メフィストフェレス

メフィストフェレス

16世紀のドイツ人占星術師であり、錬金術師でもあったゲオルグ・ファウストは様々な錬金術の実験をしながら各地を放浪していた。そのため、その行動を
宗教改革者マルティン・ルターから「悪魔の力を借りている」と非難されたという。そして、ある錬金術の実験の最中に爆死し、その五体はバラバラになっ
てしまった。その後、このファウストを主人公にした大衆向けの本が広まり、ベストセラーとなったが、その中で「ファウスト伝説」が出来上がった。
メフィストフェレスはその中に登場する悪魔であり、その語源はギリシャ語の3つの単語を合わせて「光を愛さないもの」という意味だ。その内容は、
ファウスト自身が十字路に魔法陣を描いてメフィストフェレスを呼び出し、使役することの条件として自身の肉体と魂を捧げるという契約を結ぶ。そして
しばらくは悪魔の力を利用して人生を謳歌したものの、最後には非業の死を迎え、彼の魂は悪魔に持っていかれることになるというものだ。発刊当時は、契約
に則り魂を持ち去る存在であったが、時代の変遷に伴い、ルシファーの哲学を代弁するという知性あふれる存在へと変わっていった。そして、その姿は
現代においても悪魔として人間に付きまとい肉体と魂の契約を迫る原型となっていることは間違いない。まさに近代悪魔の洗練された一つの象徴となっている。
この作品の展開も様々な様相を呈しており、通説通りファウストが魂を持っていかれるものもあれば、ファウストが契約を逃れ魂を渡さない展開もある。
メフィストフェレスがルシファーの神の反逆に加担して、ともに堕天した悪魔であるという説もあるが、それによるともともとの地位は大天使(下位第二位)
であり、地獄の7大王子の1人に数えられる。大天使というのは、かの有名な4大天使(ミカエル・ウリエル・ラファエル・ガブリエル)と同じ地位だ。
また本来悪魔というのは、恐怖や畏怖の対象であり即座に襲われるようなイメージを持つが、彼は違う。暴力的な面は一切なく、理知的でよく喋るスポークスマン
のような悪魔だという。そして光の領域にあるものを嫌い、滅ぼそうとする本性をもつ。彼の存在はそれまでにあった悪魔に対する新しいイメージを植え付けた
革命的な存在であった。契約により一時の快楽を得る代わりに終には身を滅ぼす形を作った最初の例である。
空を飛ぶ魔神である彼は、天文学や占星術、気象学に通じており、炎や幻などを操る多彩な能力の持ち主である。また前述した紳士的な態度の裏には、地獄に
落ちたことを悔やんでいる節があり、努力次第で天界へ行ける人間を羨み。いつか天界へ帰れたらと思っているという説もある。通常、悪魔との契約を描く場面
においては、上位の悪魔であれば、人間との直接契約が結ばれる場面が多いが、メフィストフェレスの場合には、かなりくらいの高い悪魔であるにも関わらず、
上司であるルシファーに了承を得てから契約を結ぶあたり、その律儀さや紳士ぶりがうかがえる。彼の行うやり取りを見ていると、神は人間が自身の現状に満足し
成長することをやめてしまわないように、悪魔による誘惑を容認することで、その誘惑に打ち勝つ努力を促しているとの見解もあり、悪魔も裏を返せば神の
使いであるという見方を彼の姿に垣間見る事が出来る。神と悪魔、互いに相反する存在ではあるものの、その存在は人間を導くためにあるのだという見方も、こうした
エピソードを通して見ると納得する。

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