長編9
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もう一つの「ヤマノケ」

以前、コピペで「ヤマノケ」を見た。その話では娘からヤマノケがまだ落ちなくて途方に暮れる、と言う終わりだったと記憶している。

実は俺の妹にも、ヤマノケが憑いた。しかしコピペと違う所がある。それは、ヤマノケが落ちたと言う事だ。今回はそれを書きたいと思う。コピペの人にも役に立てば幸いだ。

当時俺は大学生で二十歳、妹は中一で十三歳だった。妹はよく俺に懐いていて、俺もそんな妹を可愛がっていた。

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夏休みのある日、妹と二人でドライブに行こうという事になった。俺は父の車の運転席で妹を助手席に乗せて、上機嫌だった。

妹は賑やかな方ではなく、いつも大人しい感じだったが、よく笑う可愛らしい子だった。そんな妹は助手席で珍しくはしゃぎながら、

「どこ行こっか! どこ行こっか!」

と笑っていた。

特に行き先を決めてなかった俺は、

「どこ行こっかな〜」

と妹に笑いかけながら適当に走らせていた。

十八時くらいに出発し、海があれば車を止め、波打ち際で妹が裸足で遊ぶのを見守ったり、ちょっと一緒に遊んだりした。

それに疲れた俺たちは車に戻り、適当に走らせ、コンビニを見つけた俺は妹を待たせて車から降り、おにぎり四個とペットボトルのお茶二本を買って車に戻った。妹におにぎりとお茶を渡すと、嬉しそうにおにぎりを頬張り、

「楽しかったね」

と笑った。俺もおにぎりを食べながら家に向かって走らせていると、妹が突然、

「止まって! 止まって!」

と言った。俺たち以外車はいなかったので停めると、

「あそこから帰ろうよ」

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と妹が言った。妹の指差す先を見ると、森みたいな所への入り口が、ぽっかりと口を開けていた。俺は怖かったので、

「やだよ。何か居たらどうすんの?」

と言った。妹は

「楽しそうじゃん、肝試し肝試し!」

と言う。結局、駄々をこねる妹に敵わず、そこに入った。しばらく走るが、うっそうと繁った木々しか無い。しかも舗装されてない獣道を走っている為、車は終始揺れていた。隣の妹を見ると、眠そうな顔でぼんやりと窓の外を眺めている。

そろそろUターンして帰ろうと考えていると、フロントガラスに何かが思い切りぶつかった。

ガツンッ!

「きゃあ!」

「うおっ」

咄嗟に急ブレーキを掛ける。妹は押し殺した声で

「何!? 今の何!?」

と、しきりに言っていた。

「ちょっと待ってろ。見てくるから。」

俺は恐る恐る車を降りた。車を降りた俺に、

「待ってよ! ひとりにしないで!」

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妹は泣きながらシートベルトをガチャガチャしていた。俺は構わず、車の前に移動する。するとそこには、一羽のカラスが死んでいた。嘴の根元が顔に食い込み、目玉が飛び出していた。フロントガラスを見ると、深いキズがついている。親父の車なのにな、と俺は嫌な気分になった。

その時、さくっ…さくっ…という音が遠くから聞こえてきた。落ち葉を踏む音なのだが、普通に歩いてるのとは違い、ケンケンする感じで、てーんさくっ…てーんさくっ…と言う感じだった。しかも近付いて来てる。これはやばいと思って急いで車に戻り、エンジンを掛けた。エンジンが掛かってほっとしたのも束の間、タイヤが動いても車が進まない。キュルル、と言って、タイヤは回ってるが、その場の落ち葉が舞い上がるだけで、俺は焦る、妹は泣く。

その時、前方の木の後ろで、動くものが見えた。俺は咄嗟に、妹に向かって、

「見るな! 伏せろ!」

と言った。それでも妹はパニクってて、

「へっ? 何?」

とか言いながら泣いてるので、俺が妹の頭を引き寄せようとしたら、いきなりがくんって車が揺れた。見ると、あいつが体当たりした様で、大きな体が見えた。腕には犬の様に毛が生えてて、大人の男位の大きさと長さ、多分足も同じだ。顔はフロントガラスいっぱいでかなり大きい、カービーみたいに顔が体だった。しわしわの顔で、皮膚(?)はごわごわ。口がでかくて、大きい汚い歯がごちゃごちゃと並んでいた。そいつがもう一度体当たりした。その瞬間、妹が顔を上げた。そいつが大きく口を開けた。妹も口を開けた。やめろ、と言おうとして俺は気を失った。

どれくらい時間が経ったかわからない。一瞬かもしれないし数時間だったかもしれない。起きると、妹は眠っていた。全て夢であれと思ったが、フロントガラスには大きなキズがついていた。

