夜な夜な、市松人形の髪が伸びる。

今では日本中でこの手の怪談を耳にする。小学生時代に聞いてしまい、しばらく市松人形が怖くて見られなくなったという人も多いのではないだろうか。北海道には、そんな人形怪談の草分け的存在がある。

道道38号線を進んでいくと、夕張市と岩見沢市を隔てる万字峠に差しかかる。その峠を下ったところに、栗沢町万字地区という集落がある。かつては炭鉱の町としてにぎわっていたそうだが、今では過疎化が進み、住民の大半が高齢者の静かな町になってしまった。

その町に万念寺という寺がある。入口の看板には「お菊人形 安置寺 万念寺」と書かれているので、すぐにわかるだろう。

そう、この万年寺には、髪が伸びる人形として日本一有名な「お菊人形」が祀られているのだ。昔から何度も心霊番組などで取り上げられているため、怪談好き以外の方でも名前くらいは聞いたことがあるかもしれない。

お菊人形の話をしておこう。1918年(大正7年)、札幌市では大正博覧会が開催されていた。博覧会を見物に行った鈴木栄吉という青年は、その帰りに着物を着たおかっぱ頭の人形を買った。年の離れた妹である菊子へのおみやげにするためだ。菊子は人形をとても気に入り、人間のように扱った。寝るときはもちろん一緒。ご飯も口元へ運んでは、食べさせようとしていた。

やがて菊子は風邪をこじらせたことが原因で、幼いうちに死んでしまう。兄の永吉と両親は深く悲しんだ。菊子が我が身のように大切にしていたこの人形を仏壇に祀り、菊子自身のように毎日話しかけていた。人形のおかっぱ頭も菊子にそっくりで・・・

「・・・あれ?」

いつしか永吉と両親は、妙なことに気付いた。買った当時の人形は確かにおかっぱ頭だったはずなのに、いつの間にか髪が肩まで届く長さになっている。菊子の魂が宿った。家族はそう信じて疑わなかった。

そして1938年(昭和13年)永吉たち家族が北海道を離れることになったため、お菊人形は万念寺に預けられることになった。それから80年近くたった今でも、お菊人形の髪はどんどん伸び続けている。床に達する髪もあるらしく、時折住職の手によって切りそろえられているそうだ。しかも住職が言うには、「昔は唇も真一文字だったはずなのに、今では少しずつ開いてきている」とのこと。写真撮影は禁止だがお菊人形は見せてもらえるそうだ。

北海道函館市万代町7−22
41.789178
140.732619
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