在る地方に、そんな噂が流れたのは、今はもう昔の話だ。獣は、遊牧していた家畜を狙い、その大きさたるや、ニメートルをゆうに越していたと言う…。
これに対し、各村では「獣狩り」と称して、沢山の狼が狩られたが、一向に被害は治まらず、それどころか、遂に獣は人間にまでその牙を向けた。
その地方の人々は、遂に当時の国王に「獣狩り」を嘆願する。国王は、部下の騎兵隊を派遣し、事の終息を急がせた。
騎兵隊は、今まで以上に「狼狩り」を続けると、一匹の巨大な狼を「獣」と称して剥製を造ると国王の元へと献上した。騎兵隊としても結果が欲しかった訳だ。
現に、暫くは「獣」の騒動は治まった。
が、そもそも「獣」は「狼では無い」…。在る時期から、また「獣」の伝説は始まった。
騎兵隊や村の勇敢な若者が獣を追い掛ける中、一人の少女が獣に襲われる。彼女は、持っていた小型のナイフを使い事無きを得るが、これが彼女を神格化させる。
「獣を貫くジャンヌ・ダルク」の誕生で在った(彼女の功績が多大な評価を受けただけで別に彼女がジャンヌ・ダルクで在った訳では無い)。
結局、この後も数年、「獣」はこの地方に現れては、人や家畜を襲ったものの、暫くすると、獣自体、もう現れる事は無かったと言う…。
この時代、狂犬病と言う病は、まだ認知されて居らず、一説によると「獣」は「犬」だったのでは無いか?と言われている。この時代の人々は、犬が人を襲う等と言う事は微塵にも考えて居なかったのだ…。
これが、史実に残る不死なる獣、「ジェボーダンの獣(悪魔)」の簡単な説明で在る…。
怖い話投稿:ホラーテラー ネクロノミカンさん
作者怖話