レヴィアタンとは、旧約聖書に登場する海の怪物である。
陸の怪物ベヒモスと二頭一対を成すと考えられ、共に最後の審判のときまで世界を支えるという。
一般的には巨大な海蛇、もしくは竜の姿で描かれる。
中世ヨーロッパでは、キリスト教における七つの大罪の一つ「嫉妬」を司る悪魔と見なされ、水から生まれた地獄の海軍大提督として、サタン、ベルゼブブに次ぐ第三位の地位を持つ強大な魔神とされている。
【旧約聖書のレヴィアタン】
レヴィアタン(Leviathan)は、「ねじれた」「渦を巻いた」という意味のヘブライ語「liwjatan」に由来すると云われ、英語では「リヴァイアサン」と発音される。
レヴィアタンは、旧約聖書に登場する海の怪物であり、神が天地創造の5日目に創りだした存在で、同じく神に創られた陸の怪物ベヒモスと二頭一対を成すとされている(因みに、空の怪物ジズを含め三頭一対とも云われる)。ベヒモスが最高の生物と記されるに対し、レヴィアタンは最強の生物と記されている。
その姿は、巨大な海蛇、もしくは竜の姿が一般的であるが、元々は巨大な魚や、鯨、ワニの姿で描かれていたという。
旧約聖書『ヨブ記』によれば、レヴィアタンの全身は硬い鱗で覆われ、槍も剣も矢も通さないという。その眼は朝日のように輝き、鋭く巨大な牙を備えたロからは火を吹き、鼻からは白い煙を出す。また、心臓は石で出来ているかのように硬いという。その巨大さゆえに、海を泳ぐときには波が逆巻くほどである。
(一説によると、体長は1500kmとも云われ、7つの頭と300の眼をもつとも云われる。)
《エズラ記6:47-52》
五日目にあなたは、水が集まっている第七の部分に、生き物や鳥や魚を生み出すように命じられました・・・それからあなたは、二つの生き物を選り分けられ、その一つをベヒモス、もう一つをレヴィアタンと名付けられました。そしてあなたは、両者を互いに引き離されました。水が集まっている第七の部分に両者を置くことができなかったからです。そしてベヒモスには三日目に乾いた土地の一部を与え、そこに住むようにされました。そこは一千の山のある土地でした。レヴィアタンには水のある第七の部分をお与えになりました。あなたはこの二つを保存し、あなたのお望みのとき、お望みの人々に食べさせるようにされました。
《ヨブ記40:25-26》
お前(ヨブのこと)はレビヤタンを鉤にかけて引き上げ、その舌を縄で捕えて屈服させることができるか。お前はその鼻に綱をつけ、顎を貫いて轡をかけることができるか。
《ヨブ記41:10-17》
彼がくしゃみをすれば、両眼は曙のまばたきのように光を放ち始める。口からは火炎が噴き出し、火の粉が飛び散る。煮えたぎる鍋の勢いで鼻からは煙が吹き出る。喉は燃える炭火、口からは炎が吹き出る。首には猛威が宿り、顔には威嚇がみなぎっている。筋肉は幾重にも重なり合い、しっかり彼を包んでびくともしない。心臓は石のように硬く、石臼のように硬い。彼が立ち上がれば神々もおののき、取り乱して逃げ惑う。
本来は雄雌2体のレヴィアタンが存在していたが、この恐ろしい怪物が繁殖することを危惧した神によって雄は殺され、雌のみが存在するようになったという。その代わり、残った雌のレヴィアタンは不死身であり、最後の審判のときまで最強の生物として君臨し続ける。
そして、世界の終焉のとき、レヴィアタンは世界を支える役目を終え、陸の怪物ベヒモスと共に死ぬまで戦わされ、二匹とも神や神に赦された人々の食卓に上るとされている。
因みに、レヴィアタンがつがいで存在したことに関しては、ベヒモスを雄とし、対に当たるレヴィアタンを雌とする説や、レヴィアタンを雌雄同体であるとする説もある。
【悪魔としてのレヴィアタン】
レヴィアタンは、元々は神に創造されし怪物であるが、その後、悪魔と見なされている。
ヨハネ黙示録には、「この巨大な竜、年を経た蛇」が捕らえられ、封印されることによって、神が直接地上を支配する千年王国が登場することが記されている。
《ヨハネ黙示録12:9》
この巨大な竜、年を経た蛇、悪魔とかサタンとか呼ばれるもの、全人類を惑わす者は、投げ落とされた。地上に投げ落とされたのである。その使いたちも、もろともに投げ落とされた。
《ヨハネ黙示録20:2-3》
この天使は、悪魔でもサタンでもある、年を経たあの蛇、つまり竜を取り押さえ、千年の間縛っておき、底なしの淵に投げ入れ、鍵をかけ、その上に封印を施して、千年が終わるまで、もうそれ以上、諸国の民を惑わさないようにした。その後で、竜はしばらくの間、解放されるはずである。
また、中世以降の悪魔学では、レヴィアタンは堕天使の一体として邪悪な悪魔と定義されている。
キリスト教における七つの大罪の一つ「嫉妬」を司る、地獄の海軍大提督であるとされ、その階級はサタン・ベルゼバブに次ぐ第三位の大悪魔である。
元のレヴィアタンが何物の攻撃も通さないのと同様に、悪魔としてのレヴィアタンにも、いかなる悪魔祓いも通用しないとされている。
また、レヴィアタンは大嘘つきで、人に取り憑くこともできるという。人に取り憑いた場合、あらゆる嘘を吐露させると云われ、それを追い払うのは非常に難しいとされる。 特に、女性に取り憑こうとするという。
また、驕りの王とも云われている。
因みに、レヴィアタンと対を成すとされたベヒモスは、悪魔学においては暴飲暴食を司り、貪欲を象徴する悪魔とされている。ベヒモスに関しては、七つの大罪との関連はなく、象や象頭人身の姿で描かれるという。
【備考】
レヴィアタンを、旧約聖書『イザヤ書』に登場する海の怪物ラハブと同一視する説がある。ラハブの名は「騒音」「暴動」「傲慢さ」を意味しており、「混沌」の象徴であると云われる。紅海に生息するという。
また、バビロニア神話に登場するティアマトとの類似性も指摘されている。
尚、ユダヤ教の伝説では、レヴィアタンを、女と男の姿でアダムとイヴを誘惑した両性具有のドラゴンだと考えられていたという。
コメントをするには会員登録が必要です