それからUターンして戻り、俺は一心不乱に寺を探した。幸いなことに墓地があり、その近くに寺があった。

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俺は妹をお姫様だっこの形で抱えて、車から降ろした。おにぎりの包み紙と無垢な寝顔を見て、取り返しのつかない事になったことを悟って、俺は妹の服に涙を落とした。

俺は寺のとこに行き、妹を抱えたまま、

「すみません」

と言った。

出てこなかったので、戸を少し叩いて、

「すみません」

と言い続けると、お坊さんが出てきた。妹を見るなり、

「ありゃ」

と言った。うつむく俺を見てお坊さんは黙って境内に通してくれ、座布団を二枚出してくれた。一枚は俺が尻の下に敷き、もう一枚は妹の枕として使った。お坊さんが口を開かないので、俺は言ってしまった。

「ヤマノケですよね」

するとお坊さんは驚いたように俺を見た。

「うん。何で知っとる?」

俺はそれには答えず、訊いた。

「出ていきませんか」

お坊さんは俺から目を反らした。

「うん。こいつは強めやな」

あまりにきっぱりと、淡白に言われたので俺は怒りに近い感情を胸に抱いた。ドライブなんか連れてかなければ、あんな道入ってなければ…いろんな後悔が押し寄せてきて、パタパタと涙が床に落ち、染み込んだ。

「この子が好きやろな」

突然お坊さんが口を開いた。顔を上げると、俺を見ていた。俺は頷いた。

「ほんだら兄ちゃん、壊れてしまうかも知れんよ」

俺は妹を見た。俺の可愛い妹が、コピペみたいに変貌してしまったら、俺は耐えられるのだろうか?

「帰った方が…」

「大丈夫です。大丈夫です…っ」

俺はもうグシャグシャに泣きながら、お坊さんを見た。どんな妹でも逃げない。俺の責任だから。お坊さんは頷くと、妹に歩み寄った。

「かぅらぁあーっ!」

お坊さんが大声を上げたので俺はビクッとした。その瞬間、妹はパチッと目を開き、むくりと起き上がった。

「はいれたはいれたはいれたはいれた」

コピペと一緒だ、と俺は馬鹿なことを考えていた。お坊さんはそんな妹を思い切り平手打ちした。妹は、

「ひいぃっ」

と言ってふっとんだ。俺は拳を握って耐えていた。

妹はハァハァと荒い息をしながら、それでもへらへら笑っている。そんな妹にお坊さんはつかつかと寄って、パンパンパン、と繰り返し平手打ちをした。妹はやがて涎を滴ながら踞り、ピクリと動くだけになった。お坊さんはそんな妹を隣の部屋に引きずって行き、ぴしゃりと戸を閉めた。

やがて隣の部屋から、

「あ…っ…あふん…あんっ」

という、Hの最中の女の様な喘ぎ声が聞こえてきた。俺がお坊さんを見ると、お坊さんは、はぁーと溜め息をついた。

以後、俺がお坊さんから聞いた話を纏める。

ヤマノケは、人間の情事による快感が大好きな、下劣な妖怪だ。男と女ではその快感は女の方が勝るため、ヤマノケは女に取り憑く。ヤマノケは憑いた後はひたすら自慰を繰り返すらしい、その人間が死ぬまでずっと。ヤマノケは死なないので、その人間の体が死んだら、また新しい人間に取り憑く。

ヤマノケを落とすのに一番効果的な方法は、苦痛を与え続ける事と、またはこの上ない大きな苦痛を与える事。

具体的な方法としては、前者は拷問を続ける事。爪を一枚ずつ剥がしていって、十枚剥がして落ちたヤマノケも居れば、二十枚剥がしても憑いたままのヤマノケも居た様だ。後者で具体的な方法は、出産だそうだ。出産に耐えられるヤマノケは殆ど居ないらしい。しかしお坊さんにはそれを言わない人が多い、道徳的に。

shake

そして俺は、選択を迫られた。妹に憑いたヤマノケがどこまで我慢できるか、妹の体を傷つける方法。ヤマノケがおちる可能性は非常に高いが、妹を十三歳の幼さで母にする方法。ヤマノケが勝手に出て行くのを待つ方法もあるが、そんな事はほぼ無いらしい。

両親にも連絡を取り、最初は大変取り乱していた両親だか、お坊さんが何とか話して落ち着かせてくれた。

そして選んだのは…妹に出産させる方法。

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母は泣いていた。父はずっと黙ったまま俯いていた。きっと二人とも、こんな事態になって俺が憎かったろう。

