江戸時代、体の汚れた男がある村にやってきました。
大人は普段からその容姿のことで嫌い、その男を避けていました。
でも子供たちは、そんな男に興味津々でした。
数日も経たない内に、子供たちと友達になった男は、
子供たちにこんな詩を教えたそうです。

いろはにほへと
ちりぬるをわか
よたれそつねな
らむうゐのおく
やまけふこえて
あさきゆめみし
ゑひもせす

子供たちは全く理解できませんでした。
そんな子供たちに男はこういったそうです。
「この詩はね、最後が肝心なんだよ」
数日後、村に隣町の役人がやってきて、その男を連行しました。
男は殺人の犯罪者だというのです。
数日も経たない内に、男は殺されてしまいました。

最後が肝心というのは、最後の文字の事です。

とかなくてしす

とがなくてしす

咎無くて死す

男は冤罪で殺されてしまったのです。
この歌詞の本当の意味を紐解いてみると、ある事が分かります。

色は匂へど 散りぬるを
我が世誰ぞ 常ならむ
有為の奥山 今日越えて
浅き夢見じ 酔ひもせず

美しい花もやがて散ってしまうように、
今生きている誰もがいつかは死んでしまう。
そんな移り変わりやすいこの世に拘らず、迷いのない心境に達すれば、
不確かなことに心がとらわれたり惑わされることもないのに。
男はその言葉を残しそして処刑されるときこの世の恨みを見つめるように恨んでいたといわれています。