某〇〇温泉600号室

タグ

 今から11年ぐらい前になるでしょうか、私はとある観光バス会社の営業課長としてバスの乗務員権営業もかなねて二足の草鞋でハードスケジュールをこなしていました。旅客運行管理の資格を取得していたのでバス中での待機でもお客様からのバス旅行の依頼があれば御見積りや旅程などを作成しお客様にご提示ご案内して取引を成立させること、お客様を現地から次の場所まで安全に送迎することが私の日常茶飯事でした。

 ちょうど御社に入社して2年か3年ぐらい後の事でしょうか、いつもと変わらず朝早くに出勤してお迎えはどこかの大学だったと思います。
 行先は兵庫県で有名なカニと温泉の町でした。日中は観光巡りをして最終ホテルで一泊そして次の日は日中観光巡りで大学で終了の工程でした。
 
 私が体験したのは、1日目のホテルの出来事でした。
 仕事もそろそろ終わりでホテルにチェックイン(お疲れ様、今日も無事に仕事終了。風呂でも入ってご飯でも食べようか)と自分自身に小さな労いをして私はフロントへ。こちらのホテルは現地ではなかなか有名で以前の形態ではCMにも出ていたくらいで、いつの間にか経営者が変わりホテル名も変わって知りませんでした。
 多分ですが、ホテルの仕掛人がこの場所の立て直しで奮闘されたのかロビーは人、人であふれかえり活気が凄かったのを今でも覚えています。

 私がホテルのフロントで館内での説明を一通り受け、ルームキーを貰い部屋に向かいました。(ん~)私はその時何か違和感を感じました。直ぐに気が付いたのですが、ルームキーのホルダーが違っていました。
 と説明をさせていただくと、他の来客の方と全く違っていてまずホルダーの形が透明のアクリルで出来た四角くて長いのではなく普通の小さくてネームプレートのような、しかもマジックで手書きのキーホルダーでした。
 ルームキーも小さく昔のアパートでドアノブの真ん中を押してロックをかけてキーで解除するタイプでした。(もう疲れたし明日もあるので)部屋に向かいました。(ん~)また違和感を感じました。あまり何も考えずに部屋を探したのですが部屋が見つからないのです。ルームキーをよく見ると600と書いていました。もう一度元に戻り降りたエレベーターのまず近くの部屋が610、609、608、607、606、605、603、602、601(え~)おかしい?バス業界に努めていますと乗務員の宿も何通りかありまして、1お客様の宿と全く別の宿2お客様と同じ宿よく似た部屋同じ食事3お客様と同じ宿で安めの部屋(シングル)安めの食事(定食)です。私は(そうか3の選択)と考え部屋を探しました何度も何度も(疲れた早くお風呂へ行きたい)ろうかでじたばたしているうちに何かの音に気が付きました。(ん~)何と601号室の前に鉄の扉(非常階段)があり確かに(コーン)って音が聞こえたのです。(え~ここ)
 私はその非常階段用の扉を開けました、(やっぱり非常階段やん、まさか)階段に出ると踊り場から私の仕事のバスと広い駐車場が見えます。来客が止まらないのかどんどん車が駐車場に入ってきます、(凄いなこんなに集客出来たらいいよな)と辺りを見回していたらその踊り場から非常階段を降りたところにまた鉄の扉が見えたのです。(ま、まさか)でしたこの鉄の扉が部屋の入口でした。
 またそこで違和感が面白いのか変わっているのか扉の敷居が結構背高く地面より20cmはあったと思います。
 やっと部屋に到着疲れているせいなのか今まで違和感を感じたことは忘れて部屋に荷物を置いてまずお風呂の用意、帰りにレストランで夕食そして違うバス旅行の御見積り作成と残りの業務の計画を立てて就寝まで過ごそうと考えていました。部屋に入り数十分たったのか、(ん~)やっぱり何か変?全く広い部屋ではないのですが、よく見てみると三面鏡や円い鏡(女性っぽい部屋?)そうなんです私が泊まる部屋は多分ですが仲合さんが永住する部屋だと思いました。(こんな部屋に泊まることもあるのかな?)と少し戸惑いました、(ま、仕事やし仕方ないか)自分に納得させお風呂へ行こうとしたときでした。三面鏡の横奥から(誰かに見られている)そんな気がしました。(まさかね)そんな思いでお風呂場へ急ぎました。

 (あー、さっぱりした!疲れも取れたし食事して見積もり見積り)その後部屋に戻り自前のノートパソコンで事務仕事(ん~)やっぱり違和感?本日はこれにて終了。一日の癒しを取るためビールとおつまみ、そしてハイボールをぐびぐび。時計を見るともう夜の10時30分(寝よう)瞼も重くなり違和感の事もすっかり忘れてバッターンGooGoo秒殺就寝~~~~~~~~~~~~>
 !”!!”!!!”?息苦しい、目が覚めた(えっ)何かいる?誰かいる?感覚ですが、白くて長~い着物の下に身をまとう下着を着た女性が(すり、すり、すり)と私の寝ている布団の横を歩いていて、歩くたびに着ている物からの風が当たるんです。今でもはっきり覚えています、そして私の枕もとで立ち止まり何者かわからない長~い髪の毛が私の顔ぎりぎりに迫ってくるのが分かりました。(これって、やばい)そう考えても仕方なく怖いどころか私は開き直りその得体のしれない物に(ごめんなさい、明日も仕事ですし寝不足で事故になると学生さんに大変ご迷惑をかけるので寝かしてください。)と心の中でお願いをしたらすーっと見られていると感じた三面鏡の奥の方に消えていきました。

 私も仕事がら沢山の同業者の方からお話をいくつか聞いていましたが、自分自身がこんな体験をするとは思っていませんでした。各旅館やホテルの仲合さんや番頭さんは、色々な事情で住み込みで働いてる方もいると聞いた事もあります。以前の旧ホテルにまた私が泊まった部屋の住人が何らかの形で命を絶たれ浮かばれない魂と私自身が出会ったのかもしれません。

 この後は、別に何もなかったと思います。
 
 私の体験は以上になります。またお会いしましょう(@^^)/~~~