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悪魔バフォメットについて

バフォメットという名前を知らなくても画像は見たことがあるのではないだろうか?
黒い翼を持ち、山羊の頭で座っている有名な悪魔の絵である。
この山羊の頭の悪魔がバフォメットなのだが、どんな悪魔なのか?

◆悪魔バフォメットの起源
バフォメットの起源はハッキリとはしていない。
11世紀末から12世紀のラテン語書簡などに現れているのが最古のものとなっている。
当初はキリスト教の異教の神の事を指しており、後の1300年代初頭にテンプル騎士団に対する異端審問の際にバフォメットが大きく取り上げられることになった。

きっかけは1307年、財政難に苦しんでしたフランス王フィリップ四世がテンプル騎士団に支援を求めたが断られる。怒ったフィリップ四世は「騎士団は神を否認しバフォメットという悪魔を崇拝している」と全団員を逮捕させる。
実際には騎士団を壊滅させて、財産の没収を狙っていたという説がある。

この時にテンプル騎士団が悪魔の偶像を崇拝していたという風評が広まりバフォメットも世間に広まっていった。
この逮捕の際に騎士団の拠点から山羊の頭が発見され、それがバフォメットとされている。

なぜ山羊の頭なのか?
ヨーロッパだけに限らないが、遊牧民から始まるオリエント一帯の牧羊民の神は牧神パーン(パン)であった。
牧神であるから羊や山羊の顔をしているとされてきた。
異教の神を悪魔とするキリスト教の流れがこのバフォメットの形状にも見られる。
またパーンは好色な性格だったため、いかがわしい存在の代表格となった。
姿形も獣と人が混ざって不完全な外見であったため悪魔として採用されるにはちょうど良かったようである。

そして、このバフォメットという名前の由来はイスラム教における預言者マホメット(ムハンマド)の誤読から創造されたとされる。
他にもマホメットと洗礼者ヨハネが混ざったという説やギリシア語の“baphemetous(五芒星形)”説(クリストフ・フリードリヒ・ニコライ)がある。

◆悪魔バフォメット
バフォメットはパーンの好色な性格を受け継ぎ、とくに妖精と戯れるという伝説が魔女たちの崇拝対象となり、これがサバト(ヨーロッパで信じられていた魔女あるいは悪魔崇拝の集会)の原型になったようである。

タロットの大アルカナの15番に描かれている悪魔はバフォメットであると言われる。

このバフォメットはルシファー、ベルゼブブ、アスタロトに仕える上級六大悪魔の一人である大将の「サタナキア」や下級魔神の長「レオナール」と同一視されている。

サタナキアはグリモワールのひとつ「真正奥義書」によればサタナキアはルシファーの配下の悪魔であり、ルシファー、アガリアレプトとともにヨーロッパ・アジアに住まうとされる。サバトの山羊と呼ばれている。
45もしくは54の悪魔を従えており、アモン、プロケル、バルバトスを部下として従えている。
あらゆる女性を意のままにできる能力を持つ。

レオナールは第一階級の魔神である。下級魔神の長であり魔法や黒魔術、魔法使いたちの統括者でもある。長身の牡山羊でサバトを取り仕切っている。
臀部にも顔があり、魔法使いたちはこの下の顔に接吻する。

◆悪魔バフォメットの姿形
騎士団員の悪魔崇拝の裁判記録では、「バフォメットは両性具有であった」「顔の数は双頭であった」「顔の数は三頭だった」という証言や、偶像の材質も木製や銅製などと種類もばらばらで、その供述はまったく信用出来ないものであった。
“本物のバフォメット”像は全くの不明とされている。パリのサン・メリ教会にある二本角と翼を生やして髭を蓄え、乳房を有した悪魔の浮彫像がバフォメットであるという説とブルゴーニュ地方のコート・ドール県エッサロワで発見された箱の蓋に彫られた男女両性像が元であるという説がある。

現在のバフォメットでは19世紀にフランスの魔術師エリファス・レヴィが描いた絵「メンデスのバフォメット」が最も有名になっている。

その描かれた姿には、頭は山羊で黒いカラスの翼を持ち両性具有を思わせる乳房が描かれている。
3本の角が生えており真ん中の角は燃えているか光っている。
右手の人差し指は天を指し、その先には半月が描かれている。

このバフォメットの絵は、最も有名な悪魔の姿であろう。