行為はその翌日に行われる事となった。父親となる人は、お坊さんが呼んでくれた専門的な人らしい。真っ黒な髪は長く、膝位まで有り、それをひとつにくくっていて、甚平みたいな服を着てた。お坊さんはその人に話し掛ける時、耳打ちする様に喋った。その人は頷くだけで、一言も喋らなかった。

そして次の日の夜、行為は行われた。

両親は帰って、俺は残りたいと言い残った。お坊さんの計らいで、俺の寝る部屋と行為が行われる部屋は一番離れていた。しかし、妹の喘ぎ声が一晩中響いていた。俺はその夜ずっと、今までの無垢な妹の笑顔とか、思い出を思い出して泣いていた。

途中、お坊さんが入ってきて、お茶を置いてくれたが、泣き続ける俺を見て、

「だから帰れと言ったんや」

と呟いた。

そんな一夜を過ごした数日後、お坊さんが暗い笑みを浮かべて俺に言った。

「〇〇ちゃんに、赤子ができた。良かったな」

俺は無表情で頷くのが精一杯だった。

そして俺は家に帰ったが、またすぐに寺に行った。家に俺の居場所は無かった。流石に直接は言わないが、両親は確実に俺を非難していた。しかし寺に行っても俺は辛かった。なるべく妹と顔を合わさないようにしたが、聞こえる嘔吐音と便所の吐瀉臭、自慰による淫らな喘ぎ声。時にはお坊さんに淫らな行為を求め、抱き着く事も有ったらしい。

 俺は発狂の寸前で、いつも泣きながら生きていた。あの数ヶ月はずっと同じ気持ち過ぎて、長かった様にも短かった様にも感じられる。

そしてその日。

「生まれるぞ!」

お坊さんは俺を呼びにきた。ヤマノケの執着心が苦しみによって薄れた瞬間、妹を呼ぶ事が大切なのだ。

お坊さんに手を引かれて、また俺は泣いていた。その部屋に行くと、この世のものと思えない不気味な絶叫が響いていた。

「うあぁあっん! ぎぃやあぁあう!」

全裸の妹は嫌という程足を開かされ、手足を押さえ付けられていた。苦痛に歪めた表情の合間に、あのへらへら笑いを覗かせる。汗で髪を額にくっつかせた妹の顔に、以前の面影は無い。その時、

「うぁあっ…あ…あ」

お坊さんが叫んだ。

「今だ!」

その時そこに居た全員が、妹の名前を狂った様に呼んだ。お坊さんは、何かお経を唱えている様だった。

「あ…あう…」

妹はもう、へらへら笑わなくなっていた。目を見開いている。

「〇〇、帰って来い! 〇〇、〇〇ー!」

俺は声の限り叫んだ。

「あんぎゃあ! あんぎゃあ!」

お坊さんは呟く様に言った。

「生まれよった…」

妹を見ると、安らかな顔で気を失っていた。へらへら笑いはもう無い。終わった事を悟り、俺はへたり込んだ。

その一週間後、俺は妹と車で帰った。

妹は何も覚えておらず、

「体が変だよ…」

と言い、張った胸を触っていた。助産師みたいな人が、そういう病気にかかった事にしてくれていた。俺はそれに話を合わせ、

「元気になって良かったな」

と言いながら、以前と変わらず笑う妹を見て複雑な気持ちになった。

しかし、ここからが悲劇だった。

家に帰って一ヶ月程経ち、妹が自殺した。

shake

あの事件で少し情緒不安定になっていた母が、全てを妹に話したからだ。二人きりの時に、全てを話したと母は言った。

「お前はもう処女じゃない」

と言い、膣に指を入れたりしたそうだ。その母は今は精神病院に入院している。

この事件から、俺の家族はバラバラになった。だから、無闇に獣道に入らないでくれ。

そして、俺は妹の生んだ子供の行方を知らない。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名Xさん  

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娘の身代わりになると言わなかった時点で母親の人格を疑うよね。

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親が悪いって言うけど一番悪いのはヤマノケだから。

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これホンマやったらかなりヘビーやね(´・_・`)

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バイに憑いてたら男性も女性も快感味わわせるんじゃwwwwwwwwwwwwww

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くそばばあ

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くそばばあなんてことをぉぉぉ

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けっ、けったくそ悪いぜ

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後味悪すぎ

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本家では女に憑くから、嫁は来たらあかん!
みたいな事をお坊さんが言ってたやん。
母親に憑かせて、子供産ませたら良かったんじゃないの?
妹か弟ができて、ハッピーエンド!
絶対母親に移るとは限らんけども…

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後味悪いのが逆にいい。鬱怖たまらん

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ハッピーエンドがよかった

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