バレンティッチ行方不明事件

1978年10月21日、オーストラリアにあるオトウェイ岬で起こったUFOの多発とセスナ機の失踪事件である。

この日、セスナ機で夜間訓練飛行中であったフレデリック・ポール・バレンティッチ(20)は、モラビン空港を飛び立った後オトウェイ岬へと向かっっていた。

オトウェイ岬を通過して間もない午後7時6分14秒の事。バレンティッチはメルボルン管制塔に付近に他の航空機はないか尋ねた。バレンティッチからの通信によると、自機の上方に大型の航空機がいて、着陸灯のような4つの光が見え、自機を追い越したり戻ってきているというのだ。
しかしこの日、付近に飛行予定の機体は無い。
いったい、この時バレンティッチ氏が見たものはなんだったのか?

以下、事件発生時にバレンティッチ氏とメルボルンの管制塔とが交わした通信内容である。

7時6分14秒パ「メルボルン(管制塔)、こちらデルタ・シエラ・ジュリエット。高度5,000以下に既知の飛行はあるか?」
6分23秒 管「デルタ・シエラ・ジュリエット、既知の飛行はない」
6分26秒 バ「こちらデルタ・シエラ・ジュリエット。5,000フィート以下に大型の航空機がいるようだ」
6分46秒 管「デルタ・シエラ・ジュリエット、航空機の種類は?」
6分50秒 バ「断言できない…着陸灯と思われる4つの灯りが見える」
7分04秒 管「デルタ・シエラ・ジュリエット…」
7分32秒 バ「メルボルン、こちらデルタ・シエラ・ジュリエット。その航空機が本機の少なくとも1,000フィート上空を通過」
7分43秒 管「デルタ・シエラ・ジュリエット、了解。大きな航空機であるかどうかを確認できますか?」
7分47秒 バ「えー、速すぎてわからない。近くに空軍機はいないか?」
7分57秒 管「デルタ・シエラ・ジュリエット、周辺に既知の航空機はない」
8分18秒 バ「メルボルン、それが現在、真東からこちらに接近してくる」
8分28秒 管「デルタ・シエラ・ジュリエット…」
8分42秒 バ「(2秒間マイクが空いたまま)」
8分49秒 バ「こちらデルタ・シエラ・ジュリエット。そいつはゲームでもしているようだ。確認できない速度で2〜3回こちらを飛び越えている」
9分02秒 管「デルタ・シエラ・ジュリエット、そちらの高度はいくつですか?」
9分06秒 バ「本機の高度は4,500フィート」
9分11秒 管「デルタ・シエラ・ジュリエット、航空機を特定できないのか」
9分14秒 バ「そのとおりだ」
9分18秒 管「デルタ・シエラ・ジュリエット、了解」
9分28秒 バ「メルボルン、こちらデルタ・シエラ・ジュリエット。それは航空機じゃない…(2秒間マイクが空いたまま)」
9分46秒 管「デルタ・シエラ・ジュリエット、こちらメルボルン。その、えー、航空機の様子を教えて下さい」
9分52秒 バ「現在飛行中で、長い形だ…(3秒間マイクが空いたまま)…こんな速いものを知らない…(3秒間マイクが空いたまま)…今目の前にいる。メルボルン。」
10分07秒 管「デルタ・シエラ・ジュリエット、了解。その…えー、物体はどのくらいの大きさか?」
10分20秒 バ「こちらデルタ・シエラ・ジュリエット。メルボルン、それはこちらを追っているように思われる。現在、本機は旋回中だが、そいつも真上で旋回している。緑色のライトが一つ、金属のようで外側が輝いている」
10分43秒 管「デルタ・シエラ・ジュリエット…」
10分48秒 バ「こちらデルタ・シエラ・ジュリエット…(3秒間マイクが空いたまま)…ちょうど今消えた」
10分57秒 管「デルタ・シエラ・ジュリエット…」
11分03秒 バ「メルボルン、どんな航空機なのか教えて欲しい。軍用機か?」
11分08秒 管「デルタ・シエラ・ジュリエット、確認する。えー、航空機が今消えたのか」
11分14秒 バ「もう一度…」
11分17秒 管「デルタ・シエラ・ジュリエット、航空機はまだ一緒にいるのか?」
11分23秒 バ「こちらデルタ・シエラ・ジュリエット。それが…(2秒間マイクが空いたまま)…現在南西から接近」
11分37秒 管「デルタ・シエラ・ジュリエット…」
11分52秒 バ「こちらデルタ・シエラ・ジュリエット。エンジンが荒くアイドリングしている。当機は23、24にセットした(訳注:操縦に関する設定と思われる)。そしてそれは…(咳き込む声)」
12分04秒 管「デルタ・シエラ・ジュリエット、了解。そちらの意向は?」
12分09秒 バ「本機の意向は…あー、キング島へ向かう…あー、メルボルン、おかしな航空機がまた本機上空に浮かんでいる…(2秒間マイクが空いたまま)…それは浮かんでいて、航空機じゃない」
12分22秒 管「デルタ・シエラ・ジュリエット…」
12分28秒 バ「こちらデルタ・シエラ・ジュリエット。メルボルン……」
(17秒間マイクが空いたままで金属音が続き、通信が切れる)
12分49秒 管「デルタ・シエラ・ジュリエット。こちらメルボルン……」

その後、無線機からはガリガリ、ガチガチといった金属の擦れ合う不気味な音が流れた後、ついに通信は途絶した。
飛行機が墜落したと判断した管制塔は、すぐさま救助を要請、オーストラリア軍による空と海から大がかりな捜索がおこなわれた。
しかし、必死の捜索も空しく、セスナの残骸は愚か、セスナの行方に関する手掛かりは何もつかめないまま、、4日間に渡る捜索が打ち切られたのである。

この事件は悲しむべき飛行機事故として報道された。
しかし、管制塔との通信記録がわかると、報道は一変、UFO騒ぎとなり大きなパニックを巻き起こした。
さらに、この事件が起こる6週間前より、オーストラリア国内ではUFOと思われる未確認飛行物体の目撃が多発していたのである。

しかし、オーストラリア政府はあくまでUFOの関与は無いと発表。事故の原因は機が誤って上下反転して飛んでいたため、海面に映った町の灯りを飛行物体と見誤り、海中に墜落したものであると宣言した。

だが、バレンティッチ氏は弱冠20歳ながらも、200時間近い飛行経験を持っていたことから、上下の反転に気が付かないとは思えない。また、セスナは上下の反転を50秒以上続けて行えないことも、この政府発表に疑問を投げかける材料となる。
しかし、未だセスナも見つからなければ、大量に現れたというUFOも謎のまま、最後に聞こえた金属音の書体も未だ解明されておらず、消えたセスナ同様、この事件の真実もまた、未だ発見されていない。