで遊びまわっていた。

そんな僕を母が心配しているのは分かっていたけど、またそれが煩わしくて反発ばかりしてた。

ある時、母が僕の事をおじいちゃんに相談しているのを聞いてしまった。

母「おじいちゃん、K(僕)は毎日遊びまわってるだけで、将来の事なんか考えてないみたい。どうしたらいいか…。」

僕は(考えてるよ!だけど、真面目に考えれば考える程、どうしたらいいかわからなくなるんだ)と心の中でつぶやいた。

普段おじいちゃんを邪魔者扱いしていた僕は、正直おじいちゃんの返答に怯えながら聞き耳を立てていた。

すると、おじいちゃんの口からは出たのは意外な言葉だった。

おじいちゃん「ハッハッハ、Kは大丈夫だよ。俺よりもずっと良い星の下に生まれた子だから、大丈夫だよ。」

なんでこんな自分を信じてくれるのか全く理解できなかったし、その時は何も感じない未熟な自分だった。

数年が経ち、僕は定職に就き、おじいちゃんは入院生活を送るようになっていたある日。

いつものように仕事を終え帰宅した僕は、玄関がウイスキー臭いのに気がついた。

僕「母ちゃん、ウイスキーの匂いするけど、どうしたん?」

母「ウイスキー?おじいちゃんが入院してからはウイスキーなんて置いてないよ?」

僕「そうだよな、気のせいだよな!」

その時はその程度で済ませてしまったけど、確かにウイスキーの匂いがしたんだよね。

次の日の朝、僕は鳴り響く電話の音で目を覚ましました。

それはおじいちゃんが亡くなった事を知らせる電話でした。

こうなると葬儀屋や菩提寺との打ち合わせ、親戚や近所との対応、とても慌ただしく、おじいちゃんが亡くなった事を実感したのはその日の夜になってからでした。

しかし、僕は悲しみよりも先に後悔の気持ちで一杯でした。

忙しさにかまけてろくにお見舞いにも行かなかった事、不自由なおじいちゃんに優しく接してあげられなかった事。

「ゴメンね…。」

そうつぶやきながら泣き疲れて眠るまで泣き続けました。

その日の夜、夢の中でおじいちゃんが優しく笑いながら「いいんだよk」と言ってくれたのですが、

やさぐれていた僕は「我ながら都合のいい夢だな。」などと冷静に分析しつつも、

実際は夢に現れたおじいちゃんの笑顔と言葉で随分救われたのも事実でした…。

数年後、僕は鬼のような形相のおじいちゃんに追いかけられる夢を見ました。

それも一晩中です。

寝不足も手伝って次の日の仕事は朝から気分が乗らず、いつもより早めに昼休みに入りました。

昼休みが終わり、会社に入った僕は愕然としました。

僕が昼休みに出た数分後に会社にトラックが突っ込んでいました。

もし、早めに会社を出ていなかったら…汗。

これがK君の体験です。

偶然と言う一言で済ませてしまえばそれまでかもしれません。

ただ、彼はこう言っていました。

「家庭を持った今でも、逃げ出したくなる事や嫌になる事はたくさんあるけど、おじいちゃんの「Kは大丈夫だよ」という一言が支えになっている。無条件に自分を信じてくれたおじいちゃんを裏切りたくないんだ。」

彼にとってはおじいちゃんの一言は、間違いなく今でも生きている「言霊」なんだと私は思います。

怖い話投稿:ホラーテラー 8時だよ!全員まげろたかしさん  

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