【1964年】シスコ・グローブ事件

この事件は、事件から遡る事3年前に起きた”ヒル夫妻誘拐事件”に匹敵するUFO事件におけるターニングポイント的な重要な事件である。

1964年9月4日、ドナルド・スマイルズとその友人は狩猟の為にアメリカ合衆国カルフォルニア州シスコグローブの山中へ入った。事件の命名はこの場所に因むものである。

夕刻、狩猟を終えたドナルドと2人の友人の3人は付近の探索の為、散開してキャンプまで戻った。しかし、いくら慣れているからと言っても、街灯もない真っ暗な山中では誰かが迷う事は必然でもあった。

ドナルド自身、漆黒の山中で道に迷い、これ以上動き回って事態を悪化させるよりも、その場所に留まって何とか居場所を知らせて探してもらおうと考えた。
そこで、ドナルドはその場で火をおこし、他の2人が気付いてくれるのを待った。

数時間経過すると、急に空が明るくなり、救助ではないかと思ったドナルドはその光の先を見た。しかし、それは見た事も無い程の明るさをもった光体で、その光体は付近の峰の反対側に、まるで滑るかのようにして着陸した様に見えた。

暫くすると、漆黒の木陰から黒い物体が動いている事を発見したドナルドは、光体からの生物とは考えずに、咄嗟に熊ではないかと考え、静かに逃げながら、近くの大きめの木によじ登り様子を伺った。

しかし、近付いてきたのはドナルドの予想に反して、熊ではなくこれまで見た事がないような物だった。
体長にすると120cmから130cm程度の大きさで左程大きくは無い生物らしきものだったが、その様相は異常とも言えるものだった。
その2人はまるで潜水服の様な淡い色の服を着用し、頭には透明なヘルメットらしきものを被っていた。

更に、その2人に付き従う様に角のある顔らしき部分に、オレンジ色に輝く目、そして何より地面を歩くのではなく、宙に浮いた状態で滑る様に動いていた150cmほどのロボットらしき存在があった。

彼等はドナルドのいる木までやってきて、ドナルドを捕獲しようと言う意思が感じられた。
2人は何とかドナルドを木から離れさせようと、木を揺すったりしたが、ドナルドも恐怖で簡単には離れない様にしがみついていた為落ちる事はなかった。
そこで、彼等はドナルドの様に木に登ろうとしたが、木登りの概念すらないのか、それは全く功を奏しなかった。

ロボットは、宙に浮いているだけに、そのまま上昇をしてドナルドの近くへ寄ろうとしたが、木の枝が邪魔をして近付く事は叶わなかった。その間も、ドナルドは必死で木を上へ上へと登り、ほぼ天辺まで来ると手持ちの燃える物に火を点け、次々にその彼等に投げつけ攻撃を繰り返した。その為か2人の宇宙人らしきものは攻撃を避けるために木から離れていったが、ロボットには通用せず、その場に留まっていた。

やがてロボットは口らしき個所からドナルドに向けて、黄色いガスを発射した。
どうやら何かの毒ガスの様だが、ドナルドは狩猟に使用する為に持っていた矢の残り3本をロボットに向けて射抜いた。
その内、2本が命中し、ロボットからは火花が飛び交い、落ちていき転倒した。

だが、ロボットはすぐに起き上がり、木の傍へやってきた。それだけではなく、いつの間にかもう一体のロボットがやってきて、2体が向かい合い閃光を放ち爆発した。
すると、先ほど散布された黄色いガスと同じものが、先ほどと比較にならないほどの量で散布され、ドナルドはそれを吸いこんだ為に気を失った。

ドナルドが気が付いた頃はスッカリ朝になっており、怪現象の全ては消え失せていた。全ての気配が無くなっていたのである。
ドナルドはキャンプ地を目指そうとしたが、途中で再び力尽き捜索に来た友人に助けられ、ようやく難を逃れたのである。

ドナルドは後日その現場に戻り、射かけた3本の矢の内、命中したであろう2本の矢を発見した。
2本ともその時の痕跡らしきものが残り、奇妙な筋が2本ともに付いていた。更には1本には解明不能な金属塊が付いていたと言う。

この矢は、後日米空軍の捜査官によって押収されたと言う。

真実ならば実に稀有な事件と言わざるを得ないが、残念ながらこの事件自体は当時さしたる話題にもならず、事件の約14年後にUFOのローカル専門誌に記載されたに過ぎず、真実を示す証拠は、状況、物的共に皆無に等しい。

既に夕刻になっている状況で、散開してキャンプ地を目指す事もおかしな話であり、また、黄色いガスが人の気を失わせるほどのものであるなら、ドナルドのその後の体調に何の影響も無いことも疑念を抱かせる。
しかも、直後に病院へ行っていない事も気がかりな事だ。
通常、こんな目に遭えばすぐさま病院へ行くだろうし、証拠として診断書くらいとっておいても良さそうなものである。

地球へやって来れる程の科学力を持ち、宙に浮いたままの人型ロボットを作る科学力がありながら、木に登った程度のドナルドを捕獲できないどころか、捕獲の方法が木を揺するだけというのもあまりと言えばあまりな話である。

この話が、もし真実なら違った意味でセンセーショナルな話であると言えるのではないだろうか。