遺念火

遺念火(いねんび)は、沖縄地方に伝わる火の妖怪である。因縁火(いんねんび)とも呼ばれるようである。
遺念というのは、亡霊などを指す、沖縄の言葉であり、この遺念が火となって現れるのが、遺念火とされている。
基本的に、うろうろと飛び回ったりはしないようで、ほとんど同じ場所に現れるという。出没場所は、山中など、人のいない寂しげな場所に現れることがおおいが、稀に海上にも現れるという。

『遺念火の伝承』
遺念火の特徴として、駆け落ちの末に行き倒れるなどし、非業の最期を遂げた男女や、恋愛のもつれなどによる心中した男女などが一組の火となって現れると言われている。
・首里市(現・那覇市)にて
識名坂という、首里市の南にある土地のものは、遺念火の中ではよく知られており、トジ・マチャー・ビーとも言う(トジは妻という意味)
昔、仲の良い夫婦がいたそうだ。妻は、いつも街にでては商売しており、夫は、帰りの遅い妻をいつも迎えに出ていたのだそうだ。
ところがある日、二人の仲を妬む者が現れる。
そして、その者は、夫にこう吹き込んだのだった。「お前の妻は、いつも浮気をし、遊び歩いている」と・・
その後、夫は、生き恥を晒すことを苦にし、識名川に身を投げたのだった。
やがて、それを知った妻も、同じ識名川に身を投げたという・・
そして、それ以来、識名坂から、識名川へと、二つの遺念火が現れるようになったのだそうだ・・
・名護市にて
昔、非常に仲の良い夫婦がおり、その妻は、いつも仕事に出て、遅く帰ってくるのだった。
そんなある日、夫は魔がさし、妻が不貞を働いているのではないかと疑いだしたのだった・・
そして、夫は思い込み、妻への被害妄想が膨らみ、妻の帰り道に、夫は変装し、襲い掛かったのだ・・
妻は必死に抵抗をし、かんざしで夫の喉を突き刺し、逃れた。
やっとのことで妻は家に帰ったのだが、そこに夫の姿がない。
まさかと思い、引き返してみると・・そこではもうすでに夫が亡くなっていたのだった・・あまりの悲しみに、妻は自害した・・
命がけで貞操を守った妻と、その妻を疑い、愛する妻自身に殺されてしまった夫の無念が、2つの遺念火として夜な夜な現れるのだという。
・名護町(現・名護市)山中にて
とある女性がいた。
その女性は、険しい山を通り、夜間の山頂で、恋人と密会していたのだった。
ある暴風雨の夜の事・・男は、この天候では女は来ないと思って山へ行かなかった・・しかし、女は来ていたのだ。そして女は、男の不実さをなじり、自害した。男はそれを知り、自分の薄情さを悔やんでしまい、後を追うように自殺したのだ。
それ以来、同じ時刻の山頂に、2つの火が現れるようになったのだという。
・沖縄本島・沖縄県中頭郡読谷村瀬名波~『瀬名波の民話』読谷村民話資料にて
女は、豆腐を売りに待ちへ来ていた。、その時、侍に気に入られてしまった。女には夫がいた。侍の誘いを断ったのだが、侍は、強引な態度に出たので、妻は自害してしまった。心配し、迎えにきた夫は、死んでいる妻を見てしまい、自害してしまった・・
女の遺体は実家へ、男の遺体も自分の家に引き取られていった。生前、二人はとても仲がよかったので、亡くなってもなお、死んだ場所で会うようになったという話。
・沖縄本島・沖縄県中頭郡読谷村宇座~『宇座の民話』読谷村民話資料より
王様が、首里城の三味線弾きへ、「皆に怖がられている識名の遺念火が出なくなる方法はないか?」と尋ねた。
そこで、その三味線弾きは、歌を詠んで、遺念火を鎮めたという。すると、今度、王様は、「何か思いがあって出ていたのだろうから、もう一度出るようにしてくれないか?」と頼んだ。そうして、また三味線弾きは、別の歌を詠い、それ以来また、遺念火が再び現れるようになったのだそうだ。

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