この事件は、いわゆるアブダクション未遂事件と言え、アブダクション事件の中でも稀有な例のものである。
1988年1月20日深夜未明に、西オーストラリア州から南オーストラリア州に向かいナラボ―平原のエア・ハイウェイのマデュラとマンドラビラの中間地辺りを走行していた。
同乗者は、母親のフェイと、18歳から24歳まで(当時)の3人の息子の4人とペットの犬が2匹乗っていた。
その事件の際は、次男のショーンが運転をしており、助手席には長男パトリックが座った。
長時間の運転や同乗の疲労で、全員に疲労の影が見え始めた時、その事件は起こった。
周囲は、街灯もろくになく、広大なオーストラリアとあって民家や建築物は全く無く、周囲は漆黒の闇に包まれていたが、前方にうっすらと光が見え始めた為、不安に思ったショーンがパトリックに「もしかしたらあれはUFOなんじゃないか」と言ってみたが、一笑に付されてしまった。
それでも、不安を拭えず、更にはパトリックの態度に立腹したショーンはスピードを上げて未確認の光体に向かって行った。
すると目も眩むばかりの光を放っていた物体の正体が見えてきた。
物体まで約20m程の距離まで近付くと、その物体が幅1m、高さ3m程度の大きさでまるでエッグスタンドを逆さにしたような形状をしており、更には物体は明らかに宙に浮いている状態だった。
犬は恐怖と敵意を剥き出しにし吠え続け、その鳴き声と、あまりの眩しさに一家全員は目を覚まし恐怖でパニックに陥った。ショーンは、車のスピードを上げ物体から少しでも距離をとろうとした。
しかし、その物体は前後に動きながら、難なく彼等の車を追尾してくる。
その途中で、ノウルズ一家の車は反対車線のワゴンと接触してしまう。
この接触により、未確認の飛行物体の興味はワゴンに移り、そちらを追って行く。
その隙にショーンは車を急発進させ、猛スピードで逃げ始めた。しかし、暫くすると再び光体の輝きが後部から襲ってくる。
しかも、今度は追尾するだけではなく、その飛行物体はノウルズ一家の車の屋根に乗ったようだった。
その為、彼等の車は少し沈みこんだ。更に暫くすると、今度は車が上部に引っ張られる感覚がある。
UFOは、どうも彼等を車ごと捕獲しているかの様だった。
時間にして約20~30秒ほどその作業は続いた。
車は高さはともかく確実に宙に浮いたと言う。車輪はずっと空回りの状態だった。
この際、短い時間ではあったが、母親は窓から手を伸ばし物体に触れてみた。当時はポピュラーではなかったが証言から察するにシリコン製の様なものだった様だ。
高温を有しており、手に煤の様なものは付いたが何故か火傷はしなかった。
煤に関しては車内にも侵入し、煙も入ってきた。酷い悪臭が漂ったが、証言では死体の様な悪臭と表現されているが、普段死体の匂いを嗅ぐ機会の無い一家の証言の表現としては適切ではないだろう。
パトリックと母親は”脳が吸い出されるような感じ”、”頭に何か入ってくる感じ”と表現したが、何らかの力で上部に強力に引き上げられれば当然の帰結と言える。
彼等は一様に方向感覚を失い、全員の声に変化が現れた。あまりの事態に全員が死を感じたと言う。
だが、彼等の予想に反して車は突然エアハイウェイに無動作に落とされた。
その際に、右後輪が破裂、ショーンは慌てて急ブレーキをかけ、車が停止すると同時に失神した。
彼等は急いで車から離れ、付近の物陰に身を潜めていたが、逃走する為にもタイヤを換えねばならず様子を見て15分ほどを要してタイヤ交換を行った。しかしながら、その間もUFOは周辺におり、
30分程度で何処へともなく消え去った。
一家は、そこから一番近い町であるマンドラビラに到着し、警察署へ急行し事情を説明した。
にわかには信じられない話ではあるが、警察側も一家のあまりの怯え方と、車に残された謎の物証を見て、真剣に取り合ってくれた。
車体の屋根部分には4か所のへこみがあり、やはり煤がかなりの量付着していた。
放射能の汚染は無く、母親が物体を触った手は火傷にはならなかったものの、7日後に赤く腫れ痛みがあったが、暫くすると治まった。
この事件は地元のニュースや新聞にも大々的に取り上げられ話題になった。
大抵この手の事件は割とスルーされる傾向が強いが、この事件がそうならなかったのは、多くの物的証拠と、後に別の目撃者がいたことにある。名乗り出て来ないが、接触したワゴンの運転手も公式の
場に現れれば3組の目撃者がいることになり、その正体はともかく事実の認定だけは間違いなくされるであろう事件である。
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