短編2
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お巡りさん

高校生の時の話。

自転車での学校の帰り、辺りは薄暗くなってた。

もうちょっとで家に着くかなって所の道端で顔見知りのお巡りさんが小さな女の子と話しをしていた。

オレが近付き声をかけるとお巡りさんが

「あ、T君(オレの事)この子がお母さんとはぐれたのか迷子になっちゃったみたいで…泣いてばかりでどうにも困ってね」

確かに女の子はグズグズと泣いていて話しにならない感じだった。

オレが

「まさに犬のお巡りさんっすね」

「……そんなしょうもない事はいいから…どうにかならんかなぁ」

アッサリと返された。

「T君この子の事知らないよね?」

と聞かれたが泣いててよく顔も見えないし

「う〜ん…見た事ないっすねぇ」

「ホントに?」

「ホントにって…見た事ないもんは見た事ないんで」

「ホントにホントに知らないの?」

お巡りさんはしつこく聞いてくる。

なんなんだよって少しイラついて

「とりあえず交番に連れていった方がいいんじゃない………」

そこでオレは「ハッ!」としダッシュで自転車をこいだ。

少し離れた所で後ろを振り返ると、二人ともジッとこっち見ている様だった。

思い出したんだ。

女の子の事じゃなくお巡りさんの事。

ちょうど一年前にその場所でそのお巡りさん…

トラックに跳ねられそうになってた女の子を助けようとして、女の子共々亡くなってた事を。

そしてオレは学校帰りにその現場を見ていた事を…。

すっかりと忘れていた…。

なんでだろ…。

よくしてもらってたのに。

お巡りさんは思い出してほしかったのかな…。

ごめんね…お巡りさん。

オレは帰ってすぐに花を買いに行き、その現場に手向けに行った。

後で思ったけど、オレのしょーもない「犬のお巡りさん」発言にちゃんと答えてくれたのが嬉しく思えた。

怖い話投稿:ホラーテラー カステラさん  

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