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タホ・テッシーはアメリカのタホ湖に棲むと言い伝えられる怪物だ。
タホ湖はアメリカ西部を南北に連なるシェラネバダ山脈にあり、カリフォルニア州とネヴァダ州の境に位置する標高1889mの淡水湖だ。アメリカで6番目の広さを持ち、最深部で水深501mという世界で13番目に深いことから、未確認生物が隠れ棲むには十分な環境があると考えられている。
怪物の存在は先住民のワショー族とパイユート族の伝説に登場し、それが19世紀半ばに白人入植者へ伝えられた。タホとはワショー族の言葉で大きな水を意味する。
怪物は湖の東岸にある「ケーブ・ロック」という岩山近くの水面で最も多く目撃されていることから、近くに住処があると考えられている。
この岩山は先住民にとって神聖な場所とされ、死者を湖に投げ入れる儀式が行われていたという。水面を漂う若い女性の幽霊が19世紀後半からたびたび目撃されており、湖にあるファンネット島には幽霊に取り憑かれたキャプテン・ディック・ベーカーという世捨て人がいたという噂がある。
怪物の身体は黒く全長は3mから18mで、太いヘビのような姿をしている。コブが連なる身体の一部が水面から覗いていたという話が多い。大きなマスの群を襲って捕食している姿も目撃されている。泳ぎは魚や爬虫類のように身体を横にくねらせるのではなく、クジラやイルカなど水棲哺乳類のような上下の動きをする。
漁師の網に何かが掛かり船が引きずられた話やボートやカヤックが怪物に衝突し転覆した事例も報告されている。
1970年代半ばには世界的に著名なフランスの海洋学者、ジャック・クストーが小型潜水艇で調査を行った。クストーは湖の底で何か恐ろしいものを目撃したといわれるが、記録や映像の公表を断り、「世界は湖の底にあるものに用意が出来ていない」と謎の言葉を残した。クストーは遺言で死後も記録の公表を禁じている。
毎年6件程度の目撃報告があり、何かが存在しているのは確かだと考えられている。
その正体は首長竜のプレシオサウルスなど、ネヴァダ砂漠周辺で化石が見つかっている水棲恐竜だと信じる人が多い。しかし、タホ湖が形成されたのは恐竜の絶滅からかなりあとの7万年前に始まった最後の氷河期とされているため、研究者は否定している。
有力なのはチョウザメの一種だとする説だ。チョウザメは恐竜が出現するはるか以前の2億5000万年前から生きている古代魚である。その仲間には淡水魚がおり、最も大きいオオチョウザメは19世紀に7mを超える個体が釣られた記録がある。
長年にわたりタホ湖を調査しているカリフォルニア大学のチャールズ・ゴールドマン教授は、2004年にUSO(Unidentified Swimming Objects=未確認遊泳物)の会議でタホ・テッシーについて講義を行った。ボートが怪物に衝突した事例の大半は波によって引き起こされたもので、コブも怪物の頭やシッポを見たという報告がないため波もしくは浅瀬の岩がそのように見えたことで説明がつくとしている。そしてタホ・テッシーはチョウザメだとの見解を示し、写真や目撃情報の一部には説明がつかないものがあることを認めている。
2004年には怪物の写真には頭が撮影され、二人のダイバーが水中の洞窟で巨大な二つのヒレを持つ怪物を目撃するなど、あらたな情報が報告されている。