子供の頃の話…
夕食後、母親と喧嘩した私は家を飛び出した。
とは言え、行く当てもなく近所の川沿いの道を歩いていた。
その道は、旧道で夜にもなれば車の通りはほとんどなく、人もほとんど歩いていない。
当然その時も私一人でした。
母親との喧嘩で苛々していた私は、ガードレールを蹴飛ばしながら歩いていた。
すると……
私の蹴る音の他に、無数の音が後方から聞こえてくることに気がついた。
「ちっ!誰だよ?人がムカついてんのに、人の真似してガンガンうるせーなあ」
と振り向いた。
辺りには誰も居ない…
変だなぁ…と思いつつも、込み上げた怒りを押さえることが出来ず、またも「ガーン」と蹴り上げた。すると…
「ガガガガガーン」と連続でガードレールが鳴りだした。
そして、響くガードレールの音に混じり、10人以上は居るであろう声が、ハッキリ聞こえた。
「ほら、あの子………してるでしょう……」とか「……がよさそう………」とか「………てみる?」などと聞こえてきた。
私は、恐怖より激しく頭に血が登っていたため「誰だか知らねえけどよ、言いたいことあるなら、こっち来て言えや!」
そう言うと…
ガサガサ…ガサガサガサガサ………と川の方から何かがやって来た!それが、人でも動物でもこの世の物でもって無いことはすぐに解った。
私はあっと言う間にそれらに囲まれた。
それらは人の形はしていたものの、ある者は顔半分が無い・ある者は片足が無い・またある者は片腕が無かった。
私は怒りよりも恐怖が遥かに上回り、また異様すぎる姿に腰を抜かした…
それらに囲まれた私は、為すすべなくそれらに担ぎ上げられ物凄い勢いで運ばれて行きました。
その途中で気を失ったようです。
どの位の時間が経っただろうか…
私がふと目を覚ますと、そこは見知らぬ神社の境内だった。
私は起き上がろうとしたが、体が一向に動かなかった。何か喋ろうにも、口は塞がれていて声は出せなかった。手足も縛られていた。
辺りを見渡すと、私を連れ去ったあの「連中」が居た。
連中は私の意識が戻ったことにまだ気付いてなかった。
連中を観ていると、何やら口走りながら、光るものを一生懸命研いている…
何を言ってるのか、耳を澄ませて聞いていたら「今夜はイキのいいのが手に入った」・「儂は顔半分欲しいわい」・「私は足が欲しい」・「俺は手が欲しい」などと聞こえてきた…
まさかとは思ったが、連中は手に「鉈」や「鋸」・「鎌」を持ち一斉にこっちを振り向いた。
私は咄嗟に目を瞑り、気を失ったフリをした………が、それが誤りであると気付いたときには、既に遅かった…
そう…連中は凶器を手にこちらに向かってきたのである。
連中は、私を取り囲むと手にした凶器でわたしの足を切り出した。
私は「ウ゛ゥーン」と唸る事しか出来ず、何故か気を失う事もなく激痛に顔を歪ませていた…
そして、次に連中は私の手を切り取った。
頭を半分切られ、胸から腹に掛けて切られ、内臓を掻き出された……。
初めは、激痛に身悶えていたが、死ぬ事も気を失う事もなく最後には味わったことのない快感を感じていた。
不思議な気分だった。私は死んだのか?とも思ったが、気持ちよさの中に僅かに痛みが残っていた。
すると連中は「ヒッヒッヒッ…これでまた仲間が増えた」・「お前から奪った物は、儂等が大切に使ってやるから安心せい」などと言っていたが、最早どうでも良かった。
私は連中に抱えられ、神社の裏手の小屋に寝かされた。
いつの間にか、私は眠っていた……
目が覚めると、病院のベッドの上だった。
傍らには、目に涙を浮かべた母親が私を心配そうにのぞき込んでいた。
母の話では、私は川岸で気を失っているところを発見されたらしく、すぐ病院に運ばれたそうでその間は意識不明だったそうです。
私が目覚めた時はすでに3日経っていたそうです。
私は自分に起きた恐怖の出来事を話すことが出来ませんでした。話しても「夢でも観たんだろう」と言われるのがオチでした。
しかし、夢では無いことが自分では分かってました。顔と手足に赤黒い痣が残っていたからです。
それはあの時「連中」に切られた場所と全く一致してたからです。
それから何日かして、退院しました。
私は1つを除いて、いつもと変わらぬ生活をしています。
その1つとは、夜な夜な聞こえてくる「ガードレールの音」です。
その音を聞くと、私は「連中」の居る場所へ行きます……
そう…私の顔半分と手足をくれる人を襲いに…
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話