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雪女は、雪の妖怪であり、さまざまな呼ばれ方をしている。
「ユキムスメ」、「ユキオナゴ」、「ユキジョウロウ(雪女郎)」、「ユキアネサ」、「雪オンバ」、「雪ンバ」(愛媛)、「雪降り婆」とも呼ばれている。
氷柱に結びつけて呼ばれることもあり、「ツララオンナ」、「カネコリムスメ」、「シガマニョウボウ」とも呼ばれることが多いようである。
『雪女の由来』
雪女の伝承は、室町時代末期の連歌師・宗祇法師による『宗祇諸国物語』には、すでに雪女は登場しており、かなりの起源が古いようだ。
呼び方は違うようだが、「死」を表す白装束をまとい、凍えるような息を吐きかけ、凍結させ、人を殺し、また、色仕掛けで男に近づき、精を吸い尽くして殺てしまうという事など、雪女と共通している。
このことを「雪の妖怪」として怖れられていたようだ。
このように、雪女は、恐ろしい存在でもあり、魅惑的な美しい存在として語られる事が多くなった。
雪女は綺麗な女性の妖怪だが、男は、雪男と呼ばれ、イエティや、ビッグフットのような、大きな猿のような姿で描かれることが多い。
『雪女の逸話』
「新潟県小千谷地方での伝承逸話」
ある男のもとへ、美しい女性が訪ねきた。そこでその女性は、自ら男の嫁になることを望んだ。
ある日、嫁が風呂に入るのを嫌がるので、無理に風呂に入れてしまった。
ところが、風呂に入れると、姿が消えてしまい、氷柱の欠片だけが浮いていたそうだ。
青森県や山形県にも同じような話があり、それを『しがま女房」などと呼ばれている。
「山形県上山地方の雪女」
雪の夜に、老夫婦のもとを訪ね、囲炉裏で火にあたらせてもらい、夜明けになり、すぐ旅に出ようとしていたので、おじいさんが、引きとめようと娘の手をとったが、その手はぞっとするほど冷たかった。
そしてすぐに、娘は雪煙を出しながら去って行ったと言う。
「雪んこを抱いた女」
吹雪の晩に、子供(雪ん子)を抱いた女が、通る人間に対して、「子を抱いてくれ」と頼むという。
その子供を抱くと、子がどんどんと重くなり、そのまま人は雪に埋もれて行き、凍死してしまうという。
しかし、頼みを断っても、雪の谷に突き落とされるとも言われている。
「弘前」では、とある武士が、同様に雪女に子供を抱くように頼まれたのだが、短刀を咥えてた状態で子供を抱いたところ、この怪異を逃れる事ができたという。
そして、武士は、子供を返すと、雪女は子供を抱いてくれたお礼に数々の宝物をくれたという。
ちなみに、雪ん子の重さに耐え抜いた者は、怪力を得るとも言われている。
雪女は、子供をつれて出現する事が多いようだ。
同じような子供連れの妖怪で、産女(うぶめ)の伝承と似ており、山形県最上郡では産女を雪女だと伝えているようである。
雪女の昔話は、哀れな話がとても多く、老夫婦や山里で一人暮らしの男など、寂しい人生の者が、吹雪の戸を叩く音に、自分の待ち遠しい人が来たのではないか?と幻想を抱くところから始まったといえる。
『雪女の正体』
いろいろな説があり、雪の精、雪の中で行き倒れになった女の霊などとさまざまな伝承がある。
山形県の小国地方の説話だと、雪女郎(雪女)は、元は月の世界の姫であり、退屈な世界から抜け出すために、地上に降りてきた。
だが、月へ帰れなくなってしまったために、雪の降るよるに現れるとされている。
山岡元隣という江戸時代の知識人は、雪女は雪から生まれるといっている。物が多く積もれば、必ずその中に生物が生ずるという道理からのようだ。
水が深ければ魚が生じようになり、林が茂れば鳥たちが生じるようになる。雪女も雪の中に雪女が生ずるという事もありうるという考えのようだ。