テュポン(テュポーエウス、テュフォン、テュポエウス、ティフォン)

テュポン(テュポーエウス、テュフォン、テュポエウス、ティフォン)

テュポンとは、ギリシア神話に登場する半神半獣の怪物である。その体は宇宙に到達するほど巨大であり、その力は神々の王ゼウスに匹敵するほどだったという。ギリシア神話に登場する怪物の中では最大最強の存在だと云われる。

【概要】
テュポンは半神半獣の巨大な怪物であり、その背は天空の星々をかすめるほど高く、その両腕は伸ばせば世界の東西の端まで届くほどだったという。底知れぬ力を持ち、決して疲れることがないという恐ろしい怪物である。
肩からは百の蛇が生え、炎を放つ目を持ち、腿から上は人間と同じだが、腿から下は巨大な毒蛇がとぐろを巻いた形をしているという。
一部の伝承では、鳥のような翼を持ち、多頭竜のような姿をしているとも云われる。

また、テューポーン、テュフォン、テュポエウス、ティフォンとも表記される。
原初の地母神ガイアの息子であり、一説によると奈落の神タルタロスとの間の子であるという。
また、妻にエキドナ(上半身は美女、下半身は蛇、背中に翼をもつ怪物)を持ち、子にキマイラやケルベロス、オルトロス、ラードーン、ヒュドラーなどの怪物がいる。

尚、テュポン(Typhon)は「Typhoon(台風)」の語源とされる。

【神々の王ゼウスと怪物の王テュポン】
テュポンの出自に関してはいくつかの説が存在するが、ゼウスに対するガイアの怒りから生まれたとする説が最も有名である。
かつて、神々は宇宙の支配権をめぐり壮絶な戦いを繰り広げていた。
その一つ、ティタノマキアとは、オリュンポスの神々と巨神族タイタンとの戦いである。この戦争は10年もの間続いたのち、オリュンポス側が、不死身であったタイタン族をタルタロスの深淵へ封印することで終結している。
続いて起こったギガントマキアとは、巨人族ギガースとオリュンポスの神々との戦いであるが、この戦いでギガースたちはヘラクレスとオリュンポスの神々に皆殺しにされ、オリュンポス側の圧勝で終わっている。
以来、ゼウス率いるオリュンポスの神々による支配が始めるのだが、タイタン族とギガース族の母ガイアは、我が子を打ち負かしたゼウスに対して、激しく怒りを覚えていた。そしてガイアは、最大最強の怪物テュポンを産み落とし、ゼウスに対して最後の戦いを挑むのである。

オリュンポスに戦いを挑んだテュポンは、世界を炎上させ、全宇宙を暴れ回り、大混乱の渦を巻き起こした。テュポンに追いかけ回された神々は、凄まじい恐怖を感じ、動物に姿を変えてエジプトへ逃げこんだという。このとき、パン神 は、恐怖のあまり上半身がヤギ、下半身が魚という奇怪な動物に化けるという醜態をさらし、この伝承が、Panic (パニック)の由来になったと云われている。

恐ろしいテュポンの猛攻に、ゼウスは雷霆や金剛の鎌で応戦した。ゼウスとテュポンの決戦は天上の宇宙で繰り広げられ、世界の秩序は混沌と化し、全宇宙は焼き尽くされて崩壊したという。激闘の末、シリアのカシオス山へ追いつめられたテュポンはそこで反撃に転じ、蛇の下半身によってゼウスを締め上げると、金剛の鎌と雷霆を取り上げた。そしてゼウスの手足の腱を切り落とすと、デルポイ近くのキリキアのコーリュキオンの岩窟に閉じ込めた。
テュポンはゼウスの腱を熊の皮に隠し、半獣の竜女デルピュネをその番人とすると、自分は傷の治療のために母ガイアの元へ向かった。
一方、身動きのできなくなったゼウスの元には、伝令の神ヘルメスと牧神パンが救出に向かっていた。彼らはデルピュネを騙して手足の腱を盗み出し、ゼウスを治療した。
力を取り戻したゼウスは再びテュポンと壮絶な戦いを繰り広げ、得意の雷でテュポンに深手を負わせた。
追い詰められたテュポンは、運命の女神モイラの元へ押しかけ、どんな願いも叶うという「勝利の果実」を出すよう脅したが、渡された果実を食べた途端、テュポンは力を失ってしまう。実は女神モイラがテュポンに与えたのは、どんな望みも叶わないという「無常の果実」だったのである。
テュポンは、最後にはシケリア島にまで追い詰められ、エトナ火山の下敷きにされた。以来、テュポンがエトナ山の下でもがくたびに噴火が起こると云われている。

因みに、このゼウスとテュポンの壮絶な戦いに関しては、ゼウスが雷霆の一撃で全世界を熔解させ、そのままテュポンを全宇宙の奈落にあるタルタロスへ放り込んだとする説もある。

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