ベティ・アンドレアソン事件

UFO誘拐事件で現在も重要視されている事案の一つが、1967年1月25日にマサチューセッツ州で起ったベティ・アンドレアソン事件だ。
この事件が注目を集めているのは、催眠術により被害者が宇宙人に拉致されていた間の記憶を詳細に語った点にある。
事件の舞台はアメリカ東海岸に位置する州都ボストンから、西北西に約50km内陸に入ったアッシュバーナムだ。被害者の主婦ベティ・アンドレアソン・ルカは市のサウス・アッシュバーナム地区に住んでいる。
ベティは事件当時の記憶をほとんど失っていた。8年後の1975年にタブロイド紙でデニケンが書いたオーパーツの記事を読み、何かに突き動かされるように新聞社へ手紙を書いた。すると新聞社からの返信にUFOの赤いスタンプが押してあり、これをきっかけに記憶を取り戻し始めた。やがて彼女の手紙は、UFO体験を一般に募っていたジョセフ・アレン・ハイネック博士の目に留まる。ハイネックはアメリカ空軍のアドバイザーとして「プロジェクト・ブルーブック」に関わった天文学者でUFO研究家だ。
1975年に彼女は記憶の断片を綴り、ハイネックに手紙を送った。その手紙は2年間、ファイルに綴じられ1977年1月に本格的な調査が始まる。
調査チームは電気通信の専門家、宇宙空間物理学者、UFO研究家などからなり、催眠術の専門家が加わった。調査は12ヶ月に及び、嘘発見器や精神科医の問診、そして退行催眠を受けた。彼女の失われた記憶を呼び覚まされ誘拐事件の全貌が明らかになった。
事件当日の午後6時30分頃、ベティは台所にいて、両親と7人の子供たちは居間でくつろいでいた。突然、家の明かりが点滅し台所の窓から強い光が差し込んできた。彼女は子供たちが心配になって居間に行くと父親が窓の外を見つめている。台所に戻って窓の外を見ると、5人の奇妙な生物が跳ねながら家に向かってきた。それが台所のドアをすり抜けて家に入った瞬間、他の家族は失神した。
1人は父親の元に行き、残りの4人が彼女とテレパシーで会話を試みた。
生物はグレイ・タイプの宇宙人で、袖に鳥の絵柄がある青いツナギの服に幅の広いベルトを締め、歩くことなく浮いたまま移動した。他の4人より背の高い身長150cmほどの生物がリーダーと思われた。彼女が家族を気にかけると、宇宙人は一時的に11歳の娘ベッキーを失神状態から解放して安心させた。そして家の外にある丘の上で待機していた小型の円盤に導いた。円盤は彼女を乗せて母船に向かい、そこで奇妙な装置を使った苦痛の伴う生体検査を受け、およそ4時間後に2人の宇宙人に連れられて家に戻った。
家族は失神したままで、1人の宇宙人が待機していた。宇宙人は彼女に来るべき時まで宇宙船で体験したことは忘れるように指示した。
ベティは事件当夜の出来事をおぼろげに覚えていたが、それを家族にうまく伝えることができなかった。3日後、娘のベッキーが家に不思議な生物がいた夢を見たと語り、数年後、今度は父親が家に宇宙人が家に入ってきた記憶を思い出した。しかし、それらの体験を他人に話すことで一家に災いが起るのを恐れて1975年まで心に仕舞っていたのである。
退行催眠は別の体験を呼び覚ましている。それは彼女が13歳のときに別の宇宙人と遭遇した出来事だ。それは人間に似たノルディック・タイプで、身長は2mあり金髪で白いローブを着た天使のようだったとベティは語っている。
ベティはその後、ボブと再婚したが研究チームによる継続調査で、ボブもUFOと遭遇していたことが判明した。
ベティ・アンドレアソン事件の調査を行ったUFO研究家のレイモンド・F・フォウラーは、事件の概要と分析をまとめ、『アンドレアソン事件』と続編の『アンドレアソン事件第2弾』を出版している。
ベティは敬虔なキリスト教信者であることから、宇宙人との遭遇を信仰に基づく宗教体験として分析する試みもなされているが、真相を解明するには至っていない。