1月の怖話アワード受賞作品に対するオカルト研究家・ホラー作家でもある山口敏太郎氏による動画書評が公開されました。上位8作品全てをレビューしています。 1月はシリーズ作品が特に目を引いた月でした。 怖い話に関する知識もレビューで解説されているので、すでにお話を読まれた方も是非ご覧ください!

▶ 怖い話グランプリ 1月書評 - YouTube ###動画を文字に起こしました。 山口敏太郎です。 怖話1月のベスト8の書評をやります。 最近髪を切った佐村河内さんが僕に似ていたということが個人的に一番怖かったんですが、日常生活には不思議な怖い話があるものですね。 ###8位:恐怖症 投稿者:ダレソカレ ダレソカレさんは常連のメンバーさんですね。 恐怖症、各個人がいろんな恐怖症を持っています。その恐怖症をテーマに怪談にしたのがちょっと新しいなと思います。思い出というのはトラウマにもなるし、心の良い支えにもなる。良い思い出は人生の支えになったりするけども、悪夢的な思い出はトラウマになってしまいます。子供の頃の友人の死というのは非常に暗い影を落としますね。私も同級生が自殺したり、不慮の事故で亡くなったりしております。高校時代や中学時代の同級生が非業の最期を遂げています。殺人事件で殺されてしまった幼馴染の女の子というものは、非常に暗い影として人の心に残るものです。 新しい怪談という感じがして面白かったです。 ###7位:鬼の子。《続》【姉さんシリーズ】 投稿者:まめのすけ。 まめのすけ。さんも常連の方です。 目が特徴的な鬼の子、鬼子(おにご)とか鬼の子とか言うのですが、大分県に昭和中期ぐらいまでミイラが残っていました。それはもう火事で焼かれてしまって、今は写真しか残っていません。鬼子の伝説をモチーフにして書いたんですね。目が特殊な目であるという、妖怪と人間の違いを目に置くことは非常によくあることです。目が黒目ばっかりの妖怪など。 かつて人類は数万年前まで犬のように黒目だったようです。この方が闇の中に隠れていても、捕食動物に襲われないんですね。文明が発展して白目のほうが興味深くなってきて、白目のある人間が多数派になりました。 この真っ黒い異常な目をした鬼子を非常に気に入りました。最近アメリカの都市伝説でブラック・アイ・チルドレンというのが流行っておりまして、これまた目が黒くて黒目だけなんですね。家に入れてくれと懇願するのですが、入れてしまうと悪いことをするという、吸血鬼とか日本で言うと天邪鬼などよくあるパターンです。目にポイントを置いた点が非常に面白かったです。 ###6位:ゆびきりげんまん。【姉さんシリーズ】 投稿者:まめのすけ。 まめのすけ。さんは民族学的な知識があるのでしょうね。民俗学と怪談を上手く合わせるのが非常に良いと思います。 ゆびきりというのが魔界との契約なんですね。約束をしてしまってある老人の留守番を頼まれる。すると、人ではない何者かがやってきて入れてくれと交渉する。 天邪鬼民話でよくあるパターンなのですが、非常に面白いと思います。 ドア越しの異界の人物との会話というのも非常に緊張感があって良かったですね。文中でも書かれていますが、ゆびきりというのは遊女が好きな旦那さんに指を切って贈ったというのが最初というのは定説のようです。心臓に近い指を贈ることで証を立てたと言われていますが、実際は赤い糸に繋がれている小指を切り落とすことで「あなただけで生きていきますよ」という意味もあるようです。 ###5位:ネイルの女。【姉さんシリーズ】 投稿者:まめのすけ。 姉さんシリーズ強いですね。 Sな姉とMな弟。今風の草食系男子と肉食系女子の構図で良いと思います。 ひきこさんやカシマレイコのような話をモチーフにしていますね。非常に科学的なエンディングになっています。ネタバレになってしまうので詳しくは言えませんが、呪いとか恐怖というのは脳が作用していることがあると思います。脳に暗示がかかるからこそ呪いが成立するのでしょうし、幽霊が見えるというところが面白いと思います。 ###4位:ワケあり物件に住んだ友達の結果 投稿者:ナナシノシ 面白かったのは幽霊は下ネタが苦手というところ。エロい話やおならやうんちの話をすると幽霊が逃げていくという仮説があります。いろんな幽霊の苦手なものがあります。今作はおならで幽霊が撃退されたという、事故物件をテーマにした話なんですがいい感じです。 とりとめのない終わりが実話怪談的には良いと思います。後日談とかまた今後こういう事件があったら、是非寄せていただければなと。 貴重な実話怪談系の話なので期待しています。 ###3位:きさらぎハイテンション 投稿者:紺野 これは面白かったですよ。電車やバスで異界に行ってしまう話なんですけども。 バス停とか駅というのは元々村外れに作られています。村外れイコール墓場だったり、まれびとがやってくる霊界との境界だったりするんですね。だから、バスとか電車の中とか、そういう路線上には霊が出やすいんです。 妖怪というのは人間の目とか腕の数、首の数より過剰に多いか少ないかによって成立しています。その過剰か少ないかというセオリー通り、ルールに基づいた化け物達が出てきている。ここらへんも面白いと思います。 ###2位:トビオリさん。【姉さんシリーズ】 投稿者:まめのすけ。 子供の遊びっていうのは霊界との交流に繋がる、神との交信なんですね。そういった巫女文化が発展して、学校の少女たちのコックリさんに繋がっています。そこらへんは、少女民俗学という本が出ていますので非常に面白いので読んでください。 子供の遊びをやってしまったために異界に行ってしまった。こういうシンプルな怪談が僕は怖くて好きです。 ###1位:ピエロ ~最終決戦~ [最終話] 投稿者:upa ピエロとは人間の心の暗部ではないのかなと思いました。恐れる人間の心が生み出した怪異がピエロだったんじゃないのかなと。 夢と現実の境目が明らかではなくて、これも実は夢なんじゃないかと不安な感じがしました。またピエロ来襲があるんじゃないかという振り、ある意味期待しております。非常に大作になりました。 唯一残念なのは、僕も経験があるのですが、最終決戦に行くときにどうしても筆が走りがちになってしまう。もうちょっとじわじわと溜めをきかせても良かったのかな、というところも一部ありました。でも、かなり残虐な感じでキャラクターとしては僕は好きになりましたね。 ということで1月のトップ8作品は以上のようになりました。 大変盛り上がってきました。ただ、上位メンバーが固まってきたので、新規のメンバーも是非参加して頑張ってください。いろんな人がいろんな話を持ち込むことによって怖話が盛り上がっていきますので、よろしくお願いします。