「悪い子はいねーがー、泣く子はいねーがー」大晦日の夜、そんな声とともに鬼の面を身につけ、大きな出刃包丁をもって家に押し入ってくる「なまはげ」。鬼の姿を模した見るからに凶悪そうな人物が突然現れるのだから、年端のいかない子どもに泣くなというほうが無茶のように思える。なまはげが訪れる日は家の主人が正装で出迎え、なまはげをもてなしたり、子どもの代わりに謝ったりする。
いつごろから始まった行事なのかはわかっていない。なぜ鬼の姿で子どもを脅しにくるのかも不明。なまはげの正体は「過去に漂流してきた外国人」とする説や「怠けている農民を叱咤しにやってくる役人」とする説、さらには「秋田県に出没した妖怪」とする説まである。その正体について、男鹿半島南部にある赤神神社にはおもしろい話が伝わっているので紹介しよう。
昔、その地に、漢の武帝が5匹の巨大な鬼を連れて、天から降りてきた。この鬼たちは非常に凶悪で、人間を食す。毎年正月になると里まで下りてきて「娘を差し出せ」と言って村人たちを脅すのだ。力ではかなわない村人たちは困り果てて、一計を案じることにした。
「夜明けまでに千段の石段をつくることができれば、娘を差し上げます。できなければ、山へお帰りください」
鬼たちはこの条件を受け入れた。さすがに千段の石段なんてつくれないだろうと思っていた村人たちだが、鬼たちは想像以上に怪力だった。あっという間に石段を積み重ねていく。
夜明けまでまだ時間があるのだが、今にも完成しそうな勢いだった。そこで機転を利かせた村人の一人がにわとりの鳴きまねをした。すると石段を999段まで積み上げていた鬼たちは朝がきたと勘違いして、そのまま山へ帰っていったという。
この鬼たちがなまはげ伝説のルーツになったというのだ。そして赤神神社には、今も鬼がつくったとされる石段が残っている。アクセス方法はJR男鹿駅から秋田中央交通バス男鹿南線の終点で下車、徒歩30分。うわさの石段はかなり古く、山道に埋もれるような形で残っている。
不気味な伝承が残る場所に怪談あり。この石段には、現在でも奇妙なうわさがある。夕暮れ時に石段を数えながら歩いていると、脇の木々からしわがれた男の声で、何らかの数字を唱える声が聞こえるという。もちろんそちらに目を向けても誰もいない。そうしている間に、何段まで数えたか忘れてしまうそうだ。勝負に負けた鬼が悔しがって邪魔をしてきているのだろうか。

秋田県男鹿市船川港本山門前祓川
39.870891
139.750921
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