悪魔ベルゼブブはサタン、ルシファーと共に悪魔の代表格として有名である。
時にサタンと同格に扱われたりルシファーの片腕とされたりする。
その姿は蝿として描かれるベルゼブブがなぜそんなに有名で格が高いのか?
悪魔ベルゼブブについて見てみよう。
◆悪魔ベルゼブブの起源
ベルゼブブは「ベルゼバブ」「バールゼブブ」とも呼ばれている。
もともとは「バアル(気高き)・ゼブル(主)」という名の意味で呼ばれていた。この「バアル」は豊穣神「バール」から来ている。
古代での「バール」神は広く崇拝されていた。
このバール神の尊称が「バアル・ゼブル」と言われている。
しかし他教の神を嫌うユダヤ教やキリスト教にとって「バール神」は強大な敵となる。
この最高神である「バアル・ゼブル」に侮蔑を込め、語呂合わせで「バアル・ゼブブ」(蝿の王)と呼びその名は誕生した。そして聖書に「悪魔の名」として登場し広まったとさせる。
◆大悪魔ベルゼブブ
旧約聖書「列王紀下」では悪病に患ったイスラエル王国8代アハズヤ王はエクロンに祀られていた神バアル・ゼブルに病気回復の神託を求めた。
それを知ったヘブライ人の唯一神ヤハウェの預言者エリヤは「イスラエルには神がいないというのか。あなたは必ず死ぬ」と伝えた。
その2年後予言通りアハズヤ王は死んでいる。
この旧約聖書ではまだベルゼブブはかろうじて神として認められていた。
新約聖書ではイエス・キリストが目が見えない人を治した時イスラエルの律法学者が「悪霊の頭ベルゼブルの力を使っているのだ」と言った。
この時点でベルゼブブは神から「悪霊の頭」になっている。
また新約聖書外典「ニコデモ福音書」ではユダヤ人を唆しイエス・キリストを処刑して冥府(ハーデス)に幽閉しようとした。しかし天使たちが現れ冥府の扉は壊され死者を開放する。そしてイエスが現れベルゼブブの頭を掴み最後の審判まで冥府に封印するよう命じた。そして封印されることになる。
近世ヨーロッパのグリモワールではフランス語形ベルゼビュート の名で現れる。
そこでのベルゼビュートは大魔界の君主とされ大悪魔とされており地獄の中ではサタンに次ぐ権力者であり実力はサタンを超える。
また一方で、ベルゼビュートは作物を荒らす蠅から人間を救う力があるとされている。
天界では最高位の熾天使で、天界の戦争においては、ルシファーの側近として戦ったという。
失楽園第(著:ジョン・ミルトン、1667年)第一巻ではサタンと会話を交わし、堕天したベルゼブブの醜態を嘆くサタンと身分を確かめあうと、高らかに叫び、再び 堕天使の軍勢をもって反逆する意志を固めている。
ここでのベルゼブブは「蝿の王」や「糞の王」というイメージからは遠く「大魔界の君主」として描かれている。
蝿騎士団という騎士団を作り、そこにはアスタロトなど悪魔の名士が参加している。
ここでも「大魔界の君主」のベルゼブブの実力が表れている。
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17世紀のエクソシスト、セバスチャン・ミカエリウスによるデーモンの階級でも16の魔神の指揮官、堕天した熾天使でルシフェルに次ぐものだった。No2である。
ちなみにベルゼブブは、ビンスフェルドの七つの大罪では「暴食」を司っている。
人の自尊心、高慢さをくすぐり罪に誘うとされる。
◆悪魔ベルゼブブの姿
パランジェーヌの『ゾディアコ・ヴィテ』では、その腰掛ける玉座は巨大で、額には炎の帯を巻き、胸は厚く膨れ、顔はむくみ、目はぎらつき、眉はつり上がっているとされる。鼻孔は広く、二本の角、肌は真っ黒、コウモリの翼、足はアヒル、尾はライオン、全身を長い毛が覆う。
『地獄の辞典』(著:コラン・ド・プランシー)第6版(1863年)では、ブルトンの挿絵によって、羽根にドクロの模様がある羽虫の姿で描かれている。
これはハエの王たる悪魔ベルゼブブもまたハエの姿であるというイメージによるもので、この巨大な蝿の姿が一般的なベルゼブブの造形として表されることが多い。
●まとめ
蝿の姿は語呂合わせで作られた蔑称のためだった。
天使時代では熾天使でトップクラスであり魔界でも実力は1,2位を争うトップクラスである。